「オミクロン株は民主党のでっち上げ」!?
市場の話題はオミクロン株。
11月30日(火)、モデルナCEOが「ワクチンの効果が弱い」と話したことが伝わると、株安、円高となりました。
【参考記事】
●今の急激な円高局面は、円売りポジションを構築する好機か。FRB議長はタカ派へ転身、懸念すべきはオミクロン株よりインフレ(12月2日、西原宏一)
(出所:TradingView)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
デルタ株は致死性の高さが問題でしたが、今のところ、オミクロン株は感染力こそ高いものの、致死性はそれほど高くないとされています。
「ただの風邪」という人もいるくらいですし、オミクロン株がデルタ株を駆逐することになれば、いよいよ「コロナの終わり」なのかもしれません。
オミクロン株は、バイデン米大統領にとって神風のような存在ともなりましたね。
再三、OPECプラス(※)に増産を要請したのに無視され、日本などの同盟国を巻き込んで原油備蓄を放出すれば、あざ笑うかのように原油は上昇。
ところが、オミクロン株で原油は一気に急落しました。
「オミクロン株は民主党のでっち上げ」との陰謀論すら出るほどのタイミングのよさです。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
【参考記事】
●米ドル/円、チャート的には深めの押しが入りそうな形。猛烈なリスクオフを招いた変異ウイルス、オミクロン株の続報待ちに(11月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
タカ派姿勢を強めたパウエルFRB議長&イエレン米財務長官
先週(11月29日~)は後半から米金融政策へと焦点が移りました。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長はテーパリングの加速に前向きな姿勢を示し、イエレン米財務長官も、これまで繰り返していた「インフレはTransitory(一時的)」という表現を撤回。
タカ派的な姿勢が一気に強まっています。
タカ派的な姿勢を強めたにもかかわらず、米長期金利(米10年債利回り)は1.34%まで急低下。
「よく米ドル/円が112円台にいられるな」と感じるほどの低下です。
(出所:TradingView)
米短期金利はそこまで下がらず、米長期金利が先行して低下しているということは、景気の先行き懸念が強いのでしょうか。
それもあるかもしれませんね。
一方で、米長期金利がこれだけ下がると、オミクロン株さえ落ち着けば、株の下支え要因になるのでは…とも思えます。
超大手テック企業CEOがこぞって自社株売り!
ところが、株式市場から資金が抜けていると思わせる動きもあります。
それがテック系CEOなどによる「自社株売り」。
マイクロソフトCEOは持ち株の半数を売却し、テスラのイーロン・マスクも持ち株の10%売却へと動いており、すでに半分を処分済み。
アマゾンのジェフ・ベゾスや、メタ(前フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグもそれぞれ大量の自社株を売却しています。
来年(2022年)以降の株式市場に、何かしらリスクオフの兆候を感じているのでしょうね。
原油だけでなく、鉄鉱石や、需要が増える冬に向けて強含むとされていた天然ガスも急落。
さらに土曜日(12月4日)には、ビットコイン/円まで500万円割れと急落しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
VIX指数も先週、30ポイントを超えてきました。
やはり、FRBのタカ派シフトが効いているのかもしれませんね。
12月15日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、テーパリングを加速させるのはほぼ確実となってきましたし、来年(2022年)3月にテーパリングを完了させるとの観測も出ています。
そうなれば、11月のテーパリング開始から完了までわずか5か月。
前回が9か月かかったことを思えば、相当なスピードです。
(出所:TradingView)
来年(2022年)の予想が出つつありますが、昨年(2020年)、今年(2021年)と株式市場は調子がよかっただけに、来年を危ぶむ声も少なくないですね。
RBAが作った2つの転機
今週(12月6日~)は、12月7日(火)にRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])、12月8日(水)にはBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の金融政策発表がありますが、FOMCを来週に控えているため動きづらそう。
12月10日(金)には米CPI(消費者物価指数)も発表されます。
前回、30年ぶりの高水準となった直後なので注目度は高いですね。
今週はオセアニア通貨、特に豪ドル売りでしょうか。
繰り返しになりますが、昨年3月19日(木)にRBAが利下げとYCC(イールドカーブ・コントロール)を発表してから、リスクオンとなりクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上昇しました。
ところが、上昇トレンドは今年の11月2日(火)にRBAがYCCを撤回したことで、反転下落しています。
コモディティの下落を見ても、今の流れはまだ続くのでしょう。
【参考記事】
●豪ドルで始まり、豪ドルで終わる為替相場。豪ドルの反落でリスク資産が軟調に転じる可能性、今後の豪ドルの動きには警戒!(11月11日、西原宏一)
IMMポジションが豪ドル売りに傾く理由
オセアニア通貨は先週もよく売られました。
IMM(国際通貨先物市場)ポジションでは豪ドル売りが積み上がっていますね。
豪ドルを売りたいというより、リスクオフに備えたポジションなのかもしれません。
IMMに参加しているのはプロ。下手なプレイヤーではありませんし、彼らなりにリスクオフを警戒する理由があるのでしょう。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
豪ドルを売るなら、通貨ペアは何がいいですか?
対スイスフランでもいいかと思いますが、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の介入の話題が先週も出ています。
そのため、豪ドル/円か、ユーロ/豪ドルでの豪ドル売りがいいのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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