■トリプルブルー完成で、より巨額の財政支出が実現へ
米ジョージア州上院選決選投票を経て、民主党候補2人が議席を占め、上院も民主党が支配することになりました。米大統領、上院、下院すべてを民主党が支配するトリプルブルーの完成です。
【参考記事】
●「トリプルブルー」実現は、かなり濃厚! 2021年初頭も株高・米ドル安の動きか(1月6日、志摩力男)
これで民主党の政策を妨げるものは、なくなりました。より巨額の財政支出が実現することになります。
9000億ドルの追加経済対策が先日決まりましたが、7500億から1兆ドル程度のさらなる経済対策が近いうち(2~3月頃か)に、決まることになるでしょう。
600ドルの現金給付が決まっていますが、2000ドル、もしかするとそれ以上に増額されることになります。
それはコロナ禍で、困っている人々の生活費になるでしょうし、困っていない人の場合、テスラ株やビットコインに化けることになるのでしょう。
【参考記事】
●対GDP比17.9%! 巨額の米財政支出で溢れたマネーが次は米ドル相場を押し下げる?(2020年6月24日、志摩力男)
■今がもっとも暗い時。米成長率は6%を上回る予想も
世界各国でコロナウィルスが猛威をふるい、変種株まで発見され、大変な時期となっています。日本でも緊急事態宣言が出されました。しかし、おそらく、今がもっとも暗い時です。
今後、ワクチン接種が進みます。また、春になれば気温が上昇し、ウイルスの感染力は衰えます。
集団免疫を得て元の世界に戻ると、人々はこれまでの鬱憤を晴らすように旅行し、消費するでしょう。
米国の2021年の成長率は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の推計では3.7%から5.0%ですが、ゴールドマン等は6.0%を優に上回る予想をしています。
■FRB内で、金融政策は緩和し過ぎとの警戒感がある
そうなると、これまでの金融政策のままで良いのか?ということになります。
12月のFOMCで発表されたドットチャートでは、2023年まで現状のゼロ金利が続くことになっています。
(出所:FRB(米連邦準備制度理事会))
1月7日(木)に、ブラード米セントルイス連銀総裁が“The Pandemic Endgame Begins(コロナ終わりの始まり、とでも訳しましょうか)”という講演を行いましたが、ワクチン接種が進むにつれてコロナは収束し、コロナによる景気後退はリーマンショックの時と違って猛烈なスピードで元に戻っている、よって心配いらないかも、と示しました。
特に、数々の経済対策の結果、実は全体として見ると、家計はトレンド成長よりもかなり潤っていると指摘しています。
1月8日(金)には、クラリダFRB副総裁が同様のスピーチを行いました。
1月11日(月)、いつも物議を醸す積極的な提言を行うカプラン米セントルイス連銀総裁は、「年内に量的緩和政策の縮小の議論に着手したい」と語り、FRBの政策転換が意外に早いタイミングで来るのではないかと予感させました。ただし、カプラン総裁は、2021年のFOMCにおける投票権はありません。
こうした流れを見ますと、FRB内の一部は、明らかに現行の金融政策は緩和し過ぎとの警戒感があるのだと思います。
■「バーナンキショック」で、米ドル/円はどう動いた?
しかし、だからと言って拙速に動くと2013年5月の「バーナンキショック」のようになります。
【参考記事】
●ユーロ/円などの戻り売りが良さそう! ジャクソンホールまでは調整しやすいか(2020年8月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
「バーナンキショック」は、量的緩和政策の縮小について当時のバーナンキFRB議長が言及したために起こったことですが、米ドル/円相場は103.73円前後から94.17円前後へと10円弱下落しました。
今からチャートを見ると、アベノミクス相場の、単純な上昇相場の中の調整にしか見えませんが、さすがに10円弱下落すると多くのプレーヤーが怪我をしました。大手ヘッジファンドが、97円割れぐらいから大投げしているのを見ました。
【参考記事】
●アベノミクス相場を振り返り! 大胆な金融政策で米ドル/円と日経平均はどう動いた?
(出所:TradingView)
■米10年債利回りはゆっくり上昇しそう。年末に1.5%ぐらいか
そうした経験があるので、たとえ本当に金融政策の転換が必要と認識されても、発表の仕方は穏当です。
クラリダ副総裁は「見通しは明るくなった」と言いながら、現行の政策は2021年いっぱい続くと念を押しています。
カプラン総裁も量的緩和を縮小すると言っているわけではなく、その議論を始めたいと言っているだけです。
一部の委員の中には、米国株の一部がバブル的に高いことを意識している人もいるでしょうし、暗号資産(仮想通貨)が急騰していることも意識しているでしょう。緩和し過ぎだと感じているとは思います。
しかし、だからと言って米国株が下落すべきと思っているわけでもないでしょう。金融政策の調整は、ゆっくり行われます。
米10年債利回りは市場実勢に合わせて、ゆっくりと上昇しそうです。とはいえ、目先は1.25%ぐらい、年末に1.5%ぐらいでしょうか。
(出所:TradingView)
■中長期的な米ドル安トレンドの転換は、まだないのでは
これが米ドル相場のトレンドを転換するかというと、ちょっとよくわからないところです。
期待インフレ率は、2%にきています。つまり、米10年債利回りが1.25%ぐらいでも依然として実質金利はマイナスです。
【参考記事】
●米ドル/円は、いつかは円高方向へ調整か! ゼロ金利下で為替を動かすのはインフレ率(2020年9月9日、志摩力男)
FRB副総裁や地区連銀総裁達から出てきた、こうした議論で、少し米ドルが反転する可能性はあると思います。
どこまで反転するか、そこはあまり確かな見通しはありません。そして、中長期的な米ドル安トレンドが転換するのかと言うと、それはまだないのでしょう。
目先、少し米ドル下落にブレーキがかかると想定しますが、中長期のトレンドは変わらないと、見たいと思います。
(出所:TradingView)
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