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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

下品なツイートを浴びせるトランプ大統領が
作り出す米国株バブルはいつ崩れる?

2020年02月12日(水)17:54公開 (2020年02月12日(水)17:54更新)
志摩力男

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■コロナウイルス感染拡大中でもNYダウは高値更新

 米国株が堅調です。

 新型コロナウイルスの発生という不測の事態が発生しましたが、NYダウの下落はわずか1200ドルほどで、いまだ感染拡大中にもかかわらず、3週間ほどで高値を更新しています。

【参考記事】
史上最高値更新のNYダウはブルトラップ? 英国とEUの交渉難航!? 欧州通貨を戻り売り(2月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
一時110円を超えた米ドル/円だが、上がる状況ではない。 英ポンド/ドルは1.26へ(2月10日、バカラ村)

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:Bloomberg)

前回のコラムで、この株価の強さはトランプ大統領に対する金融市場からの絶大なる「信頼」から来ていることを紹介しました。

【参考記事】
俺の手から血が吹き出るまで買う! 米国株の強さの理由はトランプの「信用」にあり!(2月5日、志摩力男)

 ただ、この「信頼」というのは、大統領の人間性に対する信頼ではありません。「自らの再選のため、株価を落とすようなことは絶対にしない」ということに対する信頼です。

■トランプ大統領に表立って反対する主要閣僚はいない

 とはいえ、大統領が株価を上げたいと思っていても、財政政策は財務長官が担当しますし、金融政策は政府から独立した中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が担うので、大統領の意思がそのまま通るわけではありません

 なぜ各国の中央銀行が政府から独立しているかというと、それは過去の歴史的経緯からです。

 景気を拡大させたい政府は、金融緩和を好みますが、それが過大なインフレを引き起こし、国民生活を何度も苦しめてきました。

 しかし、トランプ大統領が何度も何度も自分の部下を罷免したことで、今、政府内に残っている主要閣僚でトランプ氏に表立って反対する人はいません。

 特に、ムニューシン財務長官は究極の「イエスマン」、トランプ氏の意向を忠実に実行します。

ムニューシン財務長官写真

トランプ大統領が何度何度も自分の部下を罷免したことで、今、政府内に残っている主要閣僚でトランプ氏に表立って反対する人はいないと志摩氏は指摘。 ムニューシン財務長官はトランプ氏の意向を忠実に実行する究極の「イエスマン」だという (C)Bloomberg/Getty Images

■FRBも最高権力者の言葉は無視できない

 では、FRBに対してはどうでしょうか?

 パウエル議長の政策が如何に気に入らなくても、パウエル議長を罷免する(明確な)権限がトランプ大統領にあるわけではありません

 けれど、昨日もトランプ大統領は下記のような「下品」なツイートをしています。

(執筆者訳:ジェローム・パウエルが今日証言を始めたとき、ダウは125ドル上昇し、より高く向かおうとしていた。 彼が話すにつれ、ダウはいつものように着実に下降し、現在は-15ドルになっている。 ドイツおよび他の国では、借りてもお金がもらえる。 我々のプライムレートはもっと高く、FFレートは高すぎ、ドルの高さは輸出には厳しい)

 事あるごとに、こうした「下品」なツイートが浴びせられます。

 パウエル議長が会見を開始して株価が下がったのは、事前に緩和的な証言になると織り込まれていたからですし、そもそも株価が上がればFRBの政策は成功で、下がれば失敗というわけではありません。

 ただ、最高権力者の言葉は無視できません。

株価が上がれば成功という認識が米国中に刷り込まれているので、引き締め政策を取って株価が落ちた場合、その責任をFRBやパウエル議長がかぶることになります

 すなわち、十分に明らかな状況でない限り、大統領の意向に反する引き締め政策は採れない、つまり事実上、大統領の意向が金融政策に反映されてしまっています。

トランプ大統領は究極の「イエスマン」を財務長官に据え、そして事実上、FRBをコントロールすることで、財政金融政策のハンドルを一人で握る万能の人なのです。

■市場の急落を阻止するチームが株価を買い支え!?

