■米ドル/円が105円ブレイクに失敗した要因とは?
みなさん、こんにちは。
先週(8月12日~)の12日(月)、13日(火)の2日間に渡って、米ドル/円の105.00円ブレイクを試みたマーケットですが、ブレイクに失敗して反発しています。

(出所:Bloomberg)
要因は2つ。
まず、105.00円に、オプションからのまとまった米ドル買い注文があったこと。
2つ目は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と憶測されている本邦機関投資家による大口の米ドル買い注文があったこと。
ただ、今週(8月19日~)に入り、オプションからの105.00円の米ドル買い注文は、大口のオプションが行使期限となったことにより、多くが消滅。
今後、105.00円をサポートすると思われるのはGPIFだけというのがマーケットのコンセンサスになりつつあります。
今のところの戻り高値は106.70円。
これは、直近高値と安値の38.2%戻し(=106.69円)水準となり、戻りは次第に重くなってきています。そして、50%戻しは107.19円、61.8%戻しは107.70円となっています。
よって、米ドル/円は110円台どころか、108円台も次第に遠くなってきています。

(出所:Bloomberg)
今後も、米国の金利低下が見込まれることもあり、米ドル/円の戻りは限定的。
■英議会再開に向けてブレグジット議論が活発化
先週(8月12日~)から、米ドル/円に大きな動きはないものの、神経質に動いているのが英ポンド。以下は、英国の今後の主要イベント。

9月3日(火)に英議会が再開されます。
ブレグジットに関してさまざまな憶測が飛んでいますが、基本はボリス・ジョンソン首相の戦時内閣(ウォーキャビネット)誕生により、合意なきEU離脱の可能性が高まっており、英ポンドは戻り売りという論調が増えています。
【参考記事】
●ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!(7月25日、西原宏一)
●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
ただ、下記のように英ポンドのショートポジションをスクエアにするヘッジファンドも。
ポンド売り持ちブルーベイが解消-ジョンソン政権不信任、総選挙予測
ヘッジファンド運営会社ブルーベイ・アセット・マネジメントは、英国の政治的混乱の結果、欧州連合(EU)からの離脱期限が再び延期され、総選挙が行われる可能性が最も高いと予想し、3年間続けてきたポンドのショート(売り持ち)ポジションの解消を決めた。
出所:Bloomberg
現在、ウェールズ中部に位置するブレコンの予備選で保守党が議席を失ったことから(※)、保守党から2人造反が出れば、9月3日(火)にも内閣不信任投票が可決する可能性があります。
(※執筆者注:勝ったのはEU離脱取りやめを前面に押し出した自民党)
それから、14日以内に「挙国一致内閣」ということで、EU残留派を首相とする内閣が成立すれば、解散総選挙を約束することで、EU(欧州連合)から離脱延期をとりつけることが可能となります。暫定首相候補には、労働党のコービン党首が有力です。
■合意なき離脱の高まりは、離脱取りやめの可能性も高める
ただ、現在は誰であっても、野党をまとめることは困難。
しかし、ボリス・ジョンソン首相が合意なきEU離脱の可能性をさかんに喧伝するため、合意なきEU離脱が実現する可能性が高まっています。

ボリス・ジョンソン首相が合意なきEU離脱の可能性を喧伝するため、実現する可能性が高まっている (C)Justin Sullivan/Getty Images
この高まりが、逆に合意なきEU離脱を阻止しようとする野党を結束させ、挙国一致内閣の可能性を高めています。
私の友人によると、合意なきEU離脱の高まりこそが、同時にEU離脱取り止めの可能性をも高めることになるとのこと。
つまり、合意なきEU離脱の高まりで、英ポンドが暴落するリスクも高まっていますが、それに呼応してEU離脱延期の可能性も高まり、英ポンドが急反発するリスクも高まってきているということになります。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
■ボリス・ジョンソン首相率いる戦時内閣の戦略に注目
今週(8月19日~)に入り、欧州からもブレグジットに関する意見が報道されています。
まず先日、「メルケル独首相がアイルランド国境問題で『実務的解決策』検討も」といった前向きな発言をしたことが報道されていました。
しかし、アイルランドの国境問題の解決策は過去3年間、見つけられなかったわけですから、この時点でいきなり妙案が出てくるものなのでしょうか?
一方、フランス政府は、英国が合意なきEU離脱を中心にシナリオを描いていると報道されています。
フランス大統領府当局者によれば、合意なきEU離脱の場合でも、清算金(約390億ポンド=約5兆4000億円)は英国が支払うものと想定しているとのこと。
しかし、ボリス・ジョンソン首相は、EUから譲歩を引き出すために、清算金を交渉材料として使う可能性もあることを示唆している模様。
ボリス・ジョンソン首相の戦時内閣では、合意なきEU離脱も辞さずと発表しているので、フランス政府の意見は驚くことではありませんが、9月3日(火)の英議会再開に向けて、さまざまなヘッドラインが飛び出して、英ポンドは乱高下しそうです。
現状のマーケット環境は、さらに合意なきEU離脱懸念が高まっているといえます。
ただ、繰り返しになりますが、合意なきEU離脱の高まりこそが、同時に離脱取りやめの可能性を高めることになるため、英ポンドのショートに対しては必ずストップロスを設定して、急反発にも対応できるようにしたいところ。
9月3日(火)の英議会再開に向けて、ボリス・ジョンソン首相の戦時内閣の戦略に注目です。
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