米雇用統計後の動きは非常に神経質に。米国株は売られ、米長期金利は急低下、VIX指数は上昇
前回の当コラムでは、新型コロナウイルスの新たな変異種オミクロン株とFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長のタカ派転向という2つのショックに加え、米長期金利が上昇しないことから、米ドル/円には110円程度の、少し下方リスクがあるのではないかと書きました。
【参考記事】
●米ドル/円は年末を前に、110円付近まで下落する可能性も。主要国の長期金利が低下するなか、日本の金利水準が魅力に(12月2日、志摩力男)
先週12月3日(金)、米雇用統計後の動きは非常に神経質であり、米国株は売られ、米長期金利は急低下(米10年債利回りは1.33%水準へ低下)、VIX指数(※)も35に達しました。
(※編集部注:「VIX指数」とは、相場に対する先行きの警戒感といった投資家の心理を表す指数で、通称「恐怖指数」と呼ばれている。20を超えると強い警戒感を示すとされている)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
週末前にリスクヘッジが入ったのでしょうが、これはいかにもやり過ぎでした。
オミクロン株に対する恐怖感が過剰だったともいえますが、“Shoot first ask questions later”(まず発砲し、正しいかどうかは後で判断)というメンタリティ-が発動された面もあると思います。
VIX指数は、S&P500指数のオプションから算出されます。S&P500指数が5%程度しか動いていないのにVIXが35まで取引されるということは、相当パニックになっているともいえますが、おそらく機械的にプットオプション(売る権利)を買うプログラムがあるのでしょう。
要するに、価格は何でも良いから買って「プットオプションを買ってヘッジしていました」と言い訳するためであり、トレードのパッシブ化もすごいところまできています。
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ファウチ氏の発言で市場に安心感広がる。過剰な「リスクオフ」局面は避けられそう
しかしその週末に、米大統領首席医療顧問のアンソニー・ファウチNIAID(国立アレルギー感染症研究所)所長が、オミクロン株の「重症度」に関して「ややエンカレッジングな(勇気づけられる)」側面があると発言したことで急速に安心感が広がりました。
確定的なことはまだいえませんが、感染スピードにしても想像を絶するほどのスピードではなく、ワクチンもある程度有効であり、また有効な治療薬もあることから、市場は落ち着いてきているといえます。
オミクロン株への懸念が後退したことで、過剰な「リスクオフ」局面は避けられそうです。そうなると、米ドル/円も急落することもないのでしょう。
(出所:TradingView)
来週のFOMCでは、テーパリングを加速させることはほぼ確実。最初の利上げは3月か6月か
来週12月14日(火)~15日(水)には、FOMC(米連邦公開市場委員会)があります。
オミクロン株への懸念が後退していることもあり、テーパリング(※)を加速させることは、ほぼ確実でしょう。
現在、米国債100億ドル、モーゲージ債50億ドルのペースで毎月減額していますが、これを米国債200億ドル、モーゲージ債100億ドルと倍増すると思います。そうなると、3月中にはテーパリングが終了します。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
その後、すぐに利上げするかどうかわかりませんが、早ければ3月、遅くても6月には最初の利上げが行われることになります。そして、2022年は9月、12月と3回利上げが行われることになるのでしょう。
今年(2021年)の春先ぐらいまでは、2023年後半に利上げが1回あるかどうか、という議論をしていましたが、その時点から比べると急激なペースアップです。
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米ドルはもみ合いながらも上昇へ。米ドル/円は115円方向を試す準備開始か
すべては、「インフレを反転させることが、政権の最優先課題」という、バイデン政権の方針からきています。
金融政策の効果が浸透するまでは、時間がかかります。来年(2022年)11月に行われる米中間選挙に間に合うように金融政策を調整しなければなりません。その意味では、3月利上げでしょう。また、それがパウエル議長再任の条件だったかもしれません。
オミクロン株への懸念が後退し、米金融政策が引き締め方向にシフトするので、為替市場ではもみ合いながらも、米ドルがやはり強くなる方向に戻るのかもしれません。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
米ドル/円相場は112円台の堅さが印象的でした。もみ合いながらも、ゆっくりとまた115円方向を目指す準備を始めるのでしょう。
(出所:TradingView)
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