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米ドル/円は一時126.37円まで下落。このところ米金利との連動性を強めている
米ドル/円の上昇力が鈍化していると当コラムで指摘してきましたが、米ドル/円はついに127円を割り込み、126.37円まで下落しました。
【参考記事】
●米ドル/円上昇力に鈍化のサインが出てきた。上昇トレンドは頓挫しないが、高値追いはせず押し目をゆっくり買うトレードにするべきか(5月11日、志摩力男)

(出所:TradingView)
米ドル/円の下落と同時に米金利も急激に低下しました。

(出所:TradingView)
米2年債利回りの2.50%割れはちょっとやり過ぎではないかとも思うのですが、写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップ社の決算が悪く、ナスダック総合指数の下落が見えていたので、米ドル/円(売り)+米国債(買い)+米国株(売り)の仕掛けが同時に入ったのでしょう。
このところの米ドル/円相場は、米金利の動きとの連動性を強めています。米金利が天井を付けたのが5月6日(金)、米ドル/円は翌営業日の5月9日(月)に131.35円の高値を付け、その後、ともに下落基調です。
日本の金融政策が動かないので、米金利が上昇すれば米ドル/円上昇、米金利が低下すれば米ドル/円下落という関係性になっています。

(出所:TradingView)
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2023年末までに米国は利下げに転じる。マーケットはそこまで織り込み始めたのか?
3月以降、ここまでのマーケットの動きを概観すると、おおまかに2つの時期に分けることができます。
第1期は3月初めから5月9日(月)までですが、FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派化により米金利が上昇、それを受けて米ドル/円は上昇し、米国株は下落しました。米国経済への自信がこの時期にはありました。
第2期は5月9日(月)以降ですが、FRBのタカ派化がやり過ぎではないかとの警戒感が高まった時期です。オーバーキルへの懸念から米国株がさらに下落し、金利は将来のリセッション(景気後退)を織り込む形で低下を開始しました。米ドル/円は、米金利低下を反映して同じように下落しました。
そしてここにきて、マーケットは将来の「米利下げ」まで織り込み始めたようです。
2023年12月限のFF金利(※)先物レートを見ると、5月前半に3.30%前後となるレベルで取引されていましたが、最近は2.75%となる水準となっています。つまり、政策金利が3.25%まで上昇すると想定されていましたが、ここ2週間ほどで2.75%まで下がったことになります。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

(出所:TradingView)
現時点での、2023年6月限のFF金利先物レートは3.00%前後ですが、12月までには利下げされるというようにも解釈できます。

(出所:TradingView)
これを素直に取れば、マーケットの考える未来は、今後もFRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めを続け、来年(2023年)には3%ぐらいまでFF金利は上昇するが、その結果、リセッションに陥り、2023年末までには米国は利下げに転じる、そこまで織り込み始めたといえます。
この解釈が、今後も通じるでしょうか。にわかには信じられません。FRBはまだ2回しか利上げしていませんし、QT(量的引き締め)もまだ始まっていません。それなのに、今後も数回FRBが利上げし、その先のリセッションと米利下げまで織り込むというのは、相当力のある預言者しかできません。
そんな先のことはわからないというしかないでしょう……。
この1~2年のエコノミストの経済見通しを振り返ると、強烈に変化してきた
この1~2年のエコノミスト達の経済見通しは強烈に変化してきました。
2021年始めのころ、米ジョージア州の上院選挙で民主党が2議席を獲得、上下両院を民主党が支配することが決まり、米長期金利は上昇を始めました。
米ドル/円もそれに合わせて上昇したのですが、そのころの利上げのコンセンサスは2024年でした。ドット・チャートも2023年まで利上げ可能性ゼロでした。
【参考記事】
●金融緩和し過ぎとの警戒感で、米ドルは少し反発か。中長期のドル安は変わらない(2021年1月13日、志摩力男)
2021年夏ごろ、すでにインフレ率は上昇を開始していたのですが、年末からテーパリング(※)を開始して2022年夏ごろに終了、利上げは2023年からというのがコンセンサスでした。パウエル議長は、ジャクソンホール会議においてなぜ金融引き締めを急いではいけないのか、詳細に説明した講演を行いましたが、今見るとかなり恥ずかしい内容です。
(※編集部注:「テーパリング」とは、米量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
2021年後半には、FRBはあまりにも「ビハインド・ザ・カーブ(※)」だということで、ラリー・サマーズ氏らの批判が高まります。その頃からようやく、政策金利は早急に3%ぐらいまで上昇させなければならないと、ブラードセントルイス連銀総裁が話し始めました。それでもFRBがテーパリングを開始したのが11月です。
(※編集部注:「ビハインド・ザ・カーブ」とは、景気や物価の上昇に対して、意図的に利上げのタイミングを遅らせる金融政策のこと)
振り返って見るだけでも、エコノミストや専門家の経済見通しというのがまったくあてにならないというのがわかります。
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FRBが2回利上げしただけで狼狽している株式市場を見ると、今後数回の利上げに耐えられるとは思えない
今後どうなるかわかりませんが、2回利上げしただけで狼狽している株式市場を見ると、今後数回の利上げに耐えられるとはとても思えません。どこかでFRBの利上げは下落する株式市場にストップさせられそうです。

写真はパウエルFRB議長。2回利上げしただけで狼狽している株式市場を見ると、どこかでFRBの利上げは下落する株式市場にストップさせられそう (C)Bloomberg/Getty Images News
筆者は、将来的に米ドル/円は150円ぐらいまで上昇するのではないかと思っているのですが、その時期は少し先送りされそうな雰囲気です。

(出所:TradingView)
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