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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」
バックナンバー

米ドル高は本物。市場関係者の想像を
はるかに超えるスケールで、雄大なトレンドに!?

2021年08月20日(金)19:19公開 [2021年08月20日(金)19:19更新]

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ユーロ/円の安値割り込みで、鮮明になった2つのポイント

前回のコラムでは、ユーロ/円の安値再更新を警戒すべきだと指摘した。その指摘どおり、ユーロ/円は7月安値を割り込み、続落の勢いが増している。

【参考記事】
ユーロ/円の7月安値割れを警戒! なぜ、ユーロ/円の動向が一番重要なのか?(2021年8月13日、陳満咲杜)

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足チャート

(出所:TradingView

 ユーロ/円の動向は重要であることも繰り返し指摘してきたとおりで、ユーロ/円の安値割り込みにより、以下の2つのポイントが改めて鮮明化したのではないかとみる。

 まず、ユーロ/円の安値更新や続落はユーロ/米ドルの2021年年初来安値の更新が主導しており、換言すれば米ドル全体(ドルインデックス)の上昇や2021年年初来高値の更新がもっとも大きな背景であった。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView) 

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 次に、米ドル全体の急伸があったからこそ、米ドル/円の頭は抑え込まれ、早期高値トライの可能性は後退したと言える。

 その理屈について、筆者は本コラムにて繰り返し説明してきたので、ここでは重複しないが、ドルインデックスの年初来高値の更新については、少しマクロの視点からみてみたい。

【参考記事】
ユーロ/円の7月安値割れを警戒! なぜ、ユーロ/円の動向が一番重要なのか?(2021年8月13日、陳満咲杜)

コロナ禍への対応で米ドルがばら撒かれ、米ドルは下落。でも、過去と比較してドルインデックスはどうだった?

 昨年(2020年)のコロナショックがもたらした混乱や、マーケット心理の動揺は記憶に新しい。

 米国株が暴落し、15取引日で5回もサーキットブレーカーは発動、大恐慌の再来だとか、リーマンショックを超える規模の景気後退といった論調が2020年3月、4月あたりはもてはやされたが、結果的には大きな間違いだった。

 米国株は大暴落どころか大暴騰し、連日史上最高値を更新、代表的なS&P500で測れば、コロナショック後の安値からすでに100%以上の上昇率を達成、当時におけるもっとも楽観的な予想さえはるかに超えた。

S&P500 週足
S&P500 週足チャート

(出所:TradingView

 為替市場はどうだろうか。コロナショック後、ドルインデックスは一時暴騰、2017年高値を一時上回ったほどの急騰であった。

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足チャート

(出所:TradingView

 危機の時は、米ドルこそが本当のリスク回避先であることが証左され、米ドルの真価が再確認された歴史的な瞬間であった。

 もちろん、それは長く続かず、ドルインデックスは高値から大きく反落し、今年(2021年)1月安値につながった。

 「もちろん」と言うことは、理屈に沿った値動きだということだ。なにしろ、コロナ禍やコロナショックに対応するため、FRB(米連邦準備制度理事会)や米政府は、前代未聞かつ天文学的規模(※)の金融緩和や財政出動を打ち出した。

(※執筆者注:いろいろな計算の仕方があるが、最大18兆ドルとの計算もある)

 単純に言えば、ここまでお金をばら撒いたのだから、米ドル全体の下落は当然の成り行きであった。

 しかし、大事なのは過去の相場との比較だ。過去のコラムでも指摘したように、ドルインデックスの2021年1月安値89.16は、2018年安値88.15より高く、また2008年安値70.80より約26%も高い位置にあった。

ドルインデックス 月足
ドルインデックス 月足チャート

(出所:TradingView

リーマン・ブラザーズが倒産したら米ドルは買われた。米ドルは究極のリスク回避先であることが証左された

 足元、2021年年初来の高値更新もあって、米ドルはこれから一段高となりやすい環境にある。このことは、米ドルの地位をますます証明することになるのではないかとみる。

 なぜなら、2008年のドルインデックスの安値は、ニクソンショック後、米ドルが付けた最安値だったからだ。

 2008年はあのリーマン・ショックが発生、リーマン・ブラザーズの倒産前にマーケットはすでに混乱しており、市場関係者は強い警戒態勢を敷いていたから、米ドル売りが殺到した。

