FOMC、11月テーパリングに向けてアナウンスメントがあるか注目
最近のマーケットは、3つの材料で動いています。
(1)米9月FOMC(米連邦公開市場委員会)
(2)中国恒大集団の問題
(3)自民党総裁選挙
本日(9月22日)、米9月FOMCの結果が発表されますが、かなり論点は絞り込まれています。
ひとつは11月(ほぼ決まりでしょう)のテーパリング(※)に向けて、それに対する「アナウンスメント」があるのかどうか。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
テーパリングについては事前にお伝えすると、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は繰り返し言っていることなので、11月がほぼ決まりであるならば、何らかのアナウンスメントはあると思われます。
写真はパウエルFRB議長。FOMCでは、11月のテーパリングに向けて、それに対する「アナウンスメント」があるかどうかに注目 (C)Bloomberg/Getty Images News
もうひとつはSEP(Summary of Economic Projection)(※)内のドットチャートです。6月のFOMCでは、想定以上にドットチャートが「タカ派」化したので、ユーロ/米ドルが売り込まれました。
(※編集部注:「SEP」とは、FOMCメンバーが出す経済見通しのサマリーのこと)
【参考記事】
●本命の米株市場崩れず、リスクオン回帰か。FOMCでパウエル議長を裏切った5人とは?(6月23日、志摩力男)
(出所:TradingView)
今回も同様に「タカ派」化があれば、米ドル高が進む可能性があります。ただ、多少の「タカ派」化は織り込まれてはいます。
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恒大集団の問題が、中国外に及ぶ影響はそれほど大きくない。それよりも、巨額の民間債務が中長期の問題に
中国恒大集団は、中国最大規模の不動産デベロッパーです。1996年にわずか10人で始めた会社ですが、大量に資金調達し、大規模プロジェクトを次々行い、今の中国を象徴するような急成長を遂げた会社です。
負債総額が3000億ドル(約33兆円)と巨額なので、破綻した場合はリーマンショック級のことになるのではないかと、懸念されています。
しかし、すでに社債等は破綻レベルで取引されており、いつ破綻があってもおかしくない企業とみなされています。目先は支払い期限に資金を払うことができるのかといったことに一喜一憂かもしれませんが、いずれ破綻もしくは整理されるでしょうし、そのことで中国の外に及ぶ影響はそれほど大きくないでしょう。
それより、問題はもっと中長期のこと。中国の問題は巨額の民間債務です。債務の伸びに比べ、実現できる成長率は年々低下してきています。他の国と比べると成長率は高いのですが、債務の伸びはそれ以上、2021年7月末時点での社会融資総量残高は前年比10.7%増の302兆4900億元(約46兆6000億ドル)であり、円で換算すると約5000兆円という途方もない規模です。中国のGDP比で300%を超えます。
中国政府は社会全体、特に不動産市場に積み上がってきた「レバレッジ」を低下させる努力を始めました。三条紅線(3つのレッドライン)と呼ばれるものです。
そのレッドラインを維持するため、恒大集団の不動産投げ売りが昨年(2020年)から始まりました。不動産業界全体では、まだ300兆円以上債務のレベルを下げなければならないと試算されています。
こうした「レバレッジ」の解消が今後も進みます。これが秩序ある形で行われるか、それとも、日本のバブル崩壊後と同様に無秩序に行われるかわかりませんが、今後、何年かは、中国経済はかなり減速することになります。
中国に高額商品を売って利益を上げてきた欧州の高級ブランドの会社などは、今後、業績が落ちることになるでしょう。中国経済減速の影響は、日本にもおそらく及ぶはずです。
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自民党総裁選、各候補者の政策で相場はどう動くのか?
メディアでも盛り上がっていますが、自民党総裁選挙は、今後の日本の進路が決まる重要な決戦の場です。この10年近く、日本は超金融緩和のアベノミクス路線できました。その後継者となるのが高市早苗候補です。
【参考記事】
●豪ドル/円の押し目買い継続!「サナエノミクス」は、いわば「NEWアベノミクス」。株高・円安の再来に期待できそう(9月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
「2%の物価目標達成まで、プライマリーバランス黒字化を棚上げ」という政策を打ち出していますが、これはすごい。市場にどのように受け止められるかわかりません。日本がMMT(※)導入!?と見なされれば、米ドル/円や株価がぶっ飛ぶ(円安・株高)ことになります。
(※編集部注:「MMT」とは、政府が自国通貨建ての借金(国債)を増やしても財政は破綻することなく、インフレもコントロールできる。したがって、借金を増やしてでも積極的に財政出動すべきだとする理論のこと)
そこまでいかないにしても、おそらく高市氏の理論は、ノーベル賞を受賞した米プリンストン大学クリストファー・シムズ教授が主張する「FTPL(物価水準の財政理論)」をベースにしているものと思われます。
しかし、財政規律を失いかねないものなので、財務省が受け入れるかどうか疑問ではありますが、円安・株高のアベノミクス相場に近いものが起こりうる可能性があります。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
支持率トップの河野氏は、そうしたアベノミクス的金融緩和にはやや冷淡です。「インフレは経済成長の結果」とまっとうな意見。これには好感が持てます。
しかし、「インフレ目標は意味無し」、「将来の金利上昇時に日銀の損失拡大を懸念」というのは、そのとおりでもありますが、主流派の経済学者でも、そうした考えより、もっと金融緩和に寛容になっているでしょう。金融緩和に熱意がないと見なされれば、円高を招く可能性が高まります。
河野氏の考え方は、非常に合理的で、かつ、世代間の不公平をなくそう、将来に問題を先送りしないようにしようとする態度は素晴らしいと思います。自民党内の世代交代が進み、様々な隠されていた膿も出てくるでしょう。しかし、それを阻止したい勢力も強そうです。
1回目の投票では河野氏が1位でしょう。しかし、過半数を獲得できなければ決選投票となります。決選投票では、高市氏か岸田氏か、誰が2位になるのかわかりませんが、おそらく今の情勢ですと、2位の候補が自民党新総裁ということになりそうです。
岸田氏であれば、基本的には、これまでの自民党の政策継続でしょう。高市氏であれば、アベノミクスのバージョンアップで、株高・円安。河野氏であれば、株式市場は改革期待で当初は上がるでしょうが、為替市場ではアベノミクス路線の否定ということで、円高リスクが高まりそうです。
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