夏の観光シーズンの影響とコモディティ価格の下落で外貨ニーズが減り、トルコリラ売り圧力は弱くなるか
トルコ中銀が発表したデータによると、短期対外債務は2021年末に比べ10.6%増加し、1345億ドルになりました。長期債を含む返済期限まで1年未満となった対外債務の金額も1823億ドルに達し、史上最高水準で推移しています。これは、原材料高でトルコの外貨ニーズが高まっていることの証で、外貨ニーズの高まりはトルコリラの売り圧力を増やしています。
一方で、夏の間は観光シーズンの影響で外貨ニーズが減り、足元でコモディティ(商品)価格も下げに転じているので売り圧力が弱くなるはずです。
(出所:TradingView)
トルコの新規住宅販売は依然として高水準。外国籍ではロシア人による住宅購入がもっとも多い
TUIK(トルコ統計局)は6月の新規住宅データを発表しました。6月の新規住宅販売件数は15万509件で、年間ベースで11.57%の上昇となり、5月の水準から落ちたものの依然として住宅購入の意欲が高いことを示しています。
(出所:TUIK)
外国人による住宅購入も前年比で81.76%の上昇となりました。トルコの住宅を購入する外国人でもっとも人数が多いのはロシア人です。
(出所:TUIK)
ウクライナ戦争の開始以来、ウクライナ人だけではなく、国の運営に不安を感じたロシア人も国外に移住するケースが増えています。トルコの住宅価格が外貨建てで安いことに加え、トルコが欧米諸国と違ってロシア人に対する制裁措置を行っていないことがトルコで住宅を購入する最大の理由です。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラ/円は目先、9円までの上昇を想定するべき。ロシアの富裕層の一部が、トルコ資産へ投資を開始!?(4月20日、エミン・ユルマズ)
市場予想より強かった米CPIを受け、米ドル/トルコリラは上昇。背景にあるのはFRBによる1.00%の利上げ懸念
今週(7月18日~)のトルコリラは対米ドルで軟調に推移しているものの、対円では大きく動いていません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米ドル/トルコリラは17.50リラを超えましたが、その背景にあるのは先週(7月11日~)発表された米国のCPI(消費者物価指数)が市場予想より強かったことによる、FRB(米連邦準備制度理事会)の1.00%の利上げ懸念です。
FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーによる0.75%支持発言を受け、米国株は安心して上昇していますが、米国のマクロ経済指標が強いことから、1.00%利上げの可能性が高いと思います。米ドルの独歩高が起きている背景にこれがあります。
トルコのCDSは19年ぶりの9%超え。エルドアン政権の経済運営失敗に加え、ロシアとウクライナの戦争の長期化を懸念か
トルコ5年債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は先週(7月11日~)9%を超えました。これは19年ぶりの高水準で、リーマンショックの時もCDSが9%に近づくことはありませんでした。
エルドアン政権の経済運営の失敗に加え、ロシアとウクライナの戦争の長期化が懸念されています。
トルコ5年債のCDSが9%を超えて19年ぶりの高水準に。エルドアン政権の経済運営の失敗に加え、ロシアとウクライナによる戦争の長期化も懸念されている (C)Anadolu Agency/Getