米ドル全面安の状況は一服している。
ドルインデックスは74.95の安値から持ち直し、一時は76.57までリバウンドしていた。
■米ドルが底を打ったという見方が広がり始めた
前日、10月29日(木)は、米国の第3四半期GDP・速報値が発表され、市場予想を上回る結果となり、米国株の反発と米ドルの反落がもたらされた。
だが、相場の雰囲気は明らかに違っていた。
筆者と同じように、米国株には「反発」、米ドルに対しては「反落」といった文言を使う評論や報道が目立ったのだ。これは、トレンドが変わったのではないかと、疑心暗鬼になった市場関係者が多かったことの表れだ。
もっとわかりやすく言えば、米国株がトップアウトとなった可能性と相まって、米ドルが底を打ったのではないかと疑う市場関係者が増えてきたのだ。
豪ドルについては、オーストラリア準備銀行(RBA)が年内にも再利上げを行うという観測が根強くある。それにもかかわらず、豪ドル/米ドルは高値から、一時は380pipsの下げ幅を見せている。
豪ドル/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
これは、米ドルが底を打ったと見る市場関係者が増えている、象徴的な値動きだろう。
■ゴールドマンが英ポンドの見通しに強気である根拠は?
足元の相場に合わせて、豪ドルやユーロの上値ターゲットを提示するレポートは、すっかり減ってしまった。10月に入って、目標値の修正が多く見られていたが、様変わりした(「米ドル安が終えんに向かうとの見方、このあたりで「君子豹変」すべきか?」参照)。
そのような状況下で、ゴールドマン・サックスの英ポンドに関する強気見通しは目を引く。同社は、英ポンドが年末までに、対米ドルで1.85ドルまで上昇すると予測している。
それは、以下の2点を根拠にしているらしい。
・購買力平価理論だと、英ポンドが米ドルに対して、足元では22%割安となっていること。
・市場コンセンサスで、イングランド銀行(英国中央銀行、BOE)が早期利上げを行う可能性があること。
最近の相場の値動きが、それを証明しているように見える。
英ポンドの先行きに対して、弱気の見通しがマーケットを圧倒的に支配していた時期が続いていた。それでも、英ポンドは米ドルに対して、10月13日(金)の安値1.5705ドルから、一時は985pipsの反騰を見せていたのだ。
これは、米ドルが底を打ったと見る市場関係者が増えている、象徴的な値動きだろう。
■ゴールドマンが英ポンドの見通しに強気である根拠は?
足元の相場に合わせて、豪ドルやユーロの上値ターゲットを提示するレポートは、すっかり減ってしまった。10月に入って、目標値の修正が多く見られていたが、様変わりした(「米ドル安が終えんに向かうとの見方、このあたりで「君子豹変」すべきか?」参照)。
そのような状況下で、ゴールドマン・サックスの英ポンドに関する強気見通しは目を引く。同社は、英ポンドが年末までに、対米ドルで1.85ドルまで上昇すると予測している。
それは、以下の2点を根拠にしているらしい。
・購買力平価理論だと、英ポンドが米ドルに対して、足元では22%割安となっていること。
・市場コンセンサスで、イングランド銀行(英国中央銀行、BOE)が早期利上げを行う可能性があること。
最近の相場の値動きが、それを証明しているように見える。
英ポンドの先行きに対して、弱気の見通しがマーケットを圧倒的に支配していた時期が続いていた。それでも、英ポンドは米ドルに対して、10月13日(金)の安値1.5705ドルから、一時は985pipsの反騰を見せていたのだ。
加えて、最近の英ポンドは、対ユーロでも反騰している。ユーロと豪ドルの急落を横目に、英ポンドの下落は限定的だった。
■米ドルは年末に向けて、一段と急落する運命をたどる?
英ポンドの値動きにかなり関心を払っているのは、他ならぬ、英ポンドが米ドル全体のパラメーターとしての役割を果たしていたからだ(「円高=藤井財務相による『人災』説に疑問。米ドル/円の安値追いには賛成できない!」参照)。
では、ゴールドマン・サックスの予想どおりとなって、米ドルは年末に向けて、一段と急落する運命をたどるのだろうか?
