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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ユーロ/円の7月安値割れを警戒!
なぜ、ユーロ/円の動向が一番重要なのか?

2021年08月13日(金)18:21公開 (2021年08月13日(金)18:21更新)
陳満咲杜

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ユーロ/米ドルは三尊天井が成立した可能性大。これから1.11ドルをめざす息の長い下落トレンドに

前回のコラムでは「米雇用統計の予測は無視し、相場の内部構造に専念すべきである」ことを再度説き、ユーロ/米ドルのベア(下落)トレンドの継続を有力視していた。

【参考記事】
米ドル/円は米雇用統計後にどう動く?米雇用統計の予測に限ってはエコノミストも小学生も大差なし!?(2021年8月6日、陳満咲杜)

 その後の市況は想定どおりの展開で、ユーロ/米ドルが1.17ドルの節目へ接近したことも、当然の結果とみなす。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

 つまるところ、米ドル全面高の流れが一層強化され、ドルインデックスが3月末高値を更新していくのは、もはや時間の問題であるということだ。

 米ドル全面高の流れのなか、ユーロ/米ドルの下落が一番想定しやすく、また、米ドル高の受け皿としてのユーロ安は構造的なものなので、これから一段と大きく下値余地を拡大するだろう。

 実際、ユーロ/米ドルの週足を観察すればわかるように、チャート上、すでに大きな「三尊天井(※)」のフォーメーションを形成し、先週(8月2日~)からの反落で同「ネックライン」を下回っている状態になっている。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足チャート

(出所:TradingView

 換言すれば、「三尊天井」が成立した可能性が大きく、これから時間がかかっても1.11ドルの節目前後に向けて、息の長い下落波を形成していくと推測される。

 現時点のファンダメンタルズの視点から言えば、米ドル高の進行自体は想定されるとしても、その規模が大きなものになることは、なかなか推測できないことかもしれない。

 しかし、強調したいのは、「値動きは先行、ファンダメンタルズは後追うような展開」が、筆者が思う「相場の真実」ということだ。ユーロ/米ドルの一段下落があれば、ファンダメンタルズにおけるいろいろな米ドル高を支持する材料が続々と出てくるはずなので、相場の内部構造の可能性を信じたい。

米ドル高は既定路線、これからの重要な問題はトレンドのスピード

 もっとも、テーパリングの可能性や米長期金利の持ち直しは、目先、米ドル高の支援材料となっており、これから利上げの前倒しなどの材料も想定されやすい。

米ドル高の基調はしばらく続き、また一段と加速する公算が大きいから、米ドルをロングするスタンスもしばらく維持すべきだと思う。

 米ドル高のトレンドは規定路線なので、これからの重要な問題はトレンドの方向ではなく、スピードにあるだろう。

 米ドル高の進行が、市場参加者の現時点のコンセンサスを超えるようなスピードになれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)をはじめ、相場の波乱があってもおかしくなかろう。

 なぜなら、次のようなことが想定されるからだ。

 まず、繰り返し指摘してきたように、米ドル高のスピードが「許容範囲」に留まる場合は、米ドル/円も米ドル全面高の恩恵を受け、連動した形の上昇となりやすい。

 しかし、米ドル全面高の速度が速ければ速いほど、実は米ドル/円がついていかず、逆にユーロ/円をはじめ、主要クロス円における外貨安がもたらす円高の圧力が浮上しやすくなり、これが米ドル/円の頭を抑え込む可能性が大きくなるのだ。

 言ってみれば、米ドル全面高の基調が鮮明化すればするほど、円ではなく、ユーロなど外貨が米ドル高の受け皿の役割を果たすから、円はまた二の次で、「翻弄」される存在、という位置付けが一段と鮮明化していく。

 ゆえに、これからユーロ/円など主要クロス円の動向を占う場合は、米ドル/円次第ということではなく、外貨次第という視点がより重要になってくると思う。

主要クロス円は、まず、ユーロ/円から7月安値にトライするだろう

 カナダドルやニュージーランドドルなど、テーパリングの実施、また早期利上げが想定される通貨が対円での切り返しをなかなか拡大できなければ、ユーロなどの外貨も対円でさらに頭が重くなっていくとも想定される。

 この意味合いでは、ユーロ/円をはじめ、主要クロス円の多くは中段保ち合いの状況を維持しているように見えるが、これらがこれから切り返しを果たし、元のトレンド(強気変動)に復帰していくといった考え方とは距離を置きたい

世界の通貨VS円 日足
世界の通貨VS円 日足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 円 日足

 さらに、中段保ち合いは継続されても、頭が重く、なかなか上昇しない状況が続く場合は、やはり上放れではなく、再度下放れしていく可能性が警戒される。

 この場合、主要クロス円の多くが7月安値を再度トライしていく可能性を否定できない。

 前述のように、米ドル全面高の市況が鮮明化すればするほど、このような市況になる確率が高いから、逆に言えば、主要クロス円の持ち直しが見られず、逆に7月安値を再度トライしていく局面があれば、ドルインデックスが一段と急上昇する市況が確認されるはずだ。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 もちろん、各クロス円の間に温度差はある。主要クロス円の中で、現時点のレートから測ると、ユーロ/円は7月に付けた安値に一番近く、豪ドル/円はユーロ/円よりマシな状況で、英ポンド/円は7月安値から一番離れた位置にある。

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足チャート

(出所:TradingView

豪ドル/円 日足
豪ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 英ポンド/円 日足
 英ポンド/円 日足チャート

(出所:TradingView

 したがって、クロス円の安値トライが再度みられる場合は、ユーロ/円が先行する市況も想定されやすく、しばらくバロメーター的な存在となろう。

 そもそもユーロ/円はほかのクロス円と違って、インターバンク市場で実際に取引される分、リアルなレートを形成しているから、クロス円の中における「リーダー」的な存在なので、ユーロ/円の動向が一番重要である。

円の動向はユーロ/円次第

 この意味合いでは、ユーロ/円次第という言い方も決して過言ではなく、円の位置づけはしばらく米ドル/円ではなく、ユーロ/円の動向で決定されるとみる。

 円は外貨次第なので、仮にこれからユーロ/円が再度安値をトライしたり、また、安値を更新することがあれば、これは円高ではなく、あくまでユーロ安であることも強調しておきたい。

 なぜなら、米ドル全面高の市況なしではユーロ/円の反落は続かず、米ドル全面高の流れにおいて、米ドル/円のみベアトレンドへ復帰することはありえないからだ。

 受動的な円高という表現が一番適切であろう。 米ドル/円の値動きを考えると、そもそもコロナショック後、米ドル全体のパフォーマンスと掛け離れて米ドルは対円での強気変動を形成してきたから、今回は一転して、米ドル/円は米ドル全体のパフォーマンスに劣る形の展開になりやすいかと推測される。

 しかし、それでも基本は米ドル高なので、ユーロ/円の調整が一服してくれば、また、米ドル/円が高値を追う市況が見られるはずだと思う。

 もちろん、ユーロ/円の調整がすでに一服、これから安値トライせず、逆に上放れする場合は、米ドル/円の早期高値更新、また、2020年高値の112.20円のブレイクが見られるはず。が、現時点では、筆者はその可能性はやや低いと思う。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(出所:TradingView

 その検証はまた次回、市況はいかに。

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