■米ドル/円は「きっかけ待ち」の段階?
したがって、日銀政策の限界に対する焦躁感もあって、目先、もっぱら日米金利差に反応してきた米ドル/円も、米長期金利の底打ちとともに、すでに底打ちを果たしたか、近々果たす見通しだ。
米中首脳会談やトランプ氏の板門店訪問などの材料でいったん切り返したものの、再度軟調に推移してきた米ドル/円は、「きっかけ待ち」の段階にあるとも推測される。
この意味では、今晩(7月5日)発表される米6月雇用統計の重要度も、通常より高くないかもしれない。
なにしろ、市場の関心は米利下げにあり、また、米長期金利の低下にある。雇用統計が想定(市場コンセンサスをさすが、そもそも同統計に関する事前想定は、笑えるほど当てにならないから、無意味であるが…)より悪ければ、利下げの根拠を強めるが、すでに利下げ観測をほぼ織り込んでいる米長期金利は一段の低下があっても、下値は限定的であろう。米雇用統計次第云々といった相場解釈の「決まり文句」は効かない可能性が大きい。
米ドル/円や主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)に関して、2019年年初来安値の更新が難しいという見方は、筆者が繰り返し指摘してきたところだが、この見方は目先も維持しておきたい。
米ドル/円に関して、4月高値からの下落波は、大きな「下落ウェッジ」を形成してきたから、同フォーメーションがいったん上放れし、目先の反落は同下落ウェッジの上限ラインの延長線にサポートされていることに注意していただきたい。
(出所:Bloomberg)
米雇用統計発表後もこのようなサポートが観察できれば、前述のフォーメーションの上放れは「ホンモノ」で、切り返しが継続されるかと推測される。
■ドルインデックスには複数のレジスタンスゾーンが
そして肝心の米ドル全体の状況だが、ドルインデックス先物を確認すると、目先200日線がレジスタンスと化し、仮に突破しても、6月初旬の安値ゾーンや一目均衡表の「雲」ゾーンがレジスタンスゾーンとして機能してくると見られ、一気に回復するのは容易ではなかろう。
この場合、やはり、ドルインデックスの再度頭打ちを警戒、また一段と反落する余地ありとみる。
■米ドル全体の軟調でユーロは切り返しか
そうなると、米ドル全体の軟調が外貨の切り返しにつながり、特にユーロに効きやすいだろう。「ECB次期総裁のクリスティーヌ・ラガルド女史がハト派だから、ユーロ安に転じるだろう」といった論調もあるが、まだ就任していないうちに、相場にすぐ効くとは思わない。
さらに、ユーロ/円の内部構造に照らして考えると、2008年高値から構築されてきた大型トライアングルというフォーメーションがすでに最終段階にある。下放れするより、押し(反落)がそろそろ完成される時期に差し掛かると思われ、やはり、下値余地限定なので、ユーロ/円の底打ちによっても、ユーロ/米ドルの一段の切り返しが進行しやすいかとみる。
(出所:TradingView)
もちろん、ユーロ/米ドル軟調のまま米ドル/円が大きく切り返す、といった市況も想定されるが、今のところはサブシナリオにすぎない。
とはいえ、誤解してほしくないのは、ユーロ/米ドルの切り返しが継続しても、それはあくまで途中のスピード調整であり、ベア(下落)トレンド自体は変わらないということだ。
当然のように、ドルインデックスでみる米ドル全体の値動きはその正反対で、これから一段の反落があっても、それはあくまで途中のスピード調整であり、中長期スパンにおける強気構造は維持されるはずだ。
中長期スパンにおける基本シナリオである株高・米ドル高は継続される公算大。市況はいかに。
(10:30執筆)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)