米ドル/円は115.00円のバリアオプション突破も、さらなる上昇には米金利上昇が不可欠
みなさん、こんにちは。
今週(11月22日~)の為替市場では、米ドル/円が115.00円のバリアオプションを突破したことが注目されました。
【参考記事】
●米ドル/円は、115円のバリアを突破できるかがポイント。ユーロ/米ドルは、2022年に1.0500ドル付近まで下落するとの予想も!(11月18日、西原宏一)
(出所:TradingView)
一方、欧州の新型コロナウイルスの感染者急増やオーストリアのロックダウン(都市封鎖)を材料に、ユーロ/米ドルもサポートであった1.1200ドルを一時割り込む展開。
(出所:TradingView)
ただ、両通貨ペアともいまいちボラティリティが急騰せず、大相場になりません。
これは、米金利が急騰しないため。本稿執筆時点の米10年債利回りは1.63%程度で推移しています。
(出所:TradingView)
今年(2021年)3月に米金利が急騰した局面で到達した1.74%にも到達していません。米ドル/円の上昇加速には、米金利の上昇が不可欠です。
そのため、米ドル/円の上昇が本格化するのは、やはり2022年に入り
米金利が本格的に上昇局面に入ってからでしょうか。
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2022年は引き続き資源国通貨の変動に期待。注目はカナダドル
2022年に変動が期待できるのは、引き続き資源国通貨。
2020年~2021年は、鉄鉱石やLNG(液化天然ガス)の上昇がフォーカスされ、豪ドルの上昇が際立っていました。
豪ドル/円が60円程度から86円台まで駆け上がったのは、記憶に新しいところ。
(出所:TradingView)
ただ、豪ドルは過去のコラムでご紹介させていただいたように、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])がYCC(※イールドカーブ・コントロール)から撤退したこと、加えて、中国経済減速により鉄鉱石が大暴落を演じたことで失速しました。
(※イールドカーブ・コントロールとは、中央銀行が国債の利回りを一定の水準以下に保つために必要なだけ国債を購入することを約束するもの)
【参考記事】
●豪ドルで始まり、豪ドルで終わる為替相場。豪ドルの反落でリスク資産が軟調に転じる可能性、今後の豪ドルの動きには警戒!(11月11日、西原宏一)
そこで、いくつかの主要米銀が2022年に注目通貨として取り上げているのがカナダドル。
カナダドルに関しては、まずBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の強気な姿勢があげられますが、原油高も要因のひとつ。
原油の反発は、バイデン大統領が就任後すぐに、カナダの油田と米メキシコ湾岸の製油所を結ぶパイプライン「キーストーンXL」の建設認可を取り消したことがきっかけでした。
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石油備蓄放出でも下がらない原油相場。上昇トレンドは当面継続へ
現在米国では、インフレの進行が明白。
ハリス副大統領とともに、支持率が急降下しているバイデン大統領にとって、原油価格を筆頭にインフレを抑え込むことが最重要課題になっています。その対策は簡単です。
本当に原油を下げたければ、「キーストーンXL」の建設を許可すること、さらには実質的に禁止しているシェールガスの採掘を再開させればいいのではないかと思いますが、温暖化対策を理由にそれはできません。
そこで考えたのが、石油の備蓄放出。
原油高に対応し、主要石油消費国が異例の協調措置をとりました。米国は5000万バレルの石油備蓄を放出すると発表。米国に協調して、日本および中国、インド、韓国、英国も放出するようです。
しかし、原油相場の反応は、消費国側の期待に沿うものではなく、WTI原油先物は報道を受けていったん下落したものの、その後反発。石油備蓄の放出を受けても原油が下がらないのは、備蓄放出計画がここ最近、すでに市場に織り込まれていたのが要因。
(出所:TradingView)
次に、石油の備蓄放出は短期的には効果があっても抜本的な解決策にはならないためです。なぜなら放出した量は、後日また備蓄しなければならないためです。これでは、産油国が強気のスタンスを続けてしまいます。
ともあれ、バイデン政権は、インフレの高騰は抑えるとは言っていますが、原油高騰により、仮に「脱炭素化」が進むのであれば、左派にとって不満はないともいえます。
この意味においては、原油の上昇トレンドは当面続くと考えています。リスクとしては、OPEC(石油輸出国機構)が増産に踏み切った場合でしょうか。
2022年、カナダドル/円は100円への上昇を想定
以下は、主要通貨の対米ドルでの年初来騰落率。
カナダドルが唯一、対米ドルでわずかながら上昇している通貨となります。他通貨は、今月(11月)の豪ドル/米ドルの失速もあり、軒並み反落。
特に、円は対米ドルのみならず主要国通貨に対し全面安の展開。
この傾向が来年(2022年)はさらに明確となり、対円でカナダドルは極めて堅調に推移し、100円に向けて上昇すると想定しています。
(出所:TradingView)
原油相場高騰に対し、有効な対策があるにも関わらず、温暖化対策を理由に行動に移せないバイデン政権。
石油の備蓄放出という対策を受けても下がらず、反発に転じている原油価格、加えてBOCのタカ派スタンス継続により、100円に向けて続伸するカナダドル/円に注目です。
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