YouTube動画「週刊!志摩力男」では、志摩さんがその日のコラムの内容からより注目しているテーマをピックアップし、5分程度の動画で解説します。動画を視聴して、もっと知りたい!と思った人は、続けてコラムをご覧ください。
米ドル/円は135円到達。財務省、日銀、金融庁の「三者会合」も円安を止めるには至らず
米ドル/円がついに135円に到達した。
6月13日(月)に135円に到達したときは、日銀の黒田総裁が「円安はトータルで見れば日本経済にプラス」という言葉を変更し「急激な円安は経済にはマイナス」と修正したこともあり、133.60円前後まで調整があったが、本日(6月15日)、また135.59円にまで達した。
(出所:TradingView)
時間は遡るが、6月10日(金)には財務省、日銀、金融庁の責任者が集まり「三者会合」が開催された。会合後に声明文まで発表されている。
国際金融資本市場に係る情報交換会合の声明(令和4年6月10日)
本日、財務省、金融庁、日本銀行の間で、国際金融資本市場に係る情報交換会合(通称「三者会合」)を開催した。参加者は、最近の為替市場の動向や経済への影響について意見交換を実施し、以下の認識を共有した。
・為替相場は、ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要であり、急速な変動は望ましくない。
・最近の為替市場では、急速な円安の進行が見られ、憂慮している。
・政府・日本銀行は、緊密に連携しつつ、為替市場の動向やその経済・物価等への影響を、一層の緊張感を持って注視していく。
・為替政策については、「過度の変動や無秩序な動きは、経済や金融の安定に悪影響を与え得る」といったG7等で合意された考え方を踏まえて、各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合には適切な対応をとる。
(以上)
(出所:財務省)
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円買い介入は無限ではない。投機筋とガチンコ勝負しても、日本の当局に勝ち目はない
声明文まで出してきたということは、それなりに今後の為替マーケットへの対処方法に関して話し合ったはずだ。過去「三者会合」が開催され、それなりのメッセージが出されたときは(いずれも円高局面だが)、米ドル/円相場は結果的に反発した。
よって、今回もある程度は市場の反応があるのではないかと様子を伺っていたが、米ドル/円は133.20円前後まで調整はしたものの、その後に発表された米5月CPI(消費者物価指数)の数字があまりにも高かったので、インパクトはかき消されてしまった。
(出所:TradingView)
自国通貨高と違い、自国通貨安への対応は難しい。それは仮に為替介入する場合、円高のときは円売り介入となるが、円はいくらでも持っている(輪転機で刷れば良いとよく言われます。Printing Money)ので、無限に介入することができる。一方、円買い介入は、持っている外貨に介入金額が制限されるので、無限とは言えず、限界があるためだ。
それでも、日本は世界2位の外貨準備を誇る。かなりの規模の介入ができるはずだ。それでも、150兆円の外貨準備のうち、50兆円を使い、あと100兆円を切ってくると、防衛は難しくなるだろう。米金融市場の大きさを考えると、投機筋とガチンコ勝負をしても、日本の当局に勝ち目はない。
かつての当局による大規模円買い介入は1998年4月10日。「ミスター円」こと榊原英資氏は意地を見せたが……
そもそも、為替介入は、相当の危機でもない限り、するべきでないとされている。
今、日本が為替介入の伺いを米当局に打診すれば、ダメとは言われないだろうが、快い返事ではないはずだ。そもそも、金融政策面では円安政策を取っているのに、為替だけ円高に持っていこうとしても、矛盾している。まずは、金融政策を変更するようにと言われるのがオチだ。
かつての円買い介入。大きいのは榊原英資氏が財務省(旧大蔵省)の国際金融局長であった1998年4月10日(金)の時だ。2.6兆円の市場介入を行った。
米ドル/円は131円台から円買い介入で押し下げ、128.50円辺りで大きな買いとぶつかり、一進一退となった。巨額の売りで、マーケットを潰すが、それに負けじと買いも出てくる。当時は人を介したブローカー取引が主流だったが、ブローカーの方々の凄まじい声が記憶に残っている。
