このところ、当コーナーでは「吉田恒さんに聞く」シリーズをお届けしていたが、これは前回触れたとおり(「吉田恒さんに聞く(8) ~原油価格と為替の関係を読む~」参照)、7月中旬に取材した内容だった。
その後、原油価格の急落とユーロ/ドルの急落が起こっており、相場環境がだいぶ変化してきた。そこで、そうした直近の動きをふまえた吉田さんの最新の見解を昨日、8月14日に改めて取材したので、それをお伝えしたい。
■原油バブル破裂の第1幕は終了に近い
まず、原油価格とユーロ/ドルの先行きについて、吉田さんはどう見ているのか?
「過去のいろいろなバブル破裂を見てみると、値動きの基本パターンがあるんです。3ヵ月で3割前後下げるのが第1幕。そのあと、半年ぐらいもみ合いつつ、最大で半値ぐらい戻します。そして、さらに再度下げていく第2幕へ移っていく……これが基本パターンなんですね」
これは1930年代の大恐慌時の米国株暴落、1980年代からの金相場暴落、1990年からの日本株バブル破裂、2000年3月からのITバブル破裂などで、おおむね共通して見られるパターンだという。
「原油価格は7月はじめの147ドルが最高値。そこからもう112ドルまで下がりました。1ヵ月ちょっとで23~24%ぐらい下がったことになります。
3ヵ月で3割程度の下げがバブル破裂第1幕の基本パターンですから、日柄的にはまだ続く可能性がありますが、価格的には第1幕終了に近いところまで来ているかなと感じています。
そして、この原油価格下落の動きがいったん終われば、ユーロ安も終わって、ユーロ高に戻っていくと考えています」
「先ほども話しましたが、バブル破裂では、第1幕終了後に最大半値戻しするのが基本パターン。原油価格が110ドルで下げ止まるのか、もう少し下がって100ドルで下げ止まるのかはわかりませんが、そこから半値戻しすると120~130ドルまでは行きそうだと言えます。
そして、原油価格とユーロ/ドルとの相関関係がまだ続いていると仮定すると、原油価格が120~130ドルになれば、ユーロ/ドルは1.55ドル前後になると想定できます」
■ユーロ/ドルの上昇トレンドはまだクライマックスを迎えていない
吉田さんに以前、取材した際、「ユーロ高ドル安は7年も8年も続いており、そのクライマックスは近い」という見方をしていた(「吉田恒さんに聞く(6) ~円全面高のリスクはあるが、ドル/円の最安値、79.75円は割らない~」参照)。
ただ、クライマックスはもう一段のユーロ高ドル安が進んだあとに来るという見解だった。すなわち、ユーロ/ドルは「9~10月に1.65~1.7ドルを目指す」という見通しだったのである(「吉田恒さんに聞く(4) ~00年のユーロと08年のドルはソックリだ!~」参照)。
では今回、ユーロ安ドル高のかなり急激な動きが起こったことで、クライマックスは前倒しですでに来てしまったと考えた方がいいのだろうか?
「クライマックスが来たとは思っていません。長年続いたユーロ高ドル安が反転したとは思っておらず、大統領選挙前後にもう一度ドル安が再燃すると考えています。アメリカの景気後退とか、信用不安だとか、そういったドル安の根本要因は何も変わっていませんからね」
信用不安の程度を示す「リスクプレミアム」をはかる指標には信用スプレッド、スワップスプレッドなどがある。
信用スプレッドとは「社債の利回りと(リスクがないとされる)国債の利回りの格差」のこと、スワップスプレッドとは、「(リスクがないとされる)国債の利回りとスワップ金利の格差」のこと。いずれもこの数値が高い方が信用不安が高い状態と考えられる。
「米国市場でのこういったリスクプレミアムをはかる指標を見ると、いずれも高止まりしたままなんです(下のグラフ参照)。米国経済を取り巻く金融市場がリスクの高い状況にあることは変わりなく、そして、それが変わっていないのなら、まだドル安は終わっていないと考えます」
ただし、ここから再度ユーロ高ドル安に戻ったとしても、その水準の見通しには少し変更があるようだ。
「ユーロ/ドルが再び、1.6ドルを超える水準までいくかというと、そこはわからない。1.55ドルとか1.6ドルまでは戻っておかしくないと思っています」
では、次にドル/円はどうなのだろう?