 しかし実際、リーマン・ブラザーズが倒産したら、ドルインデックスはむしろ買われた。真の危機の時、米ドルは究極のリスク回避先となることを証左したわけだ。

 その後は周知のとおり、FRBは大規模な量的緩和(QE)を3回(実際は4回とも言われる)も実施、天文学的規模のお金をばら撒いたが、ドルインデックスは2008年の安値を割ることはなかった。

 米ドルの真価が、歴史的な金融ショックをもって証左されたと思われたからこそ、ドルインデックスはその後、上昇トレンドを展開し、これが2017年の103.81の高値トライにつながった。

ドルインデックス 月足
ドルインデックス 月足チャート

(出所:TradingView

 天文学的規模のお金をばら撒いてもレートが切り下がらなかったのだから、これは米ドルの真価が証明されたというほかあるまい。

米史上最大規模にお金はばら撒かれたが、ドルインデックスは2018年安値を割り込まなかった

 2017年高値からドルインデックスは一時、急激に調整していたが、その調整は2018年安値88.15までに留まり、2008年安値を起点とした全上昇幅で測ると、半値押しに至らなかったので、米ドルの実力が再度示唆されたといえる。

ドルインデックス 月足
ドルインデックス 月足チャート

(出所:TradingView

 そして何より肝心なのは、今年(2021年)の年初来安値が2018年安値を割り込まなかったことだ。

 量的緩和にしても、金融緩和や財政出動にしても、言葉が変わっても本質は変わらない。要するにお金のばら撒きだ。

 昨年(2020年)、コロナショック後に米政府やFRBが打ち出した政策は米史上最大のものである。一連の政策に基づくお金の供給量は、もちろん米史上最大となったわけだが、それでもドルインデックスが2008年安値どころか、2018年安値さえ割り込まなかったこと自体が、何よりも大きな示唆であり、また、強いサインであったことを強調したい。

 ゆえに、ドルインデックスは2021年年初来高値、すなわち3月末高値を更新しているが、まだまだ上昇の途上にあり、また、そのスピードはこれから一段と加速することだろう。

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足チャート

(出所:TradingView

マクロの視点から見れば、米ドル高は本物。ユーロ/米ドルはパリティへ!

 マクロの視点からみれば、米ドルは歴史的な試練に耐えてきたから、米ドル高は本物である。そして、多くの市場関係者の想像をはるかに超えるスケールで、雄大なトレンドを形成していくだろう。

 あえて言うなら、筆者は戦後一貫して継続してきた米ドル安の大きな流れは、2008年ですでに終焉しており、米ドル全体は長期強気変動相場に移ってきたとみる。

 この視点が正しければ、ユーロは長期下落サイクルに入り、いつになるかはわからないが、パリティ(1ユーロ=1米ドル)になる市況がみられると思う。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足チャート

(出所:TradingView

 歴史的な強い米ドル高の局面がみられる場合は、往々にしてファンダメンタルズの急変を伴うから、ユーロという通貨自体の再分裂(新ユーロの誕生で2つに分かれるなど)もあり得るかと思う。もちろん、これは長期スパンの話で、ここ数年の話ではないことにはご注意いただきたい。

 マクロすぎる話で申し訳ないが、目先の相場では、ドルインデックスの2021年年初来高値更新で米ドル高の勢いが一段と増しており、逆張りの米ドル売りは禁物

 ユーロ/米ドルやユーロ/円をはじめ、しばらく主要ドルストレートやクロス円の下値追い(外貨売り)の市況が続くのではないかと思う。市況はいかに。            
                              (14:00執筆)

陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」
陳満咲杜 (ちん・まさと)

中国・上海生まれ。1992年に所持金5000円で来日し、日本語学校を経て日本大学経済学部に入学。生活費と学費をアルバイトでまかないながら在学中より株式投資を開始。大学卒業後、中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期のFX業界へ。香港や米国の金融機関で研修を重ね、トレーダーとしての経験を積む。GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。現在は陳アソシエイツ代表/アナリストとして活躍している。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。最新刊は『勤勉で勉強家の日本人がFXで勝てない理由』(ダイヤモンド社)、その他、『相場の宿命 2012年まで株を買ってはいけない!』、『CFDトレーディングの真実』『FXトレーディングの真実』(以上、扶桑社)、『着物トレーダーを卒業せよ 陳満咲杜の為替の真実』(青月社)などの著書がある。

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