トルコGDPは前年同期比プラス20%超えも、1-3月期と比べると景気回復は緩やかに
先週(8月30日~)後半から、トルコの重要なマクロ指標が発表されています。まず、9月1日(水)に発表された4-6月期のGDP成長率は前年同期比でプラス21.7%の成長となりました。
(出所:TUIK)
トルコ国内のエコノミストによるコンセンサスも、前年同月比でプラス22%前後でしたので大きなサプライズではありませんでしたが、前回のコラムでも書いたように、トルコ経済に回復の兆しが見えているのは明らかです。
【参考記事】
●パウエルFRB議長の講演はハト派的。リスク資産買いの中、トルコリラ上昇。市場はFRBのテーパリング見送りにかけている?(9月1日、エミン・ユルマズ)
一方で、GDP成長率はパンデミックのせいで歪んでしまっているので、前年同期比より1-3月期と比較すべきです。1-3月期と比べると、4-6月期のGDP成長率はプラス0.9%なので、景気の回復がかなり緩やかであることがわかります。
(出所:TUIK)
GDPの中身をみると、個人消費の伸び率が前年同期比でプラス22.9%となりGDPを引っ張っていることがわかります。
また、4-6月期の輸出がプラス60%で、輸入がプラス19.2%(いずれも前年同期比)となっていることがトルコの経常赤字の縮小に貢献し、景気の回復を助けています。
セクター別でもっとも大きく成長したのはサービス業でした。サービス業は前年同期比でプラス45.8%となりました。その他の主要セクターで建設はプラス3.1%、農林水産はプラス2.3%でした。
CPIが政策金利を上回り、トルコは実質マイナス金利に。CPIとPPIの乖離もさらに拡大
先週(8月30日~)発表されたもうひとつの重要な指標は、8月のCPI(消費者物価指数)です。8月のCPIはプラス19.25%となりました。
(出所:TUIK)
トルコの政策金利は19%なので、CPIが政策金利を超え、トルコは実質マイナス金利となったということです。
インフレ項目の中で特に上昇率が高いのは、プラス29%となっている食料品です。食料品価格の上昇率は2019年4月以来の高水準で国民生活を圧迫しています。
PPI(生産者物価指数)とCPIの乖離も、8月にさらに拡大しました。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】観光シーズン終了の9月中旬まで、リラは底堅い。その後は、本格的な利上げの有無が鍵に(8月4日、エミン・ユルマズ)
(出所:TUIK)
8月のPPIはプラス45.52%という記録的に高い数字ですが、その背景にあるのはサプライチェーンの乱れによるコモディティ(商品)高と輸送コストの増加です。
また、サービス業PPIの上昇も気になるところです。TUIK(トルコ統計局)の発表によると、7月のサービス業PPIはプラス38%で、史上最高の上昇率を記録しました。PPIとCPIの乖離が拡大しているということは、インフレ上昇圧力が近いうちに弱まらないことを示唆しています。
【参考記事】
●米長期金利2%超えならトルコリラ一段安か。CPIとPPIの乖離幅拡大は、何を意味する?(4月7日、エミン・ユルマズ)
CPIの政策金利超えは良いサインではないが、トルコ中銀の引き締めスタンス継続はトルコリラの安心材料
今週(9月6日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で堅調に推移していて、米ドル/トルコリラは一時8.30リラを割り、トルコリラ/円は13.20円水準という直近の高値圏で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
先週(8月30日~)金曜日に発表された米国の雇用統計が市場予想をはるかに下回ったことでドルインデックスが低下し、新興国通貨が買われました。
(出所:TradingView)
米国の雇用悪化を受け、FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(※)に踏み切る可能性も低くなりました。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
個人的には、FRBが新型コロナウイルスのデルタ株出現による景気悪化を理由に、テーパリングを見送ると予想しています。
【参考記事】
●パウエルFRB議長の講演はハト派的。リスク資産買いの中、トルコリラ上昇。市場はFRBのテーパリング見送りにかけている?(9月1日、エミン・ユルマズ)
トルコのCPIが政策金利を超えたことは良いサインではありませんが、これはトルコ中銀が今後も引き締めスタンスを続けることを意味し
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