■米国の無制限QEに追随し、日銀も追加緩和の見通し
FRB(米連邦準備制度理事会)の無制限QE(量的緩和)に追随する形で、日銀も来週(4月27日~)予定する金融政策決定会合にて、国債の無制限購入を行うなどの追加緩和を決める見通しだ。
日銀は、来週の金融政策決定会合において、追加緩和を決める見通しである (C)Bloomberg/Getty Images
こういった報道にまったくと言ってもいいほど市場関係者は驚かず、目先の影響も極めて限定的である。
コロナショックが一段と広がったことで、日本政府は景気見通しを引き下げ、2008年リーマンショック以来、最も厳しい状況にあることは明らかだ。
すでに年間80兆円となっていた日銀の国債買い入れ枠の上限が撤廃されて、さらなる国債購入があったとしても大した効果はないという懐疑論も根深い。しかし、景気は「気」の部分も大きいから、やはり、上限なしの国債購入は市場心理のもう一段の悪化を阻止する側面が無視できない。
FRBの決定と同様、今は「非常時」なので、従来の枠にとらわれない政策が必要不可欠だ。日銀の政策や決定は評価すべきだと思う。
■いまだに「リスクオフの円高」にとらわれてしまう理由とは?
もっとも、米国の無制限QEによる米ドルの超過供給で、いずれ米ドル高の基調は修正され、米ドル安をもたらすだろうという観測が多い反面、日銀に同様の政策があっても円安が進むという見方は少ないようだ。
基軸通貨とそうでない通貨との違いという側面もあるが、円は「翻弄されてきた通貨」としての記憶が強い分、円サイドの事情でトレンドが形成されない、という考え方が根深いようだ。無理もない、米ドル/円の歴史はそういう歴史であっただけに、いまだに「リスクオフの円高」というロジックにとらわれた市場参加者が多いのも仕方がない。
大局観としてまず強調しておきたのは、米QEがあったから米ドルの価値が著しく損なわれ、また、大幅な米ドル安の進行があったという見方は、米ドル全体の視点では正しいとは言い切れない。
2007年にサブプライム問題が浮上してきて以降、ドルインデックスは一貫して下落していたが、リーマン・ブラザーズ破綻前の2008年3月にはすでに底を打っていた。同社の破綻は2008年9月の出来事だったが、その時は今回と同様、「恐怖の米ドル買い」があったから、むしろ米ドルは押し上げられ、2009年2月まで上昇がみられた。
その後、QEの実行により、米ドル相場の上下はあったものの、ドルインデックスは2008年安値を割り込めなかった上、QE期間中のパフォーマンスも言われるほど弱くはなかった。
3月23日(月)の本コラムに掲載したチャートをもう1回見ればわかるように、明白な米ドル安の効果が見られたのはQE2の時期だけだった。QE1では「行ってこい」相場、QE3では横ばいの傾向となっており、これらは米QEがあったとしても、米ドル安一辺倒の状況ではなかったことを示している。
【参考記事】
●ドル高は事実上のQE4実施でも止まらない? コロナ収束後の市場のV字反騰に備えよ!(2020年3月23日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
詰まるところ、基軸通貨として、上限があるかないかを問わず、「米QEがあると米ドル安になる」というロジックは実際の相場で実証されたことではない。それでも、そのようなロジックがもてはやされることがあるのは、他ならぬ、米ドル/円の相場のみを見た場合の「錯覚」だと思う。
なにしろ、2007年にサブプライム問題が浮上してきて以降、リーマン・ブラザーズの破綻を経て、米ドル/円は2011年の史上最安値(※)まで一貫して下落していたから、米QEで米ドルが安くなるという考え方は「筋が通る」と思われがちだ。
(※編集部注:戦後の変動相場制以降での最安値)
米ドル/円のみを見る場合、ドル全体(ドルインデックス)と…
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