■クロス円の円高圧力で米ドル/円も円高に
前述のように、ファンダメンタルズや市場心理の悪化を受け、本来ならば、米ドル/円がすでに100円の心理的大台を割り込んでいてもおかしくないと思ったのは、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向も1つの「根拠」だった。
主要クロス円が筆者の予想に反して、軒並み2019年年初来安値を割りこみ、円高の圧力が大きく膨らんでいたから、それが米ドル/円に波及していたことは言うまでもない。
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それでも目先、米ドル/円は2019年年初来安値の更新を回避しているから、かなり「奮闘」したとも言え、逆の視点で言えば、円高のピークがすでに過ぎた可能性もある。
(出所:Bloomberg)
そもそもクロス円における円高傾向は、あえて言うなら円高が「本流」ではなく、外貨安の連れ高が本質的な背景だとみられる。
外貨安というなら、米ドル全体高(対円を除き)になるほかあるまい。米ドル全体の強気変動は、米国株の強気変動と同じく、実は昨年(2018年)後半から一貫してウォール街の予想と違っていた。
目先までドルインデックスで見られる強気変動は、なお、クロス円における外貨安・円高の傾向を示し、米ドル/円の106円台後半の保ち合い自体、「よくがんばっている」感を漂わせる。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
言うまでもなく、米ドル全体の強気変動が一段と強まっていくなら、クロス円における円高の圧力が一段と増大し、結果的に米ドル/円を押しさげていくリスクは大きい。
■ドルインデックスはテクニカル的に近々調整ありとみられる
だからこそ、今一度ドルインデックスの状況をチェックしておかないといけない。細かい話は省くが、大きなサインとしてドルインデックスにおける以下のサインに注意しておきたい。
(出所:Bloomberg)
テクニカルの視点では、上昇ウェッジは反落しやすく、弱気ダイバージェンスのサインと相まって、近々ドルインデックスに大きな調整ありと示唆。この場合、クロス円における円高圧力を和らげ、米ドル/円の支えになってくるだろうと推測され、米ドル/円は一段と基調を改善しやすいかとみる。
相場の不思議はいろいろあるが、最も大きなものは巷の常識と反して、「相場の内部構造がファンダメンタルズを決定する」といったところではないかと思う。
【参考記事】
●陳 満咲杜さんに聞く(2) ~相場はファンダメンタルズによって動くのではない!~
外貨の中で、英ポンド安はもっとも危惧されているが、仮にドルインデックスがここから頭打ちとなり、比較的大きな調整をしてくるようであれば、EU(欧州連合)離脱を巡るファンダメンタルズ上の変化(すでに兆しあり)もみられるかと推測される。
このあたりの検証は、また次回、市況はいかに。
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