■相場は分岐点。米ドルは下げ一服? さらに大幅に下落?
相場は分岐点に差し掛かっている。米ドル全体も米ドル/円も、このまま下げ一服を果たすか、それとも続落し、さらに大幅に下落余地を拡大するか、そろそろ明白になってくるかと見る。
もっとも、ゴールドマンサックスやシティーバンクを含め、ウォール街の有力筋の多くは米ドルの一段安を見込み、来年(2021年)、さらなる大幅安ありと見込んでいる模様だ。
米ドル安の根拠は、やはりコロナ対策として、FRB(米連邦準備制度理事会)の前代未聞の超金融緩和や、米政府による戦後最大規模の財政出動、つまり米ドルのばら撒きがもたらした米ドル供給超過が挙げられている。
しかし、その理屈がこれから通用するかどうかは、実は言われているほど単純ではない。
■「米ドルのばら撒き=米ドル安断定の根拠」とはならない
なにしろ、今の相場の雰囲気は、為替に限定する前提で言うなら、2008年リーマンショック後と似ているかと思う。
リーマンブラザーズ証券の破綻は2008年の出来事で、その後、FRBによる前代未聞の大規模QE(量的緩和策)が3回(4回との見方もあり)も実施されたものの、ドルインデックスに想定された「底割れ」は生じなかった。
(出所:TradingView)
ちなみに、ドルインデックスの安値は2008年4月にすでに出現しており、2011年5月の安値がそれに接近していたものの、それ以上の米ドル安の進行はなかった。このあたりの話は、本コラムにて何度も取り上げているので、ここでは重複を省く。
【参考記事】
●「リスクオフの円高」にとらわれているとなぜこれからの相場は見極められないのか?(2020年4月24日、陳満咲杜)
当時、ウォール街も巷も、猫も杓子も米ドルの一段安を見込んでいた。理屈として子どもでもわかるほど単純だっただけに、大半の市場参加者に確実視されたわけだ。
しかし、市場の本質は「先を行くこと」、そして「不確実性を伴うこと」にあるから、万人に受け入れられるロジックが、そのまま通用しなくなるのも自然の成り行きであろう。今回も、あまり確信を持たない方がよいかと思う。
要するに、猫も杓子も同じ方向を、そして、皆が自信満々で同じ方向を張る相場ほど落とし穴がある。これも相場の真実の1つなので、今さらあれこれの事例を持ち出さなくてもおわかりいただけるかと思う。
米ドルのばら撒きがあった、また、これからもばら撒かれる可能性が大きいからと言って、必ずしも、米ドル安を断定できる根拠になるとは限らないことを強調しておきたい。
相場は「理外の理」、そして、相場のことは相場に聞くしかない。ゆえに、現時点において、米ドル安の進行が続いていることは事実なので、あくまでトレンドフォローの視点なら、一段の米ドル安を見込むこと自体、まったくは問題ない。
(出所:TradingView)
しかし、米ドルがばら撒かれているから米ドル安が続くといった理由で、ウォール街の大物がリスクの許容範囲を超えた大きなポジションを取るなら、やはり適切とは言えず、どこかで矛盾を抱えるかとも思う。
米ドル/円について、目先、また104円の節目を割り込み…
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