■トルコCPIは5カ月連続上昇
今週(3月8日~)は、トルコの2月のCPI(消費者物価指数)が発表されました。2月のCPIは前年比で15.61%、前月比で0.91%となりました。CPIは前年比で5カ月連続上昇していて、年間CPIは2019年7月以来の高水準に達しています。
(出所:各種データよりザイFX!編集部が作成)
データの詳細を見ると、コアCPIも16.21%に達して大きく上昇しているのがわかります。食料品の上昇率は特に大きく、年間ベースでプラス18.4%となりました。
家電や通運セクターの価格上昇も激しいですが、逆に上昇率が低かったのは教育、衣料と通信でした。ここにコロナの影響が表れています。
今週(3月8日~)は、PPI(生産者物価指数)のデータも発表されていて、こちらは前年比で27.09%となり、2019年5月以来の高水準です。
インフレ率の上昇は、もちろんトルコに限った話ではありません。世界的にコモディティ価格の上昇が新興国のインフレ率を押し上げています。トルコの場合は、もともと高インフレになりやすい経済構造だったために、他の新興国以上に影響を受けています。
■世界的なインフレ期待の高まりでトルコリラ下落
今週(3月8日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円での下落トレンドが継続していて、米ドル/トルコリラは一時7.70リラを越え、トルコリラ/円も瞬間的に14円を割りました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコリラが下がったのは、トルコのインフレ率上昇に加え、世界的なインフレ期待の高まりが要因です。
米国の長期金利が大きく上昇したことが原因で、新興国市場から大量の資金流出が発生しています。
(出所:TradingView)
■中国当局が株価の過度な下落を恐れ、市場に介入
最近、市場の流動性を減らしてきた中国当局は、3月9日(火)に株価の過度な下落を恐れ、市場に介入しました。
この出来事がきっかけとなって米長期金利も下がり、トルコリラを中心に新興国通貨は買われました。中国の市場への介入は、全国人民代表大会中の暴落を止めるという政治的な目的もあります。
よって、この緩和措置が一時的なものなのか、それとも政策転換なのか現時点ではわかりません。しかし、コモディティ価格の上昇はコモディティの最大輸入国である中国にとって望ましくないのは確かです。
■FRBは、すでにサイレントYCCを実施しているとの見方も
FRB(米連邦準備制度理事会)がイールドカーブコントロール(YCC)(※)を実施するかどうかについても市場の意見が分かれています。
(※編集部注:「イールドカーブコントロール」とは、金融市場にて短期金利と長期金利の操作を行ない適切な水準に調節しようとする金融政策のこと)
【参考記事】
●米長期金利の上昇でトルコリラも一時下落。ボラティリティの高い状態が継続するか(3月3日、エミン・ユルマズ)
パウエルFRB議長は先週(3月1日~)のスピーチで、YCCを示唆していませんでしたが、FRBが長期債の購入を増やしてサイレントYCCをすでに実施し始めているという見方もあります。
パウエルFRB議長は先週のスピーチでYCCを示唆していなかったが、サイレントYCCをすでに実施しているという見方もあるという (C)Bloomberg/Getty Images News
■3月会合でトルコ中銀は利上げを行う必要がある
いずれにせよ、トルコは現状のインフレ率では政策金利が投資家の期待に応えることはできないので、3月18日(木)に行われるトルコ中銀の政策会合で利上げを行う必要があります。
利上げがなければ、米ドル/トルコリラは、5月までに再び8.00リラを越える可能性が高いと考えます。
(出所:TradingView)
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