■9月は米ドル安に調整の動き
為替相場は、7月までは米ドル安トレンドとなり、8月に入ってからは横ばいの通貨ペアが多くなってきましたが、9月に入ってからは、これまでの米ドル安を、やや調整し始める動きが出てきています。
ユーロ/米ドルは、1.2010ドルまで上昇しましたが、レーンEBC(欧州中央銀行)専務理事からユーロ高へのけん制発言が出たことや、市場にユーロ/米ドルの買いが多かったこともあって、その手仕舞いも出たことなどから、1.1781ドルまで調整しました。
(出所:TradingView)
■買い越し減少も、ユーロ/米ドルの上昇は継続しにくい
9月3日(木)に英FT(フィナンシャル・タイムズ)紙が、「ECB高官らは、ユーロ高が続けば輸出を圧迫し、物価を押し下げることを懸念」と報じたことも、ユーロ/米ドルの調整の動きを強めました。
IMM(国際通貨先物市場)のポジション動向では、投機筋の米ドルに対するユーロのポジションが、8月25日(火)時点は約21.2万枚の買い越しでしたが、最新の9月1日(火)時点では、約19.7万枚の買い越しまで減少してきました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
買い越しは減ってはいますが、まだユーロ買いに偏った状態のため、ユーロを買う新しい材料がないと、ユーロ/米ドルの上昇は継続しにくい状態だと思います。
■今週は、ECB理事会のラガルド総裁発言に注目!
今週(9月7日~)は、10日(木)にECB理事会があります。
理事会後の記者会見では、ユーロ高に関する質問が出てくると思いますので、ラガルドECB総裁がどのような内容の発言をするのか、市場も注目するところです。
【参考記事】
●1.20ドルを背に、ユーロ/米ドルを戻り売り!ラガルドECB総裁はユーロ高を牽制するか?(9月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
ECB理事会後の記者会見で、ラガルドECB総裁がユーロ高に関する質問に対してどのように発言するか、注目が集まりそう (C)Visual China Group/Getty Images
■目先のユーロ/米ドルは戻り売りで!
ユーロ/米ドルのこれまでの高値は、1.1915ドル、1.1965ドル、1.2010ドルと切り上がってきており、安値も1.1710ドル、1.1753ドル、1.1781ドルと切り上がってきています。徐々に水準が上がってきている状況です。
高値と安値が切り上がっているときは、「上昇トレンド継続」の形となりますが、高値を3回トライして、その後、上昇が続かないときは、調整が深くなることがあります。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●トレンド分析1(サポート/レジスタンス)
●トレンド分析2(チャネルライン)
現在は、1.1800ドル付近まで下がっており、上昇が継続していない状態になりつつあります。
(出所:TradingView)
ポジションも買いに偏っていることから、ユーロ/米ドルはまだ、調整する可能性があるのではないかと考えています。
長期では、米ドル安だと考えているため、ユーロ/米ドルは上昇すると考えていますが、目先は調整局面のため、戻り売りの方が良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは深い調整を期待しにくいが、短期的にはレンジ下限1.17ドルを下抜けそう(8月25日、バカラ村)
●米ドルは戻り売りで!バフェット氏の金鉱株購入は、長期的な米ドル安を見越した動き!?(8月18日、バカラ村)
■英国ではまた、合意なき離脱懸念
英国では、合意なき離脱懸念が再度、出てきています。
【参考コンテンツ】
●ブレグジット=英国のEU離脱とは? 欧州連合離脱の経緯、離脱までの過程を解説
英国のフロスト首席交渉官は、交渉について譲歩しない姿勢を示しており、EU(欧州連合)側も譲歩していないため、折り合いがつかず、平行線が続いています。
9月4日(金)に英タイムズ紙が、「英首相官邸は、ブレグジット(英国のEU離脱)の合意の可能性は、30~40%しかないと見込んでいる」と報じています。
ジョンソン英首相は、「10月15日(木)までに結論を出す必要がある」としており、FTA(自由貿易協定)などに関する交渉の妥結期限を短くしてきています。
FTAなどに関する交渉の妥結期限を、EU首脳会議が開かれる10月15日に設定すると正式に表明したジョンソン英首相 (C)Justin Sullivan/Getty Images
■合意なき離脱なら、英ポンド/米ドルは1.20ドル!?
ジョンソン英首相は、合意なき離脱であったとしても、英国は不利にならないと考えているようで、そうしたことからも、合意なき離脱への懸念から、英ポンドは軟調に推移してきています。
(出所:TradingView)
これらは、ジョンソン英首相の瀬戸際外交の可能性もあり、期限ギリギリの段階で合意にたどりつく可能性もありますが、今は、英ポンドは軟調に推移しやすい状況です。
可能性は低いとしても、もしものときのためにリスクヘッジをする必要がある人もいるため、期限が近くなればなるほど、英ポンドは軟調に推移しやすくなります。
合意なき離脱となれば、英ポンド/米ドルは1.20ドルまで下落すると予想する金融機関も出てきています。
(出所:TradingView)
■英ポンド/米ドルも、目先は戻り売りだけど…
ただし、普通に考えると、現在は新型コロナウイルスの影響で景気が悪化しており、そこに合意なき離脱となれば、さらに景気が悪化することになりるため、かなりのダメージを受けることになります。
それは、英国だけでなく、EU側にもダメージです。
それは避けてくると思いますので、期限ギリギリで合意、もしくは、期限ギリギリで枠組みだけ合意、というような状況になるのはないかと思います。
そうであれば、今は英ポンドは軟調に推移したとしても、最後は上昇してくるのではないかと思います。
そのため、長期では米ドル安と考えていますが、目先に関しては、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは、戻り売りが良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは深い調整を期待しにくいが、短期的にはレンジ下限1.17ドルを下抜けそう(8月25日、バカラ村)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)