■中国が表面上強硬姿勢をとる理由とは?
では、なぜ中国は表面上、ここまで強硬に出ているのか。
1つは、習近平氏をはじめ、最近の中国共産党指導部は自国の力を過信するところが大きい、ということがある。高度成長を続け、庶民の生活レベルの著しい向上やIT技術の発達など、大きな成績を収めてきた中国共産党は、自らの体制を正当化することができ、また自らの「能力」や「正義」に確信を深めている。
その上、習近平氏がリーダーに選ばれて以降、「中国夢」が象徴するように、また「一帯一路」の推進に見られるように、習氏は自らの指揮で世界をリードする大国のイメージ形成に腐心してきた。
ここで安易な対米妥協があれば、自ら築いてきた大国の指導者のイメージを崩すことになるから、国内保守派からの避難はもちろんだが、彼自信の「メンツ」がつぶれることを一番恐れているかもしれない。
人治体制の国家では、いわゆる「首脳のメンツ」がなによりも大事にされるから、北朝鮮ほどではないものの、習近平氏の「鶴の一声」で、すでにできた合意を白紙まで戻させたのもそのためだと思う。
■ギリギリで対米合意がいったん達成される公算は大きい
いずれにせよ、結論を申し上げると、前述の理由から、米中合意の紆余曲折自体がむしろ当然のことで、米中合意が安易に達成できるといった発想自体バカバカしい。
この意味では、これまでのマーケットにおける楽観的なセンチメント自体が行きすぎであり、いったんリスクオフへのチェンジも、途中の調整として必要かもしれない。
しかし重要なのは、中国の置かれている状況から考えて、ギリギリで対米合意が何らかの形でいったん達成される公算は大きく(達成後も闘争が続くが…)、リスクオフの流れも、あくまで途中の調整と見なすべきであろう。
■NYダウは再上昇、米ドル/円は底打ちの可能性も
テクニカル上の視点において、まず強調したいのは、米国株のブル(上昇)基調だ。確かにNYダウは史上最高値の再更新には至らなかったが、ナスダックやS&P500指数の高値更新が確認された以上、このままベアトレンドへ復帰するよりも、途中の調整を経てブルトレンドを一段と加速していく公算が大きい。
(出所:Bloomberg)
昨年(2018年)から米ドル/円は、日米金利差よりも米国株との連動性を強めてきているから、そのような相関性を維持しているとみる。
したがって、前回のコラムでも指摘したように、米ドル/円の下値余地は限定的で、もしかしたら109円の節目前後をサポートとした値動きで、すでにいったん底打ちした可能性も無視できない。
■リスクオフの流れ、間もなくいったん終焉?
このような視点をもつ背景には、「本家」の上海株の動向を見逃せない。上海株は今年(2019年)第1四半期の急上昇をもって昨年(2018年)の下落分をほぼ取り戻し、その後米中対立の激化で急落してきたが、5月10日(金)安値の2838ポイント前後をポイントに、むしろ横ばいの傾向を示し、200日移動平均線(200日線)にさえトライしていない状況だ。
(出所:Bloomberg)
これは大きな示唆となるから、詳細は次回にて説明したいが、株式市場の先見性を尊重するなら、リスクオフの流れは、間もなくいったん終焉という可能性を無視できない。
もう1つ問題はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)だ。クロス円における円高は、単純に円高ではなく、外貨安の側面も大きいから、ドルインデックスの状況からみないといけない。
結論を申し上げると、クロス円の多くもそろそろ底打ちのタイミングにあるから、次回詳説したい。
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