■上海株急落からのNYダウ史上最高値も、上昇は続かず?
上海市場が急落し、リスクオフで始まった先週(2月3日~)でしたが、終わってみるとNYダウは史上最高値を更新しました。
【参考記事】
●中国の資金供給は、18兆ではなく2.3兆円!? リスクオフの円高。ドル/円は戻り売り継続(2月3日、西原宏一&大橋ひろこ)
●「株高・米ドル高」の流れは一時的か…? 英ポンド/米ドルは1.2500ドルへ下落再開(2月6日、西原宏一)
中国政府の資金供給が大きな金額だったため、市場も虚を突かれたのでしょうが、NYダウの上昇は続かず、チャートからは上値が限られているように見えます。
高値更新がブルトラップとなって下げていく可能性もありそうですね。
(出所:Bloomberg)
ここから下げるという見方と、FRB(米連邦準備制度理事会)による隠れQE(量的緩和)の影響でバブルが続くという見方との間で揺れています。
先週(2月3日~)暴騰したテスラ株はいかにもバブルっぽい動きでしたが、下げてきましたし、NYダウも一度は大きめの調整が入るとは思うのですが。
【参考記事】
●爆上げ中のテスラ株はバブルか? 本物か? CFDなら売り買い自在にテスラを取引可能!
(出所:Bloomberg)
■米中デカップリングと原油50ドル割れ
中国政府が対米関税の引き下げを発表したことも市場は好感したようですね。ただ、これを額面通りに受け取っていいのか……。
米国と合意した2000億ドル相当の米国製品購入が新型コロナウイルスの影響で難しくなったために関税を引き下げた、という見方もできます。
米中の「デカップリング(非連動)」が始まるのかもしれないですね。
同感ですね。
ただ、デカップリングが進むとしても「中国株は下がるのに米株が無傷のまま高値を更新する」というのは違和感があります。
2018年には、上海株が下がるが米株は上がるという動きが年央まで続きましたが、年末に向けて米株も崩れました。
今回も、どこかで米株にも影響が出るのでしょう。
新型コロナウイルスで経済が停滞し、需要減少するのではとの懸念から、WTI原油も50ドルを1年ぶりに割ってきました。
そもそも、OPEC(石油輸出国機構)プラスが協調減産を続けていることで保たれている原油価格ですが、追加の減産も協議されています。
こうしたサポートがなければ40ドル程度まで下がっていてもおかしくない相場。
原油価格が、さらなる下落となれば株式市場への影響も出てくると思われます。
(出所:Bloomberg)
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■握手を拒否し、原稿を破り捨てる
日本株では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の買いが入っているようですし、FRBは隠れQE、中国の資金供給、新興国は利下げ、産油国は減産――グローバルな株価下支えで米株は史上最高値を更新しましたが、そのわりに上がってこないのがトランプ米大統領の支持率です。
先週(2月3日~)から米大統領選挙の予備選も始まり、民主党ではブティジェッジが勝利しました。
ブティジェッジは、黒人など有色人種に不人気なのが弱点。
本命はバイデンとサンダースというのがコンセンサスですし、いずれにせよ、トランプ再選だろうというのもコンセンサス。
先週(2月3日~)の米議会では、民主党のナンシー・ペロシ下院議長が、トランプ大統領の演説後に原稿を破り捨てたのが衝撃でした。
If Nancy Pelosi succeeds in censoring our speech-ripping video, say goodbye to media coverage as we know it | Opinion https://t.co/jVdGK6tccQ
— Newsweek (@Newsweek) February 9, 2020
彼女は、もともと弾劾裁判に前向きではなかったのですが、左派の突き上げで仕方なく弾劾を進めました。
やはり無罪となったことで不満もあったのでしょう。
ただ、弾劾裁判で無罪になってもNYダウが史上最高値を更新してもトランプの支持率が高まらないのは、有権者の意向が固定化されているからかもしれません。
2月11日(火)には、第2戦となるニューハンプシャー州予備選。2月11日(火)、2月12日(水)にはパウエルFRB議長の議会証言が予定されています。
FRBは、2月7日(金)に公表した金融政策報告書で新型コロナウイルスについて「新たなリスク」と指摘したものの、わりと楽観的だった印象です。
パウエルFRB議長の質疑応答に注目ですね。
FRBは2月7日(金)に公表した半期に1度の金融政策報告書で、新型コロナウイルスについて「新たなリスク」と指摘した。2月11日(火)、12日(水)のパウエルFRB議長の議会証言では、質疑応答に注目が集まると大橋氏は見ている (C)Bloomberg/Getty Images News
■英ポンド、ユーロを対米ドルで戻り売り
今週(2月10日~)も株価次第ではありますが、気になるのは欧州通貨です。
先週(2月3日~)は、英ポンドやユーロが下げましたね。
ドイツの鉱工業生産は、予想を大幅に下回りましたし、イギリスとEU(欧州連合)の交渉も難航が予想されています。
ジョンソン英首相は、「ノーディールでも離脱する」と息巻いた昨年(2019年)同様、「瀬戸際外交」のスタンスで、今回も強気な態度を崩していません。
最終的には、まとまるにせよ、交渉途中では英ポンドが軟化する場面が増えるのでしょう。
ユーロも同様に当面は弱含むのでしょうから、欧州通貨を対米ドルで戻り売りしていくのがいいと思います。
あるいは、米ドル/円が110円に届かず反落するなら、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)での戻り売りでも良さそうです。
【参考記事】
●「株高・米ドル高」の流れは一時的か…? 英ポンド/米ドルは1.2500ドルへ下落再開(2月6日、西原宏一)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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