以前、聞いた吉田さんの見解は「今は円高ドル安局面の第1幕が終わったあとの中休みであり、このあと円高ドル安の第2幕が展開。ドル/円は3月の安値95円を割っていく」というものだった(「吉田恒さんに聞く(2) ~今は円高局面の中休み~」参照)。
■年末か年明けぐらいにドル/円は95円割れへ!
「ドル/円について、見方は基本的に変わっていません。ドル/円の95円割れは早ければ10月に来ると考えていましたが、それが多少後ズレして、年末とか年明けぐらいにはなるかもしれませんが…」
今週、ドル/円は上昇して、110.40円ぐらいをつけている。あれでトレンド転換ということはないのか?
「以前、ドル/円の円高局面での中休みの話をしましたよね。中休みでは半値戻しするのがパターンです。ドル/円は昨年6月の高値124円から今年3月の95円まで下がりましたが、その半値戻しは大ざっぱにいえば、110円。つまり、ドル/円が110円まで戻してきたのは”ストライクゾーン”にズバリ入ったと言えるぐらいなんですよ」
■ドル/円の重要ポイントは112円。そこまではダマシの範囲内
では、今後もしも先日の高値、110.40円を明確に超えてきた場合は、どう考えればいいのか?
「そこを超えても112円まではダマシの範囲内、つまり、円高局面における一時的な円安と考えています。僕はトレンドの転換は200日移動平均線とのかい離率で見ることが多いんですが、112円というのはそこから出てきた数字ですね」
下の図は2000年以降のドル/円について、200日移動平均線からのかい離率を示したグラフだ。
■年末か年明けぐらいにドル/円は95円割れへ!
「ドル/円について、見方は基本的に変わっていません。ドル/円の95円割れは早ければ10月に来ると考えていましたが、それが多少後ズレして、年末とか年明けぐらいにはなるかもしれませんが…」
今週、ドル/円は上昇して、110.40円ぐらいをつけている。あれでトレンド転換ということはないのか?
「以前、ドル/円の円高局面での中休みの話をしましたよね。中休みでは半値戻しするのがパターンです。ドル/円は昨年6月の高値124円から今年3月の95円まで下がりましたが、その半値戻しは大ざっぱにいえば、110円。つまり、ドル/円が110円まで戻してきたのは”ストライクゾーン”にズバリ入ったと言えるぐらいなんですよ」
■ドル/円の重要ポイントは112円。そこまではダマシの範囲内
では、今後もしも先日の高値、110.40円を明確に超えてきた場合は、どう考えればいいのか?
「そこを超えても112円まではダマシの範囲内、つまり、円高局面における一時的な円安と考えています。僕はトレンドの転換は200日移動平均線とのかい離率で見ることが多いんですが、112円というのはそこから出てきた数字ですね」
下の図は2000年以降のドル/円について、200日移動平均線からのかい離率を示したグラフだ。
これを見ると、当然ながら、円安局面ではプラス方向にかい離することが多く、円高局面ではマイナス方向にかい離することが多くなっている。
けれど、円安局面でマイナス方向、円高局面でプラス方向にかい離することも時にある。あるけれども、それはいつも5%程度までで終わっているのだ。
「トレンドと逆方向に4~5%程度のダマシが入ることはあるんです。今現在のドル/円で200日移動平均線は106.50円程度。そこに5%をプラスすると、112円前後というレートが出てきます。つまり、112円までだったら、円高局面におけるダマシの範囲内。逆にいえば、それを超えていくようなら、もうダマシではなく、ドル高局面に転換したと考えられますね」
重要なポイントは112円。ドル/円相場はこれを念頭に置いて、ウオッチしていきたい。
米ドル/円 日足
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)