米株は本当に底入れしたのか
8週連続で陰線だったNYダウは先週(5月23日~)、陽線が立ちました。
底入れしたと見る強気派も出てきましたね。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルの押し目買いで、利上げに向けて一段高を期待。米ドル/円の日足はヘッド&ショルダー形成、戻り売りか(5月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
7週連続陰線だったナスダック総合指数も陽線に。
先々週(5月16日~)にはコロナ安値と高値で結んだフィボナッチ・リトレースメントの50%を割り込んでいましたが、回復しています。
チャート的には買っていい水準ではありますが、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げはまだ始まったばかり。
ここで買えるかというと難しい。
【参考記事】
●ユーロ/円の戻り売りが短期的に良さそう。ユーロ/米ドルの反発は1.00ドルを割れてから!? 米ドル/円は、127円台なら買い(5月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
米経済指標は景気失速の兆候を示しています。
先週発表された4月新築住宅販売件数は予想を大きく下回り、5月リッチモンド連銀製造業指数も予想外のマイナスに。
こうした指標の悪化から、FRBが金融引締めの手綱を緩めるのではないかと見るトレーダーも増えてきたようです。
6、7月の0.5%利上げは揺るがない
6月15日(水)、7月27日(水)の0.5%利上げはほぼ確実でしょうが、米株のリバウンドが10%、20%と、思ったよりも大きくなるリスクはたしかにある。
とはいっても、FRBは5月からの3会合で計1.5%も利上げする異例の事態ですから、何が起こるかわかりません。
6月にまた急落する事態も十分考えられます。
6月1日(水)からはQT(量的引き締め)も始まります。
予告されたことですから織り込み済みでしょうが、実際に始まったことで市場がどう反応するか。
QTの規模は当初300億ドルですが、9月からは600億ドルへと倍増されます。
長い話になりますが、6、7月はもみ合いのなかで緩やかに上昇し、8月下旬のジャクソンホール会合あたりから崩れ始めて、9月のQT倍増で崩れる――そんなイメージも描けます。
あり得るシナリオでしょうね。
あるいは、米株が底をつけたのは5月20日(金)。
そこから2、3週間ほど調整して、6月15日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)から下落再開といった、より早く下落が再開するケースも想定できます。
じり高の原油、さらなる上昇は
どちらにせよ、中途半端なところで米株を買うと、踏まれるリスクがありますね。
さて、スケジュールを見ていくと、今日、5月30日(月)は米国がメモリアルデーで休場です。
メモリアルデーの翌日から「ドライブシーズン」入りとなり、ガソリンの需要が高まる季節が始まります。
6月2日(木)はOPECプラス(※)会合ですが、今までどおり日量43万バレルの小幅な増産を粛々と続けていくのでしょう。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
WTI原油は116ドル前後。じり高ですね。
上海ロックダウンも緩和に向かうとの報道もある中、同時に中国は景気テコ入れ策を打ち出しています。
中国での需要増が期待される中、EU(欧州連合)がハンガリーの反対を押し切ってロシア産原油の禁輸を決定、そこに米ドル安が加わると、原油にかぎらずコモディティ市場全般、強含むかもしれません。
リスクオンっぽい雰囲気となり、さらに株価が上がるという、今週(5月30日~)はそんなフェーズかもしれないですね。
昨年末(2021年末)時点で「2022年の注目トレード」のひとつが、原油高を背景にした米ドル/カナダドルでした。ターゲットは1.20カナダドルです。
ところが、原油は予想どおりに上がっているものの、米ドル/カナダドルはレンジ。米ドル高となったためです。
【参考記事】
●【2022年の見通し】2022年も豪ドルに注目! 鉄鉱石の反発は、中国経済復活の兆しか? 豪ドルは主要通貨に対し、大きく上昇しそう(2021年12月23日、西原宏一)
(出所:TradingView)
ドルインデックスを見ると、2017年高値103.82ポイントの上抜けにいったん失敗した形に。
米国株のリバウンドとともに米ドル安が進み、原油も一段高となれば、米ドル/カナダドルにも下落圧力が高まりそうですね。
(出所:TradingView)
米ドル/円は、長期的には上を見ていますが、今週はまだまだ難しい。
下がれば買いは出てくるものの、上がったところを売って、下で買い戻してと回転させたほうがよさそうです。
ユーロ/米ドル、巨額オプションが下値支える
明日(5月31日)は月末、そして6月3日(金)には米雇用統計も発表されます。
米株強気派が、インフレが沈静化すると考える根拠のひとつが、賃金の上げ止まり。
雇用統計で平均賃金が弱含んでいるようだと、米株強気派の勢いが強まって、米株がポンと上がって米ドル安となるかもしれません。
西原さん、今週の通貨ペアはどう考えますか?
ユーロ/米ドルの押し目買いですね。
5月31日(火)まで1.0590ドルから1.0600ドルの間に約80億ユーロと大きなオプションがあり、下値は固いでしょう。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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