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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

米雇用統計は弱いが、11月のテーパリング
開始は決定事項か。豪中銀、ECBが「今」
動かなければいけない理由とは?

2021年09月08日(水)17:59公開 (2021年09月08日(水)17:59更新)
志摩力男

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各国中央銀行の「横のつながり」は、想像以上に密接している

 各国の中央銀行は、それぞれの国の経済状況に応じて金融政策を決めています。他の国の状況がどうであろうが、関係ない―――はずです。

 しかし、我々が考えている以上に、中央銀行同士は「横のつながり」が密接です。それがもっともわかりやすい形で現れたのは、2015年の「スイスショック」です。

【参考記事】
ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落!スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!(2015年1月15日公開)

 スイスショックとは何か。SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])は、対ユーロのスイスフラン上限レートを1.20フランに設定し、無制限に介入する方針を打ち出していました。それを決めたのは、2011年9月。スイスフランの上昇に悩まされてきたSNBでしたが、そのように宣言することで、スイスフランの上昇を防ぎました。そして、その政策を続けると事あるごとに言い続けました。

 トレーダーも、ユーロ/スイスフランが1.20フランに近づけば、ユーロ買い、スイスフラン売りをして、上がったところで反対売買をして利食いする……そんなオペレーションを繰り返していました。

 ところが、2015年1月15日(午前10時30分)、SNBは突然、この政策を撤廃すると発表したのです

 スイスフランは急騰(ユーロ/スイスフランは急落)し、混乱からスイスフランの高値ははっきりとはわからないのですが、おそらく0.85フラン前後まで一瞬のうちに下落しました。これが世にいう「スイスショック」であり、大変な損失を被った人も多かったと思います。

ユーロ/スイスフラン 月足
ユーロ/スイスフラン 月足

(出所:TradingView

 では、なぜSNBはこのような無謀な政策を採ったのか。その理由は、ECB(欧州中央銀行)から「量的緩和政策を採る」と聞かされていたからです。その翌週、2015年1月22日、ECBは量的緩和政策を採用し、月額600億ユーロの債券購入を決めたのでした。

 鼻のきくトレーダーだったら、その時わかったはずです。ECBは動くので、ユーロ/米ドルを思いっきりショートにすべきと……。

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RBA理事会では、テーパリング先延ばしせず。40億豪ドルへの債券購入減額を実施へ

 昨日(2021年9月7日)、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は理事会を開催し、7月に決めた、週当たり50億豪ドルから40億豪ドルへの債券購入減額を実施する方針を維持しました

 一部には、豪州の主要都市でのロックダウン(都市封鎖)が続き、短期的には経済状況が悪化している中なので、減額決定を修正し、50億豪ドルの購入を続けるとの見方もありました。特に豪州の4大銀行は、すべてテーパリング(※)の先延ばし、もしくは60億豪ドルへの増額を主張していました。

(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 それなのに、どうして予定通り40億豪ドルへのテーパリングを決めたのか。

RBAは、ロックダウンでの減速は一時的であり、2022年には力強く成長するからと説明しています。しかし、それ以外にも「今」テーパリングをしなければならない理由があるのです。それは、FRBがテーパリングをするからです。

ECBはPEPPの減額を予定通り実施へ。FRBがテーパリングをするので、ECBも「今」動く

 明日(9月9日)のECB理事会も注目で、PEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を減額するのではないかと言われています。おそらく予定通りするのでしょう。なぜなら、FRBがテーパリングをするからです。「今」動かなければならないのです。

 FRBのテーパリング決定を受けて、ECBがテーパリングに動くと、金利マーケットだけが為替を動かす要因とした場合、最初に米ドルが上昇します。次にECBが動くので、ユーロ高で終わります。

 逆にECBが先に動けば、最初はユーロ高になるかもしれませんが、後でFRBが動くので米ドル高になって終わります。(通貨高を避けたいなら)先に動いた方が有利なのです。

 しかし、FRBが動かなかったら、ECBだけテーパリングをしてユーロ高になって終わります。それではECBが困ってしまいます。つまり、ECBにはFRBが動くという、強い確信があるはずです。もしかすると、テーパリングを始めるということをFRB(パウエル議長)から直接聞いている可能性が高いのではないかと推察します

写真はラガルドECB総裁。ECBは、FRBがテーパリングに動くという強い確信があるはず。もしかすると、テーパリングを始めるということをFRBから直接聞いている可能性も高いのではないか (C)Visual China Group/Getty Images

写真はラガルドECB総裁。ECBは、FRBがテーパリングに動くという強い確信があるはず。もしかすると、テーパリングを始めるということをFRBから直接聞いている可能性も高いのではないか (C)Visual China Group/Getty Images

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米雇用統計は弱いが、FRBのテーパリング先延ばしの可能性はなさそう。11月スタートは決定事項か

 先日の米8月雇用統計は悪い数字でした。市場関係者の一部には、「もしかしたらテーパリングも後ずれするのではないか」という観測が流れています。しかし、それはないでしょう。

 9月FOMCでのテーパリングのアナウンスメントは、悪い米雇用統計を受けて「ない」と見られています。もちろん「ない」可能性もありますが、意外にアナウンスメントする可能性も依然として残されていると思います。

 そして、11月のテーパリングスタートは、ほぼ決定事項なのでしょう

【参考記事】
テーパリング開始ほぼ決定で、11月スタートか。でも、利上げまでは「じゃぶじゃぶ」状態が続く。FOMC議事要旨による「過去の書き換え」とは?(9月2日、エミン・ユルマズ)

 中央銀行の政策決定は、巨大なタンカーの操縦のようなものです。政策の影響が経済に及ぶには時間がかかります。よって、遠い先の経済状況を見越して、事前に、スケジュールどおりに動かしていく必要があります。

 もちろん、どのような決定になるのかは本当にわかりません。しかし、RBA、そしてECBの動きを見れば、FRBの動きも想像がつきます。

 ECBがテーパリングに動いたとしても、その先にFRBの政策変更が控えているならば、ユーロ/米ドルは買われるというより、売られてしまう。その可能性を織り込み始めたのが、今、目の前で起こっているユーロ/米ドル下落なのかもしれません。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:TradingView


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