各国中銀が利上げに踏み切る中、日銀だけが現状維持。金融政策面からは円安が継続しやすい
先週(6月13日~)は、各国の金融政策決定会合が開催されました。
まず、15日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が公表され、10日(金)に発表されたCPIが高かったことから、0.75%の大幅利上げとなりました。
そして金利見通しは、今年(2022年)末の中央値は3.4%(前回1.9%)、2023年末は3.8%(前回2.8%)と大幅な引き上げとなりました。
16日(木)のSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の金融政策決定会合では、0.50%の利上げとなり、こちらはサプライズ利上げとなっています。
事前は、約1割のエコノミストが0.25%の利上げ予想をしていましたが、大半が据え置き予想だったこともあり、スイスフランは急騰。
(出所:TradingView)
同日にはBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の金融政策決定会合もあり、こちらは0.25%の利上げとなっています。
そして、17日(金)には日銀金融政策決定会合の結果が公表されましたが、日銀だけが現状維持の据え置きです。
海外のファンド勢からはYCC(イールド・カーブコントロール※)のバンド幅の拡大を期待した動きもありましたが、金融政策の修正に関して黒田総裁は「緩和効果が弱くなるため、考えていない」と、これまでの考えを継続しています。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
ECB(欧州中央銀行)も7月に利上げを行う見通しのため、日本以外の主要な国はすべてが利上げサイクルに入ります。
そのため金融政策面からは、円安が継続しやすいことになります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
18日(土)にはウォラーFRB理事が、7月の会合で0.75%の利上げを支持するとの発言もあり、米長期金利は上昇しやすく、相関性の面からも米ドル/円は上昇しやすいことになります。
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実弾介入は現時点ではなさそう。米ドル/円が下がったところは押し目買いの場にされる
6月16日(木)に131.50円付近まで下がりましたが、5月9日(月)の高値131.35円がサポートされた状態でもあるため、テクニカル的にも買い方向でいいように考えています。
16日(木)の下げは約4円幅程度ですが、3月下旬のときの調整も約4円幅だったこともあり、これまでの上昇トレンドの調整の動きも似た状態が続いています。
要人発言からは、円安への口先介入が入りますが、その米ドル/円が下がったところは押し目買いの場にされると思います。
(出所:TradingView)
実弾介入が出るようなら急落もしますが、米ドル安にすると、米国のインフレはさらに悪化するため、米国が容認するとは考えにくく、そのため実弾介入は現時点では出ないと思います。
131.50円が下値メドとなり、135.60円を上抜ければ、137円の可能性があると考えています。
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為替市場は米ドル高に。特に豪ドル/米ドルやニュージーランドドル/米ドルで米ドル高でなりやすい
大きな流れとしてのリスク回避はまだ続くと思います。
FRBが金融引き締めをしているだけでなく、各国が引き締めを始めているため、そしてそのペースが速いため、株式市場にとっては厳しい状況が続くように思います。
パウエル議長もソフトランディングではなく、ソフティッシュ・ランディングとしており、これは多少の痛みを伴うことも示唆している内容になります。
6月15日(水)のFOMCでも、失業率の見通しが今年(2022年)末3.7%(前回3.5%)、2023年3.9%(前回3.5%)、2024年4.1%(前回3.6%)と、前回と比較すると悪化する見通しに修正されています。
そのため、大きな流れとしてのリスク回避はまだ続き、米国株は戻り売りの相場がまだ続くように思います。
為替市場は米ドル高で、特に豪ドル/米ドルやニュージーランドドル/米ドルで米ドル高になりやすいように思います。
【参考記事】
●リスク回避の米ドル高は継続。インフレが収まるまで米国株は下がりやすく、その動きを見ながらの豪ドル/米ドル売りで(6月14日、バカラ村)
ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルなども、米ドル高になる可能性があると思います。
ただユーロ/米ドルは2015年から2017年の安値1.03ドル水準がサポートゾーンとして今も推移しており、英ポンド/米ドルも1.19ドルがサポートゾーンとなっており(コロナショック時に一時的にその水準を下抜けましたが、そのショック時の動きを除くと1.19ドル水準がサポートされています)、今回もその水準でサポートされています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
そのため、今はまだ反発することが考えられ、すぐに下抜けることはないと思います。
ただFRBや他の中央銀行が利上げを急いでいることから、金融市場は不安定となり、米国が大幅利上げをすると新興国からの資金流失懸念も出てくるため、それを端緒とした金融ショックの可能性もあると思います。
そのときは米ドル高になると思うため、現在はサポートゾーンで反発していたとしても、まだ下げる可能性は残ったままだと思います。
目先に関しては、米ドル/円が131円台から反発していることもあり、そこを下値メドとして、買い方向でいいのではないかと考えています。
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