■今日にも中国への制裁関税「第4弾」の詳細を公表へ
トランプ政権は、中国への制裁関税「第3弾」として関税を引き上げたばかりなのに、週末になり、「第4弾」のニュースが出てきましたね。中国からの残りの輸入品すべてに25%の関税を課す、と。
本日(5月13日)、詳細が発表予定とされています。
【参考記事】
●トランプ砲で米ドル/円は窓開けスタート! 米中交渉決裂なら米国株は総崩れに…!?(5月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米中貿易摩擦再燃で米国株は調整入り…。NYダウ続落なら、米ドル/円は105円方向へ(5月9日、西原宏一)
●米中交渉決裂なら米ドル/円は100円割れ!? お得意のトランプツイートで雰囲気が一変!(5月9日、今井雅人)
大きな悪材料ですが、その割に東京市場の反応は限定的。米ドル/円は、先週末から20銭程度の下落で収まっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
そもそも、いったん米中で合意していた案を中国へ持ち帰ったところ習近平国家主席が蹴った、という説がありますね。
あるいは共産党の保守派が蹴ったのか。
いずれにせよ中国側としては、蹴らないとメンツが保てないと、いうことのようです。
米大統領選でのトランプ米大統領敗退を見越して、中国が交渉を長びかせているとの見方もありますが、トランプ米大統領は「私の2期目に交渉するならば、中国にとってさらに不利な取引になるだろう」と警告しています。
どちらも強硬ですし、出口が見えません。
2020年に米大統領選が予定されるなか、トランプ米大統領は「私の2期目に交渉するならば、中国にとってさらに不利な取引になるだろう」と警告した (C) Chip Somodevilla/Getty Images
そうすると、報復の切り札がない中国は不利ですね。
■為替報告書やTAG交渉を控え、米ドル/円は上値が重そう
これから報復合戦となるのでしょう。それは株式市場にとってネガティブですし、東京市場の反応は楽観的過ぎるように見えます。
週明けの東京時間は、VIX指数も落ち着いていますよね。
また、例年だと4月に発表される米財務省の為替報告書が今年(2019年)はまだ発表されていません。これが発表されて、中国が為替操作国に認定されているようだと、対立は深まりそうですね。
中国が米国債への再投資を控えて、米債投資を縮小する可能性も指摘されています。
それは当然、米ドル安要因ですし、為替報告書で日本の金融政策に対する批判のトーンが強まったり、TAG(日米の物品貿易協定)交渉で為替条項が盛り込まれることへの警戒が強まれば円高要因。
米ドル/円の上値は重そうです。
■株価が下落するなら今のほうが好都合!?
一方で、制裁関税が第4弾までいくと多くの消費財が含まれますから、米国内ではインフレ圧力が高まり、教科書的には金利に上昇バイアスがかかる。
国内では今年度、日本の投資家が保有する国債のうち、44兆円分が償還期限を迎えるそうです。これが国外へ向かうようだと、円安要因です。
こうした材料からは、米ドル/円が上がりやすいと考えられませんか?
たしかに米国の物価は上がりやすくなるでしょうし、44兆円の10%が国外へ向かうだけでもインパクトは非常に大きい。
しかし、ドルインデックスを見ると米ドルが買われ過ぎているように見えますし、NYダウがこのまま反落するようだとチャートはトリプルトップとなります。
【参考記事】
●米中貿易摩擦再燃で米国株は調整入り…。NYダウ続落なら、米ドル/円は105円方向へ(5月9日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
制裁関税第4弾に欧米市場がどう反応するか、注目ですね。
トランプ米大統領としても、米大統領選中に株価が急落することは避けたいでしょうから、今のうちに落としておいて、選挙へ向けて上昇していく展開が望ましいのではないでしょうか。
原油が崩れるようだとリスクオフ本格化といえるのかもしれませんが、WTI原油は落ちていません。
原因のひとつがイラン情勢の緊迫化。アメリカからの圧力に対して、イランはホルムズ海峡の封鎖を警告しており、このリスクプレミアムが原油価格を支えているようです。
米株との相関が強い原油市場が崩れてくるようだと、株安が本格化するのかもしれませんね。
(出所:Bloomberg)
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■買い手が見えているのに上がらない米ドル/円は戻り売りで
先週(5月6日~)、注目されたオセアニアの政策金利発表ですが、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は据え置き、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])は利下げとなりました。
ただ、RBNZのオア総裁は、想定ほどダビッシュ(ハト派)なトーンではなかった。豪ドルが利下げしていれば今後の追加利下げを強くにじませただろうと思います。
足もとでは豪ドル/NZドルのポジションがロング(強気)に傾いている気配もあり、いったん様子見でしょうか。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/NZドル 日足)
今週の戦略はどう考えますか?
米ドル/円に絞ると、相変わらず本邦勢は落ちたところを拾っているようです。
ただ、「買い手がはっきり見えているのに上がらない」という状況は気持ち悪いですし、米中貿易交渉の難航や為替報告書といった材料があります。
109円台後半で売りたいとは思いませんが、戻りを待って売っていきたいと思います。
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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