■英総選挙の出口調査を受け、英ポンドが急上昇!
2019年12月13日(金)午前7時過ぎ、英下院総選挙の出口調査の結果が金融市場に大きな動きをもたらしました。
英公共放送BBCの出口調査による予測では、ジョンソン英首相率いる与党・保守党が368議席を獲得する見通しとなり、英下院全650議席の過半数である326議席を大きく上回ったのです。
英公共放送BBCの出口調査による予測では、ジョンソン英首相率いる与党・保守党が368議席を獲得する見通しとなり、英下院の過半数である326議席を大幅に上回った (C)Justin Sullivan/Getty Images
そんな英総選挙の出口調査を受けて英ポンドは急騰。英ポンド/米ドルは1.3180ドル前後から1.3515ドル前後まで2.5%ほど上昇し、英ポンド/円は144.00円前後から147.90円前後まで2.7%ほど上昇しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■世論調査では保守党の339議席獲得が予測されていた
12月13日(金)午前7時で投票が締め切られた今回の英総選挙ですが、12月11日(水)に調査会社ユーガブ(YouGov)が発表した世論調査では、与党・保守党の議席獲得予測は339議席に止まっており、過半数を大幅に上回る数字にはなっていませんでした。
この世論調査を受けて、英総選挙の結果次第では与党・保守党が英下院の過半数である326議席を上回れない可能性も指摘されていたのです。
【参考記事】
●どうなる? 12月12日英総選挙。6つの予想シナリオから英ポンドの動きを大予測!(12月6日、松崎美子)
●英総選挙に注目! 保守党の単独過半数は? 英ポンドは1.35ドル、1.40ドルへ続伸なるか(12月12日、西原宏一)
●いよいよ英総選挙。13日のアジア市場が主戦場に! 米ドル/円は110円台へ!?(12月12日、今井雅人)
けれど、実際にフタを開けてみると、出口調査で与党・保守党が368議席を獲得する見通しとなり、英下院の過半数を大幅に上回ったことがサプライズとなって英ポンドが急騰したのでした。
■米ドル安より円安の勢いが強いリスクオン相場だった
今回の英総選挙の出口調査結果を受けて動いたのは英ポンドだけではありません。
英ポンド買い・米ドル売りが強まった影響から米ドル安が進み、英ポンド買い・円売りが強まった影響から円安が進みました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 5分足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 5分足)
つまり、英総選挙の出口調査結果を受けて英ポンド高と同時に米ドル安、円安が進んだわけですが、ここで米ドル/円に注目してみると上昇していることがわかります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 5分足)
円安と米ドル安が同時進行しているときに米ドル/円が上昇しているということは、米ドル安より円安の勢いが強いということで、典型的なリスクオン相場の様相だったのですが、その背景には英総選挙における保守党圧勝のほかにもう1つの材料がありました。それは米中貿易協議の進展です。
今回の英総選挙の出口調査結果が伝わったのは12月13日(金)午前7時過ぎでしたが、12月12日(木)の夜から米中貿易協議の進展を期待させる材料が相次いでいたのです。
12月12日(木)23時30分過ぎにはトランプ米大統領が「中国との大きな合意に非常に近づいている」とツイート。
Getting VERY close to a BIG DEAL with China. They want it, and so do we!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) December 12, 2019
また、「米交渉担当者は15日に予定している対中関税第4弾の取りやめと既存の追加関税の引き下げを提案した」との報道や、「米国は中国との貿易協議で原則合意。トランプ米大統領の署名待ち」との報道も伝わっていました。
そして12月13日(金)の朝には「トランプ米大統領は中国との貿易協議で限定的な合意案を承認。現行の対中関税を引き下げ、15日に発動予定だった追加関税も見送る」と報じられたのです。
こうした一連の報道を受けて米株高や円安が進むなどリスクオンの動きが強まっていたのでした。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 15分足)
12月12日(木)の夜から米中貿易協議の進展を期待したリスクオンの動きが強まっていたからこそ、12月13日(金)午前7時過ぎに英総選挙の出口調査結果が伝わった際、米ドル安より円安の勢いが強くなったということが言えそうです。
■FX会社によってチャートが大きく異なっている
本記事で何度も伝えているとおり、今回の英総選挙の出口調査結果が伝わったのは12月13日(金)午前7時過ぎなのですが、米国が標準時間(冬時間)である12月13日(金)現在、FX取引において午前7時といえば営業日が変わるタイミングです。
【参考記事】
●2019年11月3日(日)米国が標準時間へ移行。FXの取引時間や指標発表時刻はどうなる?
営業日が変わると、FX会社は投資家のポジションを翌営業日に持ち越すロールオーバーを行う必要があるため、FX会社によっては午前7時前後にメンテナンス時間を設けているところもあります。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●スワップポイントはいつもらえる? 土日や祝日の分は? 気になるしくみを徹底解説!
メンテナンス時間中はFX取引ができないため、チャート上にもメンテナンス時間中の動きは残らないのですが、今回の英総選挙の出口調査結果が伝わったのは12月13日(金)午前7時過ぎでしたから、メンテナンス時間を設けているFX会社のチャートはどうなったのでしょうか。
たとえば、セントラル短資FX[FXダイレクトプラス]では12月13日(金)午前6時55分から午前7時10分がメンテナンス時間だったのですが、セントラル短資FX[FXダイレクトプラス]の英ポンド/円の10分足チャートは以下のようになっていました。
セントラル短資FX[FXダイレクトプラス]のメンテナンス時間である12月13日(金)午前6時55分から午前7時10分の間に、英総選挙の出口調査結果を受けて英ポンド/円が急騰したため、メンテンナンス時間終了後にいきなり高く始まって大きな上窓を開けた形となりました。
もうひとつの例として、SBI FXトレードのチャートを見てみましょう。SBI FXトレードのメンテナンス時間は12月13日(金)午前6時30分から午前7時でした。
英総選挙の出口調査結果を受けて英ポンド/円が急騰したのは12月13日(金)午前7時過ぎであるため、SBI FXトレードの英ポンド/円チャートには大きな上窓は出現せず、大陽線がクッキリと示されています。
(出所:SBI FXトレード)
ここではセントラル短資FX[FXダイレクトプラス]とSBI FXトレードのチャートを例に挙げましたが、午前7時過ぎという流動性が低下していたり、メンテンナンス時間と重なったりする時間に相場が大変動したため、各FX会社で為替レートやチャートが大きく異なる可能性があることは頭に入れておいたほうがよいかもしれませんね。
(ザイFX!編集部・藤本康文)
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