(「衆議院議員・今井雅人さんに聞く(1) FXのレバレッジ規制はすべきか?」からつづく)
さて、FXに関係する制度というと、税制に関してもぜひ今井さんに聞いてみたいところだった。
■店頭取引と取引所取引の税率が違うのはおかしい!
今のFXは店頭取引と取引所取引に大きく分かれるが、前者は総合課税で、その税率は最高50%。一方、後者は源泉分離課税となり、税率は一律20%だ。同じ為替の証拠金取引をしているというのに、その税率は大きく異なっている。
この質問を記者がしかかった時、今井さんはそれを最後まで聞き終わらないうちに、「これはおかしい。直さなきゃいけない」という言葉を返してきた。
「どう考えたって、同じ性格の金融商品ですからね。原理原則として、税制が違うのはおかしい。
今までいろいろな経緯があったのだとは思います。取引所というものはある程度、社会的に認知された存在。それに対して、一昔前の店頭取引は信頼性、安全性に問題のある会社もありました。
でも、今のFX会社は金融庁へ登録し、金融庁の検査を受けることになっています。シッカリ監督していこうという当局の傘下に入っているわけです。
今はそういう状況になっているのだし、元々しくみは同じなんだから、税制が違うのは明らかにおかしい。歪んでいる制度は直さないといけません」
今井さんはFXの税制改革について具体的な活動をしていく、とも話してくれた。これはFXファンには期待できる話ではないだろうか。
「私も取引所の人にはお世話になっているので、あんまり言えないんですが…」という前置きをしながら、実際にはかなり踏み込んだ発言をしてくれた今井さんだった。
そして、FXの店頭取引と取引所取引の税制を同じにするということのさらに先には「金融所得の一体課税」という大きな課題が控えている。今井さんはこれを実現し、投資環境を良くしていくことが大事という意見だった。
■世界経済、日本経済はこれからどうなる?
「100年に一度」とも言われる現在の経済危機、金融危機。リーマン・ショックから1年以上経ち、その影響も薄れてきたと思われたところにドバイ・ショックという出来事もあった。
かと思うと、米国雇用統計でずいぶんいい数字が出たりして、世界経済、日本経済は一体どうなっているのか、どうなっていくのか、なかなか見通すのが難しい状況となっている。
今井さんはこのような今の経済状況をどうとらえているのだろう?
「日本の足元の景気はとても不安定。非常に深刻な状況だと思っています。
米国は住宅市場が少し上向いてきているのが好材料ですが、政策的に住宅減税などでかさ上げされた部分がある。
欧州は景気が悪いですね。割と元気なのは中国とインド。
そんなわけで世界全体を考えると、日本よりはマシ。すごく悪くはなっていかないでしょう。かといって、すごく良くもならないといったところ」
■構造的なデフレから抜け出せない日本
「日本の問題はデフレです。日本は今回はじめて危機になったわけではなく、1990年代の後半から構造的なデフレに入ってしまった。2007年頃には少し上向きましたが、今もって構造的なデフレから抜け出していないと思います。
結局、物価の安いアジアの国々との競争になりますから、物価下落圧力、賃金下落圧力がかかってしまうんです。
そして、もちろん、少子高齢化も問題です」
「日本はこういった日本固有の問題を抱えているので、非常に深刻な状況だと思っています。
そういった中で、民主党には成長戦略が見えないという批判も聞きますが…」
「そういった中で、民主党には成長戦略が見えないという批判も聞きますが、これはしっかりとしたものをまとめ、さらにそれをうまくアナウンスしていくことが大事。そこは政府にビシッとやってほしい。
もちろん、自分の声も党の上層部に届けたいと思っていますが、そこはまだ新人議員なので、そう簡単ではありません。
今は自分の声をどうやったらうまく届けられるか勉強中という状況です」
■為替介入はやるべきか?
さて、最後に肝心の為替相場のことへ話を移そう。11月27日(金)には一時、84円台をつけるところまでドル/円相場は急落した。その過程で「介入」という言葉もよく聞かれるようになった。
今井さんは「為替介入」をやるべきだと考えているのだろうか?
「個人的には介入は早く積極的にやるべきだと思っていますし、そういった意見は言います。政府にぜひやってほしいという意見もある程度言います。ただ、与党議員ですから、あまりにも批判的なことは言えません。
だから、『やっていただけることを期待しています』など、背中を後押しするような感じで発言しています」
もちろん、自分の声も党の上層部に届けたいと思っていますが、そこはまだ新人議員なので、そう簡単ではありません。
今は自分の声をどうやったらうまく届けられるか勉強中という状況です」
■為替介入はやるべきか?
さて、最後に肝心の為替相場のことへ話を移そう。11月27日(金)には一時、84円台をつけるところまでドル/円相場は急落した。その過程で「介入」という言葉もよく聞かれるようになった。
今井さんは「為替介入」をやるべきだと考えているのだろうか?
「個人的には介入は早く積極的にやるべきだと思っていますし、そういった意見は言います。政府にぜひやってほしいという意見もある程度言います。ただ、与党議員ですから、あまりにも批判的なことは言えません。
だから、『やっていただけることを期待しています』など、背中を後押しするような感じで発言しています」
「介入をやるべきか、やらないべきかは議論の分かれるところですが、世界の為替介入の状況を見ると、米国は基本的に市場に任せるというスタンス、欧州も介入には慎重です。
為替介入を積極的にやるのは実はアジアなんです。中国だって、韓国だって、タイだってやっている。
日本はアジアの国でもあるし、先進国でもある。他の先進国的発想ならば、市場に任せて、介入はあまりやるべきではないということになる。
アジア的発想ならば、輸出主導の国であれば、あまりに通貨高になると国の経済がおかしくなるので、それを緩和するために介入をやるべきということになる。
藤井さん(財務相)は欧米先進国的で介入には基本的に慎重なスタンス。とはいえ、絶対やらないというわけではなく、『緩やかな動きであれば』という前提条件をつけて、『介入には反対』と仰ってる。
実際、84円台をつけた時には、『異常な動きには適切な対応をとる』と仰った。
先進国なら、無闇に市場に介入すべきではないというのは正論ですから、藤井さんはそれを最初に表明しておいて、その一方、異常な動きには対処するとしっかりした声明も出しましたから、私も安心したのは確かです」
■為替介入で大切な2つのこととは?
「介入するにあたって大切なことは2つあります。一つは市場に対するメッセージ、もう一つはタイミングです。
まず、市場に対しては、実弾を出して実際に介入するだけでなく、政府がどう対応するかというメッセージを出していくことが大事。その意味で、84円台をつけた時の措置は良かったし、うまくいったと思います。
それと介入というのは過剰な動きを止めるのが目的。だから、闇雲にやればいいというものではない。相場が落ち着いている時にやっても意味がない。
たとえば、ものすごい勢いで円高が進んで、このままでは80円を割れてしまうといった時にこそ、介入はやるべきなんです。
相場のスピードとか、マーケットの雰囲気をよく見てやることですね」
ディーラー時代には外から為替介入を見ていた今井さん。与党の一員という立場となった今後は、果たして政府の為替介入にどう介入していくのだろうか?
(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/渡部さとる)
最後に読者のみなさんにお知らせ! ザイFX!で今井さんは、「為替で読み解く世界経済」というコラムを連載していたが、現在こちらは休載中。けれど、来年早々にも今井さんのコラムは装いも新たに復活予定だ。お楽しみに!
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