その128.50円前後の攻防は、反対サイドがソロスファンドだったと言われている。当時、ソロスファンドのナンバー3のポジションにいた、ニック・ロディティ氏の大量の米ドル/円買いだったと聞こえてきた(確認とったわけではありません)。
最終的に、榊原氏は意地を見せ、128.50円を潰し、127円台半ばまで押し下げた。しかし、大量介入を続けるわけにも行かず、翌週からは何事もなかったかのように130円台に乗せ、週末には132円近辺で引けた。今、当時のチャートをみても、大規模介入した形跡はどこにもない。
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円買い介入は金額勝負はできない。現在の状況で介入しても、投機筋にエサをまくようなもの
何を言いたいかというと、円買い介入は金額勝負ができないということだ。介入すれば、チャンスと見て、投機家が寄って湧いてくる。たとえ150兆円でも市場全体から見ると小さい。
後日談もあり、その後、榊原氏は当時米財務副長官であったサマーズ氏から猛烈な抗議の電話を受けたらしい。激烈だったようだ。
日本が金融緩和政策を変更する見通しはない。その一方、FRB(米連邦準備制度理事会)は今後もFF金利(※)を上げ続けていく。
この状況で介入しても、効果はまったくなく、投機筋にエサをまくようなものだ。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
FOMCでは、0.75%の利上げが行われると予想されている。WSJ紙のニック・ティミラオス氏の記事にパウエル議長からメッセージ?
本日(6月15日)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、0.75%の利上げが行われると予想されている。それはWSJ(ウォールストリート・ジャーナル)紙のニック・ティミラオス氏の記事でわかったことだ。
彼は、FOMC前、当局者が発言できない期間に何かメッセージを伝えたい時、彼を通じて出すことになっていると考えられている。
彼は6月12日(日)には、こう書いた。
「パウエルFRB議長が0.75%という予想以上の利上げで市場を驚かせる可能性があるというアナリストもいるが、そのような動きは今年に入ってからの中央銀行の政策運営から著しく逸脱することになるため、依然として可能性が低い」
しかし、13日(月)の記事には、
「ここ数日、厄介なインフレ報告が相次いでいることから、米連邦準備制度理事会(FRB)は今週の会合で、予想を上回る0.75%の利上げを実施し、市場を驚かせることを検討することになりそうだ」
同じ人間が書いた文章には見えない。よって、6月13日(月)の記事は、パウエル議長からのメッセージと考えられている。
写真はパウエルFRB議長。6月13日(月)のWSJ紙の記事はパウエル議長からのメッセージと考えられている (C)Bloomberg/GettyImages
米ドル/円は150円超の円安も覚悟しなくてはならない可能性。米国が緩和局面を迎えるまで円安が続くことになるか
市場は6月、7月と0.75%利上げし、年末にFF金利は3.50%になると想定している。2023年3月には4.00%だ。この金利上昇に、米ドル/円相場は耐えられるのであろうか。
短期間に20円上昇したのだから、少しぐらい調整はどこかであるだろう。しかし、短期金利が4%のときに、YCC(イールド・カーブコントロール)を実施して長期金利まで0.25%に抑えている円が135円で済むことはないだろう。150円への道が待っている。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
リフレ派のエコノミストに円安への対抗策はあるのか聞いてみても、何も持ってはなさそうだ。それよりも、金融緩和で経済を下支えするの一点張りだ。
あとはインバウンドが来ればという雨乞いのような意見だが、インバウンドの過去最高は2019年の4.8兆円だが、たかだか5兆円でマーケットは動かない。
そうなると、米ドル/円は150円超の円安も覚悟しなくてはならない可能性がある。米国が金融引き締め局面を終え、緩和局面を迎えるまで、円安が続くことになりそうだ。
(出所:TradingView)
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