■米中首脳会談は、ほぼ予想どおりの結果だったが…
6月28日(金)~29日(土)に、大阪でG20(20か国・地域首脳会合)が開催されました。
市場の注目は、29日(土)の米中首脳会談でしたが、結果は協議継続、3000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税第4弾の発動は見送りとなり、ほぼ、市場の予想どおりとなりました。
注目の米中首脳会談では、今後の協議継続と関税第4弾の発動見送りが決定した。写真は2019年6月に開催された大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images
ただ、中国通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置を一部、緩和させたことはサプライズです。安全保障上、問題がない部分に関してのみ、解除されることになりました。
完全な禁輸となると、米国企業にも影響が出てくるようで、そのための措置となります。
【参考記事】
●米中首脳会談で為替市場ははどう動く? 交渉決裂なら米ドル/円は105円目指す!?(6月25日、バカラ村)
●米ドル/円は100円割れ? それとも110円へ!? カギ握る米中首脳会談から目が離せない!(6月27日、今井雅人)
■足元のリスクオンを追いかける状況ではない!?
さらに、30日(日)には、米朝首脳会談も急遽、開催され、こちらもサプライズ。
それを受けて、今週(7月1日~)の株式市場や米ドル/円などは、ギャップアップで始まっています。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
米中首脳会談で協議が決裂しなかったことや、関税の発動がなかったことで、最悪な状況はなくなったことによる、リスクオンの動きです。
ただ、何かが決まったというわけではないため、この動きを積極的に追いかけるような状況ではないと考えています。
【参考記事】
●米中休戦と米朝会談はサプライズだったが、リスクオンは長くない。米ドル/円は戻り売り(7月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
■7月FOMCの利下げ織り込みは100%のまま!
また、米中首脳会談で協議が継続となれば、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げの可能性は低下するため、その面からも、リスク選好の動きは削がれることになります。
重要なイベントが通過したことで、次の市場の注目は、FRBの利下げに移ってくると考えています。
米ドル/円は、6月25日(火)に106.77円まで下落しましたが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がトランプ大統領の利下げ圧力をけん制したことや、ブラード・セントルイス連銀総裁が7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では「0.50%の利下げを実施する状況にはない」と、行き過ぎた利下げ観測を修正したことで、反発しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
ただ、金利据え置きというわけではなく、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFEDウォッチにおける、7月FOMC(7月30日~31日)の利下げ確率は100%となっており、0.25%以上の利下げを織り込んだ状況のままです。
(出所:CME・FEDウォッチツール)
■ここからの米ドルは経済指標次第に!
ここからは、米経済指標が重要となってきます。特に、インフレ指標が重要となります。
FRBの利下げは、景気悪化というよりも、低インフレに対処するための行動になるため、インフレ指標で良い数字が出るようであれば、利下げ観測が後退し、米ドル高に推移することになります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
そのため、しばらくは経済指標に振らされる動きが出てくると思います。
■投機筋の円売り越しはほぼ解消。方向感なくなる…?
IMM(国際通貨先物市場)では、投機筋の米ドルに対する円の売り越しが、約1万枚まで縮小しています。
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
偏りがなくなったため、ここからの円高への勢いは、なくなると考えています。
ただ、円安への推移も考えにくいため、円に関しては、しばらく方向性がないのではないかと考えています。
米ドルに関しては、FRBの金融政策が転換することもあって、これは米ドル安方向になりますが、すでに織り込まれていることもあり、経済指標次第になると考えています。
■7月の米ドル/円の値幅は約3円に!?
米ドル/円は一時、106.77円まで下げましたが、行き過ぎた利下げ観測が修正され、円売り方向への偏りもなくなっていることから、しばらくは方向感なく推移するのではないかと思います。
米ドル/円の直近、1年間の月足の平均値幅は約3円になるため、今月(7月)は、107~110円が中心レンジになるのではないかと考えています。
(出所:TradingView)
短期的には、米中首脳会談が無難に終わったことで、リスク選好から米ドル/円は上昇していますが、FRBの金融政策が利下げ方向で、日銀の金融政策は限界まで来ていることもあって、上昇が継続するようにも思えません。そのため、米ドル/円の上値も限られると考えています。
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