ザイFX!で連載しているコラム「マーケットの常識を疑え!」では、コラムの内容と連動した動画「週刊!志摩力男」を掲載していますが、毎月最終週のコラムでは「月刊!志摩力男」をお届けします。こちらは、志摩さんが、直近1カ月の為替相場やトレードを振り返りながら、中期的な見通しやポイントについて独自視点で解説します。こちらもご期待ください!
米ドル/円は見事に切り返し130円台回復。なんとなく買いが湧いてくる動きは底堅さを示している
5月9日(月)の131.35円を高値に調整局面入りした米ドル/円相場ですが、見事に切り返し、本稿執筆時点で130円台を回復しています。
【参考記事】
●マーケットは将来の米利下げまで織り込み始めた!? 米ドル/円は長期的に150円は変わらずも時期は少し先送りか(5月25日、志摩力男)
(出所:TradingView)
米ドル/円の126円台の値動きには、渋いものがありました。5月24日(火)に初めて127円を割り込み126円台に突入したのですが、下げの勢いは強いが、じんわり買いが湧き127円台に押し戻される、こうした動きを何度も続けました(正確には5回)。126円台で取引されていた時間はそれほど長くはありませんでした。
こうした、なんとなく買いが湧いてくるという値動きは、ナチュラルな底堅さを示しています。この値動きから、「底入れは近い」と判断できました。
米国株は4月後半から売られ続けてきましたが、これだけ下げると、月末にはリバランスで機械的に買い戻しが入ります。「1932年以来の8週間連続下落」といったような、おどろおどろしいヘッドラインに焦らされますが、今はパッシブ運用(※)全盛の時代であり、パッシブ運用者がどのように動くのかわかっていれば、先回りして行動できます。
(編集部注:「パッシブ運用」とは、運用目標とするベンチマークに連動する運用成果を目指す手法のこと)
【参考コンテンツ】
●米ドル/円は126円台で調整局面は一旦終了!131円台でショートにできた思考とは?(5月31日、志摩力男)
月末リバランスで米国株に買い戻しが入りましたが、為替市場でも、月末最終日に米ドル買いになるという話が広まったのでしょう。米ドル/円は急速に買い戻され、127円前後から130円乗せと、3日ほどで3円上昇しました。
5月終盤は悲観から楽観へとマーケットは急激に切り返し、ついていくのが大変だったと思います。
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5月後半のマーケットはあまりにも悲観的だった。FF金利先物レートは米利上げ後の利下げを織り込む動きを解消している
ただ、今振り返ってみると、5月後半のマーケットはあまりにも悲観的過ぎたと思います。
FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げで株価は急落しましたが、今後も利上げが続くことが確実なことから、米国経済は株価下落と利上げで「オーバーキル」され、リセッション(景気後退)入りするのではないかと危惧されました。
【参考記事】
●マーケットは将来の米利下げまで織り込み始めた!? 米ドル/円は長期的に150円は変わらずも時期は少し先送りか(5月25日、志摩力男)
2023年12月限のFF金利(※)先物のレートを見ると、利上げ後の利下げまで織り込み始め、2年債の金利は2.4%台へ急低下、10年金利も2.7%台へと低下しましたが、それはさすがにやり過ぎだったと思います。今、2023年12月のFFレートを見ると、利上げ後の利下げを織り込む動きは解消しています。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
(出所:TradingView)
為替市場でも、日銀の黒田総裁が出口戦略について「簡単ではないが可能」と発言しただけで円高に振れたりしましたが、為替市場関係者の見方も、円安の動きはいったん終了し、125円からもっと円高方向に米ドル/円相場は戻るという見方が強まったと思います。
筆者も、短期的に調整局面が続くと見ていましたが、円相場が転換するという見方には同意できません。この円安相場は簡単には終わりません。
今回の円安加速は、米金利が急上昇を開始した時期と重なっています。日本の金融政策は変わらないので、米金融政策が引き締まれば、米ドル/円は自然と上昇するという構造になっています。
(出所:TradingView)
しかし、米金利がなぜ急激に上昇したかといえば、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げが開始されたという面もあるかもしれませんが、それは構造的な変化を見逃していると思います。
やはり、もっとも大きな要因はロシアによるウクライナ侵攻でしょう。中国がロシア側に付き、今回の侵攻を容認しましたが、これで世界は冷戦構造の世界に引き戻されてしまいました。当初、苦戦が報じられたロシア軍ですが、最近の報道では着実にドンバス地域での支配地域を広げています。戦闘は長期化しそうです。
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グローバリゼーションは逆行、インフレ率が高い世界へ。米ドル/円の円安局面はしばらく続く
グローバリゼーションが今後逆行します。物の取引が自由自在にされた時代は終わりました。所々で、サプライチェーンが滞り、物が入ってこないことが日常化します。
なにより、ロシアという巨大な資源大国を、西側経済圏から排除するという作業が始まります。欧州が輸入していた原油や天然ガスを他の地域から調達しなければなりませんが、簡単なことではありません。
サプライチェーンが混乱し、原油価格の高騰が続くならば、日本の貿易収支が黒字になることはなさそうです。
昨年(2021年)は、おそらく「1バレル=60ドル」ぐらいで原油を輸入できていたと思いますが、今年(2022年)は「1バレル=110ドル」前後となりそうです。50ドルも高い原油を買い続けると想定すると、「1ドル=130円」の世界では、今年(2022年)の原油の輸入代金は昨年(2021年)より10兆円近く増えることになります。
(出所:TradingView)
原油のみならず、さまざまな物品を日本は外国からの輸入に頼っています。その価格が猛烈に高くなります。大豆も小麦も、コーヒー豆も何もかもです。
世界は、資源高とサプライチェーンが上手く機能しないことから、インフレ率が高い世界が続くことになります。日本の貿易収支が赤字化すること、そして他国は金利引き締め局面が続くということになります。日本は金利が上げられないので、通貨安が続くでしょう。
米ドル/円相場は、もとの円高局面には相当のことがないと戻るのが難しい。この円安局面はしばらく続くと思います。
(出所:TradingView)
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