■世界は新型コロナワクチンの取り合い、奪い合いに
日本に、なかなか新型コロナウイルスのワクチンが入ってきません。その一方、英国や米国では着々と接種が進み、イスラエルではほぼ全国民への接種が終わろうとしています。
オリンピックもあるのにどうして入ってこないのか、私同様にもどかしく感じる人は多いでしょう。
EU(欧州連合)が、イタリアで製造されたアストラゼネカのワクチンの、豪州への輸出を差し止めるということが起こりましたが、世界はワクチンの取り合い、奪い合いになっています。
下記の記事が、激烈なワクチン争奪戦の内幕を報じていました。内実がわかると、今の日本の状況が致し方ないということも理解できます。
ファイザー「首相と交渉を」 返答に関係者絶句、政府主導権取れず難航
出所:SankeiBiz
交渉相手は菅首相、健康被害が生じてもファイザー側には責任がないこと、医療データをすべて提供すること――こうした条件をすべて飲んだとすると、日本では政権が潰れます。
逆に言えば、接種の早い国はこうした条件を飲んでいるということです。いつ戦争になるかわからない、国民の心構えがあるイスラエル。リスクの取れるリーダーがいる英国、米国。リスク過敏症の日本との違いは明確です。
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■5月ワクチン接種終了で、米経済は早々に立ち直り
バイデン大統領は、5月までにすべての米国民がワクチン接種を終えると発表しましたが、集団免疫の獲得はもっと早いでしょう。ワクチン接種が進む国の経済は早く立ち直ります。

バイデン米大統領は、5月までにすべての米国民がワクチン接種を終えると発表したが、集団免疫の獲得はもっと早いというのが志摩さんの見方 (C)Scott Olson/Getty Images News
米国経済は、2021年に7%の経済成長を見せると予想されています。失業率は現在6.2%ですが、2021年末には4%近辺まで低下します。
ここで簡単な算数ですが、今年(2021年)はあと10回米雇用統計があります。米国の労働生産人口は約1億6400万人、労働参加率61.4%ですから、働いている人は約1億人。失業率が2%減るということは、約200万人の雇用が生まれることになります。
新型コロナウイルスを理由に職探しをしていない人も仕事をし始めるでしょうから、労働参加率も0.5%ぐらいは上昇するでしょう。
160万人分の雇用を追加すると、360万人分の雇用が今後10カ月で生まれると計算できます。毎回30万人を超える新規雇用者数の数字を見ることになりますから、雇用統計も盛り上がり、そのたびに米ドルも強くなりそうです。

(出所:TradingView)
■米長期金利はワクチン接種終了の5月ごろに再び上昇へ
ARP(米国救済計画法)が成立し、1.9兆ドルという巨額の資金が市場に投入されます。
【参考記事】
●バイデン経済対策は1.9兆ドル規模で実現へ。コモディティ価格上昇が豪ドルをサポート(3月3日、志摩力男)
当然、米国経済は活況となり、長期金利の上昇が懸念されています。
その影響で、米IT企業などのグロース株が売られ、バリュー株へのシフトが米株式市場に起こりました。ナスダック総合指数が下落する一方、NYダウが高値にあるのは、そうした理由からです。
では、米長期金利はどうなるのか。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、現行の超金融緩和政策を当面続けると明言し続けていますが、長期金利の上昇には特に懸念を示していません。
ただ、長期金利上昇が理由で米国経済が頓挫しても困るので、どこかのタイミングで、口先を使って長期金利の上昇を抑える構えは示すかもしれません。

パウエルFRB議長は米長期金利の上昇に懸念を示してはいないが、どこかのタイミングで、口先で長期金利を抑える構えは示すかもしれない (C)Bloomberg/Getty Images News
しかし、今、市場でウワサされているような「ツイストオペ」(※)などで長期金利の上昇を力づくで抑えることはしないのではないかと思います。
(※編集部注:「ツイストオペ」とは、中央銀行が民間金融機関との間で行うオペレーションのひとつ。長期国債の買い操作(もしくは売り操作)と短期国債の売り操作(もしくは買い操作)を同時に行うことで、資金供給量の増減なく、長期金利と短期金利を逆方向に導く手法のこと)
経済が回復し、政府資金が投入される中、景気過熱を抑えるのは難しいからです。それに、そのうち民主党政権で最低賃金の引き上げ(7.25ドルから15ドルへ)も実現します。
米長期金利は、現状の1.5~1.6%のところでしばらく安定するのではないかと思っています。しかし、ワクチン接種が終わる5月に向け、上昇するのは時間の問題でしょう。チャート上には、1.8~1.9%ぐらいのところに節目が見えますが、2%を超える長期金利も、そのうちあるかもしれません。

(出所:TradingView)
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■新年度入りに向けて、米ドル/円は大幅上昇の可能性も
その一方、黒田総裁は現状の「ゼロ±0.2%」という長期金利の目標を変えるつもりはないと言いました。日本の長期金利は米国の影響を受けつつも、0.2%から上はそれほどないということになります。

(出所:TradingView)
この構図はわかりやすく、3月は日本の決算があるので大きな動きはないかもしれませんが、4月の新年度入りに向けて、米ドル/円が大きく上昇するシーンもあるかもしれません。

(出所:TradingView)
また、米長期金利の上昇は、新興国に影響を与えます。あまりにも上昇ペースが早いと、新興国から米国への資金シフトが起こります。トルコリラなどはそうした影響が心配です。
【参考記事】
●トルコCPI上昇と世界的なインフレ期待でリラ下落。3月政策会合での利上げは必須!(3月10日、エミン・ユルマズ)
ただ、米国経済が上向けば、その周囲の国には当然、好影響があります。メキシコペソなどは、米長期金利上昇の影響を多少は受けますが、将来的に好影響がもたらされるので、それほど悪いことにはならないはずです。
■OPECが主導権を奪い返し、原油価格は高値推移
原油価格にも注目です。
OPEC(石油輸出国機構)プラスでは原油を増産することが予想されていましたが、現状維持となり、原油価格が上昇しました。これは、本当にOPEC側がうまくやったと思います。
米民主党政権下ではシェールオイルの増産にブレーキがかかるでしょうから、OPEC側が主導権を奪い返す形で、しばらく原油価格が高く推移すると思われます。これも円には悪い材料です。

(出所:TradingView)
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