■米選挙、民主党が勝ったものの辛勝
米国大統領選挙の結果は、当初の予想どおりバイデン氏で、ほぼ決まりでしょう。
トランプ大統領陣営は選挙の不正を訴えていますが、証拠はこれまでのところまったくなく、裁判所に次々と否定され、撤退を余儀なくされています。
米国大統領選挙の結果は、当初の予想どおりバイデン氏で、ほぼ決まりだろうと志摩氏は指摘。トランプ大統領陣営は選挙の不正を訴えているが、裁判所に次々と否定され、撤退を余儀なくされているという (C)Scott Olson/Getty Images News
しかし、上院は共和党が過半数を維持しそうです。
ジョージア州では、決まらなかった2議席の再投票が2021年1月5日(火)にありますが、共和党候補のほうが優勢であり、2議席とも民主党議員が勝ち取って、上院の議席数が50対50になるというシナリオは、ほぼなさそうです。
下院は民主党が過半数を維持しましたが、当初の、民主党が議席を伸ばすという予想に反し、かなり議席を落としました。
結論から言うと、民主党が勝ったものの辛勝であり、トランプ氏、共和党は強かったという印象です。
【参考記事】
●バイデン政権では、ある程度の経済対策が実現し、増税はない。緩やかなドル安進行か(11月11日、志摩力男)
■民主党、ドラスティックに左派的政策を採用するのは難しい
次は、2022年の中間選挙に向けて動きますが、ラストベルト(※)の地域が上院の改選州に含まれます。
(※編集部注:ラストベルト(さびた工業地帯)とは、米国中西部の五大湖周辺に位置する、鉄鋼、石炭、自動車といった旧来の主要産業が衰退した地域のこと。ミシガン州、オハイオ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州などが含まれる)
つまり、ラストベルト各州の事情を考慮せねばならず、バイデン次期大統領、そして民主党は、ドラスティックに左派的政策を採ることは難しいことになります。
シェールオイル産出のためのフラッキング(水圧破砕法)を禁止したり、即座に、TPP(環太平洋連携協定)に米国が復帰したりすることは難しいかもしれません。
■海外から日本株への資金流入に伴い、円高・株高の可能性
マーケット的には、民主党が選挙で大勝し、巨額の財政出動を伴う民主党政策が発動されることで、「グロース株」から「バリュー株」へのビッグシフトが予想されていたのですが、中途半端に終わっています。
しかし、バリューシフトの波は小規模ながら起こっていて、日本株が上昇しているのも、日本株が「世界のバリュー株」であることも大きいのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
つまり、世界的なグロースからバリューへのシフトの中で、海外から日本株へ資金が流入するに伴い、「円高・株高」となる可能性が見えてきています。これまでの「円安・株高」とは違う組み合わせとなりそうなのです。
【参考記事】
●株価と為替の関係はいつも同じではない。「リスクオフの円高」がなくなる日は近い(2月19日、志摩力男)
■ワクチンのニュースで株高でも、米ドル/円は円高に回帰
この流れに拍車をかけそうなのが、ワクチンのニュースです。
ファイザー社とバイオンテック社によるワクチンは、90%以上の高い有効性を持つと発表され、株価は暴騰、そして、米ドル/円は103円台前半から105.65円前後まで、2円以上急騰することになりました。
【参考記事】
●新型コロナのワクチン開発期待で、市場はリスクオン。豪ドル/円は80円へ向けて上昇(11月12日、西原宏一)
●じわじわとした推移で長期的に米ドル安へ。年末に向けたリスク選好の動きにも期待!(11月10日、バカラ村)
(出所:TradingView)
インフルエンザワクチンの40~60%と比べると、極めて高い有効性です。つまり、ワクチンが普及すれば、コロナは克服できることがわかりました。
次いで、モデルナ社のワクチンも94.5%という高い有効性を示し、この時、米ドル/円は104円台前半から105円台前半へと上昇しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドル、1.1600ドルで底をつけた! まず1.20ドル、長期的には1.24ドルも期待(11月17日、バカラ村)
●上値の重さを確認したドル/円を戻り売り! 日経平均は独歩高。短期的な調整を警戒か(11月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
しかし、現時点では、米ドル/円は104円台前半に戻っています。すなわち、株価は高いままですが、米ドル/円は円高方向に回帰しているということです。
(出所:TradingView)
ワクチンで米ドル/円が上昇というのは、AIが昔のパラメーターのままだからでしょう。株価が上がると、リスクオンで円安というわけです。
しかし、こうした相場が修正されるにつれて、AIは自己学習するので、過剰反応もなくなるでしょう。
■株はグロースからバリューへ。為替は円高に
おそらく、ワクチンの成功で世界が正常化すると、株の世界ではグロースからバリューへのシフトが起こり、為替では円高となりそうです。
また、世界中の経済が元に戻るという姿が想起されるなら、米ドル安でしょう。そして、新興国通貨にも、資金は戻りやすくなります。
ワクチンが世界中で一気に普及することは難しいのですが、よく言われるのが、来年(2021年)の秋には…ということです。
しかし、ワクチンの増産は、意外に早く進むのではないでしょうか。
一部の有力アナリストは、来年(2020年)春には米国は集団免疫を獲得するという予想を出し始めています。
これから冬を迎え、欧米諸国では感染者が増え、大変な時期を迎えそうですが、春は暖かそうです。
我々も、コロナ後の世界、経済が正常化した世界に、頭を切り替えたほうが良いと考えています。
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