 株価が下がった場合はどうするのでしょうか?

2018年12月に米国株が急落した際、トランプ大統領はムニューシン財務長官にPPT(Plunge Protection Team、プランジプロテクションチーム、市場の急落を阻止するチーム)の発動を要請したと報じられています。

 PPTは非公式の組織であり、本当に存在するのかどうかわからない秘密のチームでしたが、現在では「存在する」ことが公式に認められているようです。

PPTがあれば、直接株価を買い支えることができます。そして、PPTと同時にFRBに金融緩和させることができます。2018年12月の株価は、底から急反発しました。

NYダウ 日足(2018年10月~2019年2月)
NYダウ 日足チャート(2018年10月~2019年2月)

(出所:Bloomberg)

■トレーダー的にはトランプ大統領についていく必要

 この状況が本音で好ましいと思う人は少ないでしょう。

 しかし、好ましい好ましくないにかかわらず、金融市場で戦うトレーダー的には、とにかくトランプ大統領が指し示す方向についていかなければいけません

 また、そのことで、トレードの収益も上がりますし、業界の利益も上がります。

 先日、米中貿易交渉で第1段階の署名がなされた際、トランプ大統領は金融関係者もセレモニーに呼び、「君たちが立派に見えるようにしてやっているのに、誰一人ありがとうも言わない、どういうことなのか」と叱責していましたが、本音でしょう。

米国株の方向性は、トランプ氏が大統領である限り明確です。下がっても、金融緩和とPPTでマーケットを支えます

トランプ米大統領&習近平中国国家主席写真

2020年1月15日(水)、米中貿易交渉で第1段階の署名がなされた際、トランプ大統領はセレモニーに呼んだ金融関係者に対し、「君たちが立派に見えるようにしてやっているのに、誰一人ありがとうも言わない、どういうことなのか」と叱責した。これがトランプ大統領の本音だと志摩氏はみている。写真は2019年6月の大阪G20サミット時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

■バブルが崩れた時は相当の下げも覚悟したほうがいい

 しかし、そうなると、米国株は相当な状況にならない限り落ちないことになり、それは必要以上の投機資金を株式市場に滞留させることになります。

 そして、究極的には説明のつかない高さまで株価を持ち上げることになり、バブルになります。しかし、それを止めることは難しい。なぜなら、ハンドルをトランプ大統領一人で握っているからです。

 バブルがいつ崩れるのかわかりませんが、今ではないでしょう。

 少なくとも、大統領選挙までは株価が高いはずとのコンセンサスがあるので、参加者は全員、おっかなびっくりヒヤヒヤしながらも米国株ロングを持たざるを得ないという状況です。

全員ロングなので、もしかすると利食いのタイミングは大統領選挙の少し前なのかもしれません。また、選挙の後なのかもしれません。

 そして、市場はかなりロングなので、崩れた時は、相当の下げも覚悟しておいた方が良いでしょう。バブルが必然なように、崩壊も必然に感じます。

【参考記事】
俺の手から血が吹き出るまで買う! 米国株の強さの理由はトランプの「信用」にあり!(2月5日、志摩力男)

■2期目のトランプ大統領は「高い米ドル」に何かしてくる!?

 サンダース氏のような左派系の民主党候補が躍進した場合、こうしたリスクが顕在化するでしょう。

 サンダース氏が大統領に当選すれば、それは血を流さずに社会主義革命が米国で起こるようなものです。現在、最大の市場リスクは、民主党左派系候補の躍進にあります。

 蛇足になりますが、トランプ大統領が首尾よく再選を勝ち取った場合、先のツイートでも米ドルに対して言及しているように、2期目のトランプ大統領は「高い米ドル」に対して何かしてくるのではないかと思います。

 レーガン大統領がプラザ合意を実現したように、米ドルを引き下げる政策を取る可能性は高いと思いますが、その時、市場は大混乱となるでしょう。


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