リスクアセットを占う、豪ドルとRBAの動向を重要視
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでもご紹介させていただいたように、リスクアセットを占うのに筆者は豪ドル、そして中央銀行であるRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の動向を重要視しています。
【参考記事】
●豪ドルで始まり、豪ドルで終わる為替相場。豪ドルの反落でリスク資産が軟調に転じる可能性、今後の豪ドルの動きには警戒!(11月11日、西原宏一)
要約すると、昨年(2020年)3月19日(木)にRBAがYCC(※イールドカーブ・コントロール)を採用し、豪ドル/円のみならず、他のリスクアセットも急反発するきっかけになっています。
(※イールドカーブ・コントロールとは、中央銀行が国債の利回りを一定の水準以下に保つために必要なだけ国債を購入することを約束するもの)
そのRBAが先月(11月)2日にYCCから撤退することを表明したことで、豪ドルが値を崩し始めます。
(出所:TradingView)
RBAの決定は大きな影響を及ぼし、豪ドル/米ドルは大きな戻しもなく、ほぼ一方的に下落しました。
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11月のRBA理事会以降、リスクアセットはすべて下落。暗号資産も急落
興味深いのは、新型コロナウイルスの新たな変異種オミクロン株の影響も重なり、リスクアセットの株や原油まで続落したこと。
そして極めつけは、暗号資産。
ほんの数週間前には、対米ドルで一時6万9000ドル近くに上げて最高値を更新していたビットコインですが、12月3日(金)の米株式市場の通常取引終了以降に大きく下げ始め、一時21%安の4万2300ドル水準まで急落しました。
(出所:TradingView)
暗号資産自体になにか大きな問題があったわけではなく、米金融当局がタカ派寄りの姿勢を強めていることや、オミクロン株の影響で、足の速い資金が暗号資産市場からも一斉に抜けたという展開。
ビットコインのみならず、イーサリアムも急落しており、先週(11月29日~)末は、休日にも関わらず、筆者も含め暗号資産をトレードしている参加者は慌ただしい展開となりました。
これで11月のRBA理事会以降、豪ドルを筆頭に、米国株、日本株、原油を始めとするコモディティ(商品)、そして暗号資産と、ほとんどすべてのリスクアセットは大きく値を崩したことになります。
12月RBA理事会後はリスクアセット買い戻し。市場では、2022年中に4回の利上げを想定か
そしてマーケットは、12月7日(火)のRBA理事会を迎えます。
12月7日(火)のRBA理事会後の会見で、フィリップ・ロウRBA総裁(以下、ロウ総裁)は、政策金利は据え置き、2月中旬まで週に40億ドルの国債購入を継続するという、おなじみの言葉を並べました。
ロウ総裁は、インフレ圧力については上昇したことを認めましたが、銀行の目標範囲である2%から3%にはまだ達しておらず、銀行が来年(2022年)の早い時期に利上げを検討するには、かなりのインフレ上昇が必要であることを示唆。
しかし、市場ではもっと早い時期に実施されると考えられています。
一部のファンドは、早ければ来年(2022年)3月の利上げを織り込み始めており、豪州の大手4銀行も、固定金利ローンの微調整を始めています。
豪州の住宅ローン市場で最大のシェアを持つコモンウェルス銀行は、先月(11月)、持ち家向けと投資家向けの住宅ローンの金利を、それぞれ0.30%と0.60%引き上げました。これは6週間で3回目の引き上げとなります。
市場では、来年(2022年)5月ごろに、0.15%の利上げが実施され、年内にさらに3回の追加利上げが実施される可能性があるというのが一般的な見方になりつつあります。
このロウ総裁の会見を受け、マーケットでは、RBAが明確にインフレ圧力を否定しなかったことで、センチメントが一変します。
RBA理事会前日(12月6日)には、豪ドル/米ドルは、一時0.7000ドルを割り込む局面もあったのですが、RBA理事会後は、ほぼ一方的に上昇し、一時0.7184ドルまで反発。
(出所:TradingView)
豪ドルの反発をきっかけに、株や原油も反発。
暗号資産も下げ止まり、本稿執筆時点では、ビットコイン/円は570万円水準、イーサリアム/円は50万円近辺で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ただ、今週(12月6日~)は、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の金融政策決定会合もありましたので、それが豪ドルの反発を誘引している局面もありました。
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注目されていたBOC政策会合は、1月の利上げの可能性を低下させるものに
本日(12月9日)日本時間未明、BOCの金融政策決定会合も開催されました。
前回のコラムでご紹介させていただいたように、2022年の注目通貨はカナダドルを取り上げている金融機関が多く、筆者も今回のBOCの決定には注目していました。
【参考記事】
●今の急激な円高局面は、円売りポジションを構築する好機か。FRB議長はタカ派へ転身、懸念すべきはオミクロン株よりインフレ(12月2日、西原宏一)
なぜ来年(2022年)カナダドルが注目されているのかは、BOCの連続利上げが予想されているからです。
BOCの金融政策決定会合ごとに1回の利上げを行うと想定すると、2022年には4回(1月、4月、7月、10月)、2023年にはさらに4回の利上げを行い、2022年末には政策金利を1.25%、2023年末には2.25%にすることができると想定している銀行が増えています。
そして、今回のBOCが注目されているのは、モルガン・スタンレーなどが極めて高い確率で、来年(2022年)1月の利上げの可能性が高いとみていたこと。
しかし、BOCの政策会合の結果は、1月の利上げの可能性を低下させる内容でした。
それでも、今月(12月)中に再びインフレが高まれば、BOCのスタンスが変わる可能性もありますし、カナダドルが大きく売られる必要性もありません。
2022年の注目通貨はカナダドル。ただし、RBAの利上げ前倒しなら豪ドルの上昇スピードが加速する可能性も
しかしBOCの政策会合の結果により、カナダドルが多少売られるのはいいとしても、豪ドル/カナダドルが急反発したのには驚かされました。
(出所:TradingView)
これは、前回のコラムでご紹介させていただいたように、ゴールドマンサックスが来年(2022年)に向けて、豪ドル/カナダドルのショート(売り)を推奨しているので、豪ドル/カナダドルのショートポジションが積み上がっているのが影響しているようです。
【参考記事】
●今の急激な円高局面は、円売りポジションを構築する好機か。FRB議長はタカ派へ転身、懸念すべきはオミクロン株よりインフレ(12月2日、西原宏一)
ゴールドマンサックスは、豪ドル/ニュージーランドドルのショート(売り)も推奨しており、2022年は豪ドルに対して極めて弱気。
そのため、金利先物市場で織り込んでいる利上げ速度よりも、BOCの利上げが遅れるとなれば、カナダドルは売られることは理解しながらも、さらに、豪ドルの反発にも警戒しなければいけないことになります。
つまり、2022年の注目通貨の筆頭はカナダドルですが、仮にRBAの利上げが前倒しになると、利上げが織り込まれているカナダドルよりも、豪ドルの上昇スピードのほうが加速する可能性も浮上してきたわけです。
(出所:TradingView)
ともあれ、RBAは11月の理事会からリスクアセットのマーケットのセンチメントを悪化させましたが、今回(12月)のRBA理事会から、マーケットのセンチメントは徐々に回復。
マーケットに残存している豪ドルのショートポジションも気になることもあり、今月(12月)のRBA理事会をきっかけとした、豪ドルの反発に注目です。
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