欧州の感染拡大で「リスクオフの円高」?
欧州では新型コロナウイルスが急速に拡大しています。
ドイツでは新型コロナウイルス新規感染者数が1日あたり6万人を超え、オーストリアは今日(11月22日)から全国で10日間のロックダウンに入りました。
ドイツのワクチン接種率は67%と低いわけではないのに、急増していることを不思議がる声もあがっています。
【参考記事】
●米ドル/円は、115円のバリアを突破できるかがポイント。ユーロ/米ドルは、2022年に1.0500ドル付近まで下落するとの予想も!(11月18日、西原宏一)
ドイツは移民を積極的に受け入れてきましたし、夏場以降、ベラルーシからポーランドを経由して不法に越境する人が急速に増えているようです。
ワクチンを接種していない移民も多いでしょうし、感染拡大の一因となっているのかもしれません。
為替市場では欧州の感染拡大を懸念してか、米ドル/円が急落。
「リスクオフの円買い」との声も出ています。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルも下げていますし、円買いというよりは「米ドル買い・円買い」でしたね。
(出所:TradingView)
米ドル/円はまたも115円ブレイク失敗で上値は重い
米ドル/円は10月に続き、先週(11月15日~)も115円ブレイクに失敗しました。
115円にはバリアオプションもあったようですが、今回のブレイク失敗は痛い。
米長期金利(米10年債利回り)が3月高値の1.7%台を超えていれば、まだブレイクのチャンスもあるでしょうが、米長期金利は上がっていません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米ドル/円はしばらく上がりにくいのかもしれませんね。
先週発表された日本の貿易収支も、3100億円の赤字予想に対して674億円の赤字と、大幅に少ない赤字額となりました。
貿易赤字額がコンセンサスよりもずっと少ないと、円高要因になりますね。
トヨタ自動車の12月生産計画は、グローバルで前年同月比4万台増の80万台レベル。
減産の挽回分を織り込んでおり、自動車産業が持ち直してくるかもしれない。
そうすると、貿易黒字へと転換する可能性もありますね。
また、日本でも原油備蓄の放出が検討され、原油価格も下げてきました。
WTI原油は75ドルへ反落し、チャート的には厳しいように見えますね。
(出所:TradingView)
米国に続き、日本でも備蓄放出の観測が流れたことに、原油市場は反応しています。
ただ、岸田政権の対応は疑問ですね。
国民のためにガソリン価格を下げたいなら、備蓄放出ではなく、ガソリン税の「トリガー条項」を解除して、税率を引き下げればいいだけ。
バイデン政権の呼びかけに応えるパフォーマンスの側面が大きいような気がします。
バイデン米大統領は「インフレ反転が最優先」としていますから、その要請に従ったのでしょうね。
コモディティ・スーパーサイクルは調整局面か
コモディティ全体の市況を示すCRB指数は、昨年(2020年)4月を大底に1年半で2倍以上となっています。
過去の「コモディティ・スーパーサイクル(※)」でも、上昇が1、2年続くと調整が入りやすい。
米テーパリングや欧州でのコロナ再拡大などもあり、しばらくはコモディティ価格が落ち着いて、インフレ圧力も低下するのかもしれません。
(※編集部注:コモディティ・スーパーサイクルとは、商品相場の周期的変動や景気循環のうち、数十年の周期で起こるもの)
(出所:TradingView)
米長期金利も上がるのでしょうが、あまりにもみんなが上がると思っているので、債券売りのポジションがたまっている。
本当に上がりだすのは、来年(2022年)以降かなというイメージです。
市場が注目しているFRB(米連邦準備制度理事会)議長人事は決まりませんね。
パウエル続投なのか、ブレイナードさんなのか――。
ハト派よりなブレイナードさんになれば利上げ時期が後ろにズレやすいと思いますが、どちらに決まってもそこまで大きなインパクトはないでしょう。
次期FRB議長の可能性があるブレイナード氏はハト派と目され、2014年からFRBの理事を務めている。ブレイナード氏がもし、FRB議長になれば、イエレン氏に次いで2人目の女性議長誕生となる。 (C)Bloomberg
「感謝祭明けの円安アノマリー」は期待薄
むしろ注目は、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)ですね。
クラリダFRB副議長が「12月FOMCでテーパリング加速について議論することが適切」と発言したり、FRB高官からインフレ警戒を強める発言が出ています。
12月にはドットチャートも改訂されますから、利上げ時期が前倒しされる可能性もあります。
12月FOMCに向けて米ドル高基調なのでしょうが、最近はHFT(High Frequency Trading、超高速取引)の影響か、プライス・イン(織り込み)するスピードが速い。
やりにくい相場となるかもしれません。
今週、11月25日(木)はサンクスギビング・デー(感謝祭)のため、米国が休場です。
ブラックフライデーからサイバーマンデーへと個人消費が高まる時期ですが、今年はちょっと様子が違う。
サプライチェーンの乱れもあり、クリスマス商戦を早めにスタートしている企業が多く、それほど盛り上がらないかもしれません。
例年なら「感謝祭の翌週は円安になりやすい」というアノマリーがありますが、その裏付けのひとつとなるブラックフライデー商戦が盛り上がらないなら、今年は当てはまらないかもしれませんね。
今週の戦略はどう考えますか?
ユーロ売りがいいのでしょう。
ヘッド&ショルダーのネックラインを割ってきたユーロ/米ドルは1.05ドルのターゲットもみえてきましたが、目先は下がりすぎています。
米ドル/円が115円にタッチすらできなかったこともあり、短期的に下落余地があるのはユーロ/円でしょうか。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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