■関税第4弾の一部延期でリスク選好の動きも
米ドル/円はリスク回避の動きから、8月12日(月)に105.05円まで下落しました。しかし、13日(水)に米国が、対中国の関税第4弾の一部を12月15日(日)まで延期すると発表したことで、リスク選好となり、株価は上昇。米ドル/円も、106.98円まで急騰しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
米中の対立は、収束したわけではありませんが、クリスマス商戦の影響を軽減するための措置として、携帯電話などの一部商品の関税が延期されました。
【参考記事】
●円高はあっても、米ドル安にはならない!? 荒れ相場で勝者になるためのトレードは?(8月16日、今井雅人)
■米国は2020年に景気後退入りする可能性が高い!?
関税の延期でリスク選好になったものの、14日(水)には米2年債と10年債の利回りが逆転し、12年ぶりに逆イールドとなったことで、NYダウは800ドルの下落と、今年(2019年)最大の下げ幅を記録しました。
【参考記事】
●米国債に逆イールド発生で米景気後退か? NYダウは800ドル安! 米ドル/円は…!?(8月15日、西原宏一)
●株価を暴落させた逆イールドとは? 逆イールドは景気後退の予兆って本当?
逆イールドが発生した当日(14日)は、リスク回避の動きが顕著でしたが、リセッション(景気後退)入りするまで期間があることや、過去の逆イールド発生後は利下げもあって株価が上昇していたこともあり、金融市場もすぐに落ち着きを取り戻しています。
イエレン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「景気後退入りの公算は小さい」と発言していましたが、昨年(2018年)、サンフランシスコ連銀が公表したエコノミック・レターには、1955年以降の9回のリセッション局面で、いずれも逆イールドになってから半年から2年で、リセッション入りしているとの分析結果が示されています。
米メディアのインタビューで、米国経済がリセッション入りする可能性は低いとの見解を示したイエレン前FRB議長。しかし、米国で1955年以降に訪れた9回のリセッションをみると、いずれも逆イールド発生の半年から2年後にはリセッション入りしているとの分析も… (C) Bloomberg/Getty Images
逆イールドが発生したときのリセッション入りする確率の高さからは、今回もリセッション入りする可能性が高いのではないかと考えています。米中の覇権争いも収まるようには思えないため、来年(2020年)には景気後退しているのではないでしょうか。
■ジャクソンホールは9月利下げを示唆する場に
今週(8月19日~)は、21日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨公表(7月開催分)や、21日(水)~22日(木)に日米閣僚級会議などがあります。しかし、22日(木)~24日(土)にジャクソンホール会議(※)が開催され、その中で23日(金)に行われる、パウエルFRB議長の講演が、最大の注目イベントとなります。
(※編集部注:「ジャクソンホール会議」とは、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウムの通称。世界中の中央銀行総裁や金融関係者の多くが参加するイベントのため、毎年、市場参加者から高い注目を集めている)
前回のパウエルFRB議長の公の場での発言は、7月31日(水)のFOMC後の記者会見でしたが、このときは、利下げサイクルの開始を否定しました。
ただ、逆イールドが発生したことや、米中の対立が継続していて、米国株も不安定なため、利下げは継続していくのではないかと思います。
9月のFOMCでは、すでに0.25%の利下げ実施は確実で、0.5%の利下げを予想する向きもあります。
そのため、パウエルFRB議長はジャクソンホール会議を、9月の利下げを示唆する場にするのではないかと考えています。
【参考記事】
●ジャクソンホールでパウエル議長が再び「失言」か!? 米ドル/円は戻り売り継続で!(8月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
7月FOMCの記者会見では、利下げサイクルの開始を否定していたパウエルFRB議長。しかし、米中の対立が継続しており、逆イールドが発生したことも考えると、ジャクソンホール会議で9月の利下げを示唆するとバカラ村氏は考えている (C)Bloomberg/Getty Images News
■米ドル/円は調整局面だが戻り売りで
米ドル/円は105円がサポートされたため、調整局面となっていますが、パウエルFRB議長が利下げを示唆すると思いますので、戻り売りで良いのではないかと考えています。
(出所:TradingView)
105円でサポートされたあとのため、すぐに下降トレンドには戻らないと思いますが、107円台は売りも待っているようで、基本的には戻り売りでのトレードを考えています。
■英国で解散総選挙!? 英ポンドは調整しているけれど…
英国では、コービン労働党党首が解散総選挙を訴えており、英ポンドが調整しています。
英ポンド/米ドルは、1.2000ドルがサポートされたことや、市場が売りに偏っていることもあって、調整しやすい状況でもありました。
(出所:TradingView)
今週(8月19日~)は、21日(水)に英独首脳会談、22日(木)に英仏首脳会談が予定されています。
ここでは、ブレグジットに関する内容が話し合われるとされていますが、離脱期限の10月末まで時間があることから、まだ歩み寄るようなことがあるとは思えず、どちらかというと、英ポンドの売り材料になる可能性の方が高いと考えています。
■英ポンドのトレードがおもしろくなりそう!
野党のコービン労働党党首が、総選挙を訴えており、もし、10月末より前に総選挙が実施されれば、英ポンドは上昇することになりますが、その可能性は低いと思います。
今はまだ、合意なき離脱の可能性があるため、英ポンドは軟調な展開が続きやすく、10月末に合意なき離脱となれば、英ポンドは急落すると思います。
しかし、IMM(国際通貨先物市場)における投機筋のポジションからも、米ドルに対する英ポンドの売り越しが多くなっているため、その急落場面は長期的な良い買い場になると考えています。
※CFTCのデータをもとにザイFX!が作成
10月末に合意なき離脱を避けることができた場合も、英ポンドは上昇する可能性が高いと考えています。この場合は、10月末より前に、上昇が始まっていると思います。
(出所:TradingView)
米ドル/円は、105円の重要な水準まで来ていることもあって、値動きはあまり期待できません。しかし、英ポンドに関しては、今は売り目線ではいるものの、その後は売られ過ぎの巻き戻しもあって、大きく上昇するのではないかと考えており、今後は英ポンドのトレードが、おもしろくなるのではないかと考えています。
【参考記事】
●緩和余地の少ない円が買われる展開継続!? それでも米ドル/円が反発しやすいワケは?(8月13日、バカラ村)
●目先の米ドル/円はまだ戻り売り。でも、104円台以下は長期的な買い場になるかも!?(8月6日、バカラ村)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)