■金価格は向こう1年で2000ドルに達する!?
ゴールドマン・サックスが金価格の見通しを、向こう1年で2000ドルに達すると強気に変更しました。
(出所:TradingView)
コロナの影響で新興国の金購入は減少しているようです。
特にインドの金輸入はこの4、5月は99%減少しました。ロシアも原油価格の低迷で金購入を見送っています。
中国は経済が徐々に回復していますが、それでも金購入は去年(2019年)ほどではありません。経済危機もありますが、価格が高いから需要が減っているのでしょう。
ジュエリー価格は、いまだにプラチナが金より高く、クレジットカードの序列も、プラチナカードがゴールドカードより上です。
しかし、実際のマーケットでは金はプラチナの2倍高くなっています。
(出所:TradingView)
■過剰なマネーが投資先を探している
それでもゴールドマン・サックスが金価格に強気なのは、先進国からの需要が強いからです。経済の先行きの見通しに対する不安があるのでしょう。
しかし、それ以上に、各国が金融を極限まで緩和し、財政の大盤振る舞いをしているため、過剰なマネーが投資先を探しているからでしょう。
リーマン・ショックの時、金の価格は1000ドル前後から700ドル前後へと下落しましたが、すぐに切り返し、3年後には史上最高値1870ドル前後へと達しました。
(出所:TradingView)
今回も似たような展開になるのかもしれません。
■先進国の経済対策は米・独・日の3国がダントツ
リーマン・ショック時は中国の経済対策が非常に大きく、それが世界経済をサポートしたと言われています。「高給取りの銀行員を救うのか!?」という世論の声もあり、先進国の経済対策は控えめでした。
リーマン・ショック時は中国の経済対対策が非常に大きかったが、「高給取りの銀行員を救うのか!?」という世論の声もあり、先進国の経済対策は控えめだったと志摩氏は指摘 (C) Spencer Platt/Getty Images News
しかし、今回は国が意図的に経済を止めました。被害を受けているのは一般の人々です。政府はいくらでも大盤振る舞いできます。
米・独・日、この3国の支出がダントツですが、中でも最も支出が多いのが米国です。
ポピュリストのチャンピオンとも言えるトランプ大統領のもと、対GDP比で17.9%もの財政支出をしています。
【参考記事】
●株価上昇=経済政策が正しいと言えるのか? 迫る大統領選、人種問題がトランプの逆風に!(6月10日、志摩力男)
2位はドイツですが、欧州圏全体で考えると、財政を出せないイタリアなどの国があるので、控えめと言えます。
【参考記事】
●欧州の経済打撃は第二次世界大戦に匹敵か。イタリアを救うのは中国!? ギリシャ危機と同じ!?(4月28日、志摩力男)
3位は我が日本。第1次と第2次の補正予算を合わせると、対GDP比で12%を超えてきます。
【参考記事】
●新型コロナ対策の補正予算は巨額! リスクは円安方向。ユーロ/円は長期の大底形成中か(6月3日、志摩力男)
■政府が直接ポケットに金を突っ込んできている
財政支出の拡大は、経済学の教科書では景気を刺激し、金融引き締めにもつながるので、通貨上昇要因と考えられていました。
しかし、今では金融緩和の代替措置とも考えることができます。
金融緩和による景気刺激に限界があるので、財政でサポートしなければならないという考えが主流派の経済学者からも出ています。
中央銀行がいくら金融緩和しても、銀行が貸し出しを増やさなければ市中に行き渡るマネーは増えません。
しかし、今回は政府が直接ポケットに金を突っ込んできています。しかも、信用リスクも肩代わりしています。マネーは確実に出ます。
特に米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を劇的に下げ、量的緩和を拡大し、しかもジャンク債まで購入対象としました。
【参考記事】
●FRBはトランプ政権の「無限の財布」になった。市場正常化とともに米ドル下落が始まる(4月15日、志摩力男)
その上、史上最大級の景気対策により、大量のマネーが市中に流れています。
それが株価の急回復につながりましたが、今は原油などの商品価格も持ち上げ始めています。
【参考記事】
●株価上昇=経済政策が正しいと言えるのか?迫る大統領選、人種問題がトランプの逆風に!(6月10日、志摩力男)
■投資先を求めるマネーが米ドルを押し下げるかも
投資先を求めるマネーが、次は米ドル相場を押し下げるのではないかと思います。
ドルインデックスは歴史的に高いレベルにあります。
この米ドルのサイクルが転換するのではないかとこの1~2年言われ続けていましたが、ついに転換点を迎えているのかもしれません。
ドルインデックスは7年程度のサイクルで上昇・下降を繰り返してきました。
下降サイクルに入るとすれば、向こう数年は米ドルは下落することになります。
※FRBのデータを基にザイFX!編集部が作成
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