米ドル/円は2015年6月高値125.86円を突破!円安を止めるにはどうすればよいのか?
毎回、当コラムでは、「円安になる!」という話ばかりしていているのですが、先ほど(2022年4月13日15時30分ごろ)米ドル/円相場は2015年6月5日に付けた125.86円の高値を突破しました。7年前の高値を突破したので、さらに米ドルが上昇することが見込まれます。
【参考記事】
●乗り遅れたヘッジファンド勢の参加で、より一層の円安に。ただし、米ドル/円は130円を超えたら、為替介入があってもおかしくない(4月7日、志摩力男)
【参考コンテンツ】
●米ドル/円の上値メドは130円台へ!アベノミクス開始時からこの円安は約束されていた!?(3月29日、志摩力男)
(出所:TradingView)
では、円安を止めるにはどうすればよいのか。
主な方法は2つあります。ひとつは、金融政策を引き締めることです。もうひとつは、為替介入です。
現在日本は、マイナス金利を導入し、YCC(イールドカーブ・コントロール)(※)政策を実施しています。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
円高方向に持っていきたいのであれば、(1)マイナス金利を修正しゼロもしくは少しプラスの領域に持っていくか、(2)YCC政策を修正し、長期金利の上昇を(若干)容認するか、この2つが考えられます。
【参考記事】
●米ドル/円は買われ過ぎによるスピード調整想定も、そこは買いの好機に!10円前後の大陽線出現は大相場の予兆か(3月30日、志摩力男)
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日銀が政策金利を引き上げるとYCC政策と矛盾が生じる。そしてYCC政策の修正は、かえって円売り材料を提供することになる
(1)の政策金利の引き上げですが、マイナスからゼロにすることはあり得るでしょう。しかし、短期の政策金利だけ上げていくと、YCC政策と矛盾してきます。
YCC政策では、10年債の金利をゼロ近辺に抑えることになっており、政策金利がプラスで、長期金利がゼロだと、政策的に逆イールドを導入するというおかしなことになります。金融機関は、預金金利と貸出金利の差によって収益をあげるのですが、国が政策として長短金利差をなくすのは、どうなのかと思います。
そうなると、YCC政策の修正が必要となります。現状の10年債の金利をターゲットとして、0%±0.25%という現状のバンド幅を広げていくか、ターゲットとする金利を10年債ではなく、5年債という短期にシフトするか、という方法が考えられます。
バンドの幅を広げるとすれば、現状の±0.25%を±0.50%程度にするといったことがありそうですが、慎重にしないと、市場のJGB(日本国債)売りを加速させ、大変なことになりそうです。
(出所:TradingView)
日銀は国債を無限に買えるので、0.50%で止めると決めたら、止めることはできますが、またいつかバンド幅を変えると市場参加者が考えるので、JGBのかなりの部分、ほぼ全額近くを日銀が買うことになるかもしれません。そうなると、事実上、政府の債務のほぼすべてを日銀が持っているということになり、どう見てもこれは財政ファイナンスです。円安は際限なく進むことになります。
円安を止めようとして、かえって円売り材料を提供することになります。
(出所:TradingView)
また、ターゲットの年限を10年債から5年債にするというのもありそうですが、仮に5年債の金利を0%±0.25%に抑えることにした場合、5年債の金利は抑えることができるでしょうが、世の中の多くは10年債であり、5年債より先の金利が急騰し、歯止めがかからなくなるリスクがあります。
いずれにせよ、YCCという固定相場を修正することは、非常にリスクを伴います。
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為替介入があれば、リズム感よく円売りで収益を得るチャンスが増えそう。日米金融政策が逆方向を向いている状況では、収益チャンスが無限に広がる
もうひとつの為替介入の方は、十分あり得ることだと思います。
為替を管理するのは財務省です。最近、鈴木財務相の発言も少しずつレベルが上がっています。
4月12日(火)に「為替市場の動向や日本経済への影響を、緊張感を持って注視する」と発言しています。
ただ、注視ということは、まだ「見ている」だけということです。実際の介入にまでは距離があるでしょう。これまでは「断固とした措置をとる」という発言が出てきて、2~3円進むと介入がありましたが、具体的な動きを示唆する表現に変わるか、鈴木財務相の発言を注視していきたいと思います。
最近、「米国などの通貨当局と緊密な意思疎通を図りながら適切に対応する」とも発言し、米当局と連絡を取り合っていることも示唆されています。為替は必ず相手の国があります。相手国の同意が必ず必要なので、その意味では、準備はできているのでしょう。
しかし「金融政策を伴わない為替介入に効果がない」というのは、誰もがわかっていること。米国は5月に0.50%、6月にも0.50%利上げし、その後もFOMC(米連邦公開市場委員会)ごとに利上げすると見込まれています。その一方、日本は金融緩和を続けると黒田総裁は断言しています。
それでも、スピード調整の意味もあり、介入することはあるでしょう。鈴木財務相の発言から推測するに、そのレベルは130円を超えた辺りと考えています。
(出所:TradingView)
介入があれば、最初は驚いて、市場も3~5円ぐらい円高方向に行くことになるでしょう。そして、介入があるのは東京時間であり、海外時間は介入がないので、海外で円安が進むことになります。
介入があって円高となれば、それは円売りのチャンスです。そして、海外時間に円売りし、東京時間は様子見、また海外市場では円売りといった感じで、リズム感よく円売りで収益を得るチャンスが増えそうです。
(出所:TradingView)
これまであまり動かなかった為替相場ですが、日米の金融政策が逆方向を向いている状況下では、収益チャンスは無限に広がります。このチャンスを活かし、収益を上げていきたいものです。
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