■米ドル/円108円台へ。米金利の相関が鮮明に
米上院は先週末、徹夜の審議の末に1.9兆ドル経済対策法案を可決しました。
一部修正があったため、下院であらためて審議し、3月14日(日)までに成立する見通しです。
【参考記事】
●バイデン経済対策は1.9兆ドル規模で実現へ。コモディティ価格上昇が豪ドルをサポート(3月3日、志摩力男)
先週(3月1日~)発表された2月分の雇用統計も予想を上回りましたし、ISM製造業景況指数も3年ぶりの強い数字。原油も一段高です。
米長期金利がまた1.6%台ヘ上昇しましたが、何が背景だと思いますか?
今、ひろこさんが話したことの全部、でしょう。
米ドル/円も急上昇して、108円台半ばまできています。
今年(2021年)に入り、株が下がっても米ドル/円は反応しなくなっています。
何に反応しているかというと金利。米10年債利回りです。
金利急騰への恐怖があるため、このところ米国債市場ではヘッジファンドによる投機的な売り仕掛けもあるようです。
(出所:TradingView)
投機による金利上昇なら、一時的な動きとなるのでしょうか?
もともと金利高期待があるので、投機が入ってもスピードが速くなるだけ。
基調としての金利高は変わらないでしょう。
■米国ではじりじりとインフレ懸念が高まっている
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言に対する注目も高まっていますが、金利高を牽制するようなコメントは出ないですね。
米国では、じりじりとインフレ懸念が高まっています。
米国の友人も家賃の上昇で引っ越しを余儀なくされたそうです。
追い打ちをかけるのが原油高。
先週、OPECプラス(※)は減産の継続を決定し、サウジアラビアも日量100万バレルの自主減産を継続します。
ガソリン価格は上がりますし、物価高の圧力が高まります。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
【参考記事】
●底堅くなってきた米ドル/円を押し目買い。下がったところは拾って良さそうだが…(3月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
友人も「体感では2%くらいのインフレだ」とボヤいていました。
今週3月10日(水)には、米消費者物価指数(CPI)が発表されます。
CPIはまだ跳ね上がっていないですが、今後はインフレ指標に警戒ですね。
■現実味を帯びてきた「1ドル=120円」シナリオ
インフレ懸念が高まって米金利の上昇が続くなら、米ドル/円も上がりやすいのでしょう。
2015年高値から引いた長期トレンドラインも上抜けましたし、「ゲームチェンジ」だと思っています。
(出所:TradingView)
先週、黒田日銀総裁は、一部で期待が広がっていた長期金利の変動幅拡大について、「必要と思わない」と否定しました。
日本の金利はゼロ近辺でキャップされますから、日米金利差は広がる一方です。
米金利の上昇が続くなら、米ドル/円の上昇も正当化できますが、ターゲットはどのくらいを見ていますか?
まだ明確なイメージはないですが、120円水準も可能性として出てきましたね。
ただ、目先では2015年高値と2016年安値で引いたフィボナッチの38.2%である109.20円付近、大台の110円、昨年(2020年)高値の112.23円といったあたりが目安になるのでしょう。
(出所:TradingView)
■「羅針盤」スイスフランが示す米ドルの先行き
昨年からの米ドル安トレンドは、もう終わったのでしょうか?
10年ほど前まで「米ドルの羅針盤」となっていたのが、米ドル/スイスフラン。
SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が2011年に始めた執拗な介入と、その撤廃で相場が壊れて、羅針盤としての機能が失われましたが、今再び機能し始めているように見えます。
今年、対米ドルで売られている主要通貨が円、そしてスイスフランです。
【参考記事】
●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!(2015年1月15日)
●プライスが消えた…。現役インターバンクディーラーが語ったスイスショックの瞬間(2015年1月21日)
※ザイFX!編集部が作成
今年に入ってからの米ドル/スイスフランは、非常に強いですね。
今年の米ドル高を示す先行指標として、年初から上がっていたのだと考えています。
羅針盤としてのスイスフランから考えても、米ドル/円はゲームチェンジとなった可能性が高いと言えます。
(出所:TradingView)
昨年からずっと注目していた豪ドルはいかがですか?
中期的に強気な見通しは変わりませんが、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は「為替レートは上昇しており、近年のレンジの上限に位置」との声明を出しています。
豪ドル/米ドルの0.80ドルを目安としているようなので、いったん上昇は止まるかもしれません。
ここからは豪ドル/米ドルよりも、豪ドル/円がよさそうです。
ただ、今週(3月8日~)はゲームチェンジとなった米ドル/円の買いでいいのでしょう。
注目は、米長期金利の動向です。
(出所:TradingView)
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(構成/ミドルマン・高城泰)
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