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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

米ドル/円が、米国の金利が低下する中で
136円台へ上昇した原因は? 日銀の無制限の
国債購入で、円が際限なく売られる可能性も

2022年06月23日(木)10:27公開 (2022年06月23日(木)10:27更新)
志摩力男

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YouTube動画「週刊!志摩力男」では、志摩さんがその日のコラムの内容からより注目しているテーマをピックアップし、5分程度の動画で解説します。動画を視聴して、もっと知りたい!と思った人は、続けてコラムをご覧ください。

週刊!志摩力男

米ドル/円の上昇要因が日米金利差の拡大とは100%いえなくなっている

 これまで市場関係者の多くが支持してきたのは、日米金利差拡大が米ドル/円上昇の要因という考え方でした。もちろん、それを否定するつもりはありません。しかし、それが100%正しいともいえないと思います。

 日米金利差がすべてと考えると、今後、米国がリセッション(景気後退)に陥った場合、米金利は低下します。そうなると米ドル/円も上昇から下落へと反転となるはずです。

 しかし今週(6月20日~)、米金利が低下しているにも関わらず、米ドル/円は上昇し、136円台へと高値更新しました。

米ドル/円&米10年債利回り 日足
米ドル/円&米10年債利回り 日足

(出所:TradingView

 この動きに当惑した人も多いと思います。日米金利差が米ドル/円上昇の理由だったのなら、米ドル/円は下落しなければなりませんでした。それなのに上昇したということは、何か別の理由もあるということでしょう。

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円安の真の原因は日本の異様な超金融緩和にあり。日銀VSヘッジファンド勢の行方は?

 私自身思うのは、日米金利差も大切ですが、日本の異様な超金融緩和、それこそが円安の真の原因だということです。

 今、日銀はYCC(イールド・カーブコントロール※)を巡り、ヘッジファンド勢と戦っています。

(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)

 ヘッジファンド勢は、現在の政策を維持するのは難しいと思っています。遅かれ、早かれ、日本はYCC政策を修正し、長期金利の上昇を受け入れなければならないだろうと考えています。よって、JGB(日本国債)のショートを膨らまして、JGBのバンド幅が拡大したときに収益を上げられるポジションを積み上げています。

 その一方、日本人の多くは、日銀は理論的には「無限の財布」があるので、負けることはないと考えています。

 さてどちらが正しいでしょうか。

 ヘッジファンド勢は、おそらくJGBの売りに関しては、勝つことはないかもしれません。「こんな政策は維持不可能だ」という人がいますが、理論的に日銀は無限に国債を買うことができるので、単に売りをすべて買うまでです。よって、このJGBにおける戦いにおいて、日銀が負けることはないでしょう。

 しかし、ヘッジファンド勢は同時に米ドル/円をロング(買い)にしています。

 日銀がJGBを買うと、それは量的緩和政策の拡大を意味します。すなわち、金融緩和=円売り材料です。JGBの売りで勝てなくても、米ドル/円のロングポジションで利益が出ます。

 米ドル/円の上昇を財務省が介入で止めようとした場合どうなるか。日銀のJGB買いは無限ですが、財務省による円買い介入は、外貨準備の制約があります。

 現在150兆円と世界2位の規模がありますが、為替市場で円売りが活発化した場合、150兆円で円売りを止められない可能性はあります。

【参考記事】
米ドル/円は150円超の円安も覚悟か。円買い介入は無限ではない。投機筋とガチンコ勝負しても、日本の当局に勝ち目なし(6月15日、志摩力男)

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:TradingView

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世界中がインフレ対応する中、日銀のバランスシート拡大継続により円が際限なく売られる可能性もあるか

 また、日銀によるJGBの買いは無限にできるのかもしれませんが、世界中でインフレ対応している中、バランスシートの拡大が続くのであれば、円は際限なく売られてしまうかもしれません。

世界の通貨VS円 日足
世界の通貨VS円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足

 合点がいかないのは、今年(2022年)に入って20%近い円安を加味すると、日本のインフレ率こそが世界でもっとも高くなっても不思議ではないはずです。つまり、誰かが歯を食いしばって差額を埋めているということになります。

その誰かとは、輸入業者でしょう。売上の低下を懸念しているのでしょうが、どこかの地点で、急激に値段を上げるかもしれません。

 今の日本は、物価が急騰する少しだけ前を走っているだけであり、今後の展開が見ものです。


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