■ラガルドECB総裁の「裏切り」が効いたのはユーロ/ポンド
そして、ラガルドECB総裁の「裏切り」が本当に効いた相場は、実は、ユーロ/英ポンドである。総裁発言の後、騰勢を強め、昨日(9月11日)は200pipsほど続伸した。
ただし、その背景には、英国のEU離脱問題の再燃があり、また、ユーロが買われたことよりも、英ポンドが売りの要素が圧倒的に強かった。ラガルドECB総裁によるユーロ高牽制がなかった分、勢いがさらに加速したというわけだ。
詳細については、いろいろな報道があったからここでは省くが、要するに英国は、EUとFTA(自由貿易協定)で合意しないままEUを離脱してしまう、いわゆる「無秩序離脱」の可能性が現実味を増し、その結果、英ポンド売りに拍車がかかった。
英マイナス金利採用のウワサもあるが、無秩序離脱があれば、そちらの方も一段と現実味が増す。
このような英ポンドに関する疑心暗鬼が市場関係者に共有され、英ポンドのロングポジションの手仕舞いを急がせたと言える。
その結果、ドルインデックスが、まだ93前半に留まっているにも関わらず、英ポンド/米ドル、英ポンド/円の急落が見られ、目先、英ポンドの独歩安が深まったわけだ。
英ポンド/米ドルは一気に1.2773ドル、英ポンド/円は135.57円まで急落した。これからも、売られやすいのではないかと推測される。
なぜなら、巷における一般的なロジックと違って、相場におけるロジックは生活の常識とされる因果関係に縛られないからだ。
無秩序離脱のリスクが増大したから、そして、マイナス金利実施の可能性があったから英ポンド安が進んだ。その半面、英ポンド安が進んでいるからこそ、無秩序離脱とマイナス金利の可能性がより重視され、市場関係者の疑心暗鬼も一段と深まって英ポンド売りが、より一層仕掛けられる、といったロジックも十分想定される。
よって、「英ポンド安だからこそ、さらなる英ポンド安を呼ぶ」構造に警戒しておきたい。
■ユーロ/米ドルは早晩反落。リスクオフの円高は見られない
そして、足元進行している英ポンド安から、以下の2つの事柄が導き出せるかと思う。
まず、米ドル安が一服し、米ドル全体の切り返しが続くこと。次に、円は引き続き受動的であり、リスクオフの円高は、これからも見られにくいということだ。
前者に関しては、前述のように、たしかにラガルド総裁の「裏切り」があり、また、ユーロ/英ポンドの大幅上昇があったから、ユーロ/米ドルの切り返しがあったのだが、それをもって米ドル全体の切り返しを否定することはできない。英ポンドの先行に追随する形で、ユーロ/米ドルは、近々頭を再確認し、早晩反落してくると思う。
後者については、EU離脱問題の再燃があっても、米ドル/円は蚊帳の外だ。106円の節目の攻防に留まり、静かな値動きを見せているから、リスクオフの円高云々…とは言えない。
昨日(9月11日)の英ポンド/円の大幅続落は、あくまで英ポンドの急落であって、円がなんらかの主体性を発揮した痕跡は皆無だった。ここからもリスクオフの円高はないと思う。
この2つの事柄に対する検証はまた次回。市況はいかに。
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