結論から申し上げると、筆者はそう思わない。年末に向けては、米ドル安ではなく米ドルのリバウンドに備えるべきだ(「浮上した2つの『異変』は何を示唆する?米ドル安トレンドの終えんは、やはり近い!」参照)。
だが、英ポンドだけでは、もはや、米ドル全体の行方を見通すことはできない。英ポンドが果たしてきたパラメーターの役割は、徐々に低下していくだろう。
それというのは、ターゲット値はともかく、ゴールドマン・サックスの予測の根拠に注目していただきたい。
購買力平価力にしても、利上げ時期に関するマーケットのコンセンサスにしても、英ポンドが「割安」である度合いが、2009年の年初に比べて、かなり改善していることは間違いない。
当時の状況と市場コンセンサスは、このコラムで初回から繰り返し指摘してきたので、ここでは詳しい説明を省略させていただく。
ちなみに、当時の購買力平価から見る英ポンドの「割安」度合いは、現在以上であった。
■これからは、英ポンドではなく、豪ドルを見るべき!
2009年に入ってからの市場コンセンサスは、大半の間、英ポンドについては間違いを犯し続けた。だから、今さら強調されても、効き目は薄いだろう。
前述したゴールドマン・サックスの予測の根拠が正しいとしても、英ポンドのさらなる上昇につながるかどうかは、年初ほど確信を持てないはずだ。
ちなみに、当時の購買力平価から見る英ポンドの「割安」度合いは、現在以上であった。
■これからは、英ポンドではなく、豪ドルを見るべき!
2009年に入ってからの市場コンセンサスは、大半の間、英ポンドについては間違いを犯し続けた。だから、今さら強調されても、効き目は薄いだろう。
前述したゴールドマン・サックスの予測の根拠が正しいとしても、英ポンドのさらなる上昇につながるかどうかは、年初ほど確信を持てないはずだ。
そうであれば、英ポンドを見るよりも、素直に、強気見通しが支配的である豪ドルやユーロを、米ドル全体のパフォーマンスを測るパラメーターとして見たほうがよいのかもしれない。
つまり、利上げ観測の根強い豪ドルのさらなる上昇がなければ、米ドル全体が底打ちして、これからリバウンドしやすくなるという結論が得られる。
■米ドル/円のリバウンドは継続へ
米ドル/円については、これまでも指摘しているように、最近はドルインデックスとの連動性を強めている。そのため、少なくとも年内いっぱいは、米ドル全体のパフォーマンスに追随しやすい構造になると見ている(「原油決済通貨の変更などバカバカしい話。ドル安はこのあたりでクライマックスか?」参照)。
この見方が正しければ、米ドル/円は年内の底割れを回避し、リバウンドを継続するだろう。
ちなみに、英ポンドはこれから、昨年の円のように、米ドル全体のパフォーマンスから、やや遊離するような存在になるのではないかと思う。
2008年は、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場が、米ドル/円の値動きを左右した。
同様に、英ポンドの対米ドルでの値動きが、ユーロ/英ポンドや英ポンド/豪ドルなど、クロス相場の動向に影響されるのではないかと思うからだ。
■英ポンドの「サプライズ」がある!?
昨年、米ドルの全面高と米ドル/円の下落が重なっていたように、来年に向けて、米ドル全面高と英ポンド/米ドルの堅調が相まって、値動きが形成されることも考えられる。
購買力平価理論から見れば、現在の米ドルは、ユーロなどの主要通貨に対しても「割安」である。けれど、英ポンドは「激安」だ。だから、米ドル全体のリバウンドがあっても、「激安」の英ポンドに対する反発力はやや弱いのではと推測される。
そうなると、ゴールドマン・サックスの英ポンドに対する強気見通しが、そのまま米ドル全体の弱気見通しとしては受け取れない。
そして、ユーロ/英ポンドをはじめとして、英ポンドの「サプライズ」に備えるべきなのかもしれない。
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