■米中貿易戦争はもはや「文明の対決」にまで発展する勢い
米中貿易戦における応酬、もはや「貿易戦」の枠組みをはみだし、大袈裟に言えば「文明の対決」にまで発展する勢いを見せている。
ゆえに、マーケット全体はリスクオフの流れに包まれ、また円高の進行が確認されるのも当然の成り行きと思われる。
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しかし、冷静に考えてみれば、「文明の対決」だからこそ、歴史的な長期戦になるはずなので、短期間の決着は望めない。
ゆえに、米中対立が激化したとの理由でマーケットがベア(下落)トレンドに入り、リスクオフの流れが続く、といった発想もおかしい。
なぜなら、どんな材料であれ、マーケットにおける「賞味期限」があるので、目先の値動きが市場の内部構造に沿わないのであれば、いずれ本来のトレンドへ戻るはずだからだ。
■トランプ氏の決断自体は非難される点は少ない
このような可能性を、まずファンダメンタルズ上の理由から説明したい。
対中関税の引き上げを実施した米国に対して、中国も報復措置を発表したが、その実施が6月1日(土)からだという。このような発表から、決してキリのいい日付を選んだのではなく、対米合意、または妥協を探る期間を残したい、という中国側の意図が透けて見える。
ギリギリまで合意の可能性を探る戦術は、別に中国のみではなく、世界各国が外交の場において多用してきたが、中国はその手口に精通しており、また上手いことは周知のとおりだ。
もっとも、今回の米側の関税引き上げは、唐突に行われたものではなく、随分延期してきた経緯があっただけに、トランプ氏の決断自体、非難される点は少ないかと思う。
■「瀬戸際戦術」を仕掛ける中国だが、実情は…
トランプ氏を激怒させたのは、中国がいったん合意した内容をほぼ白紙に戻したことだ。統治集団(即ち中国共産党)の利益を守るため、「瀬戸際戦術」をもってギリギリまで有利な条件を引き出す習近平氏の思惑が強いと思われるが、このまま決裂したらまずい、という実情もうかがえる。
なにしろ、対米完全決裂ということは、WTO(世界貿易機関)の形骸化が進む目下において、中国が世界貿易体系から締め出されることを意味する。
完全決裂なら、米国は圧倒的な力で遠慮なく中国をたたける(ファーウェイ製品禁止令は最新の好例)から、いくら習近平氏とはいえ、ここまで無知また傲慢に米国を敵に回す可能性は小さい。
急速な景気後退があれば、国民や党内の不満を招き、自らの地位を揺るがしかねないから、ここでいったん妥協点を探り、鄧小平氏の教えである「蹈光养晦(とうこうようかい・能ある鷹は爪を隠す、あるいは力をためてこれからのリベンジに備える)」路線に戻るのがもっとも現実的であり、また、そうするしかないと思う。
では、なぜ中国は表面上、ここまで強硬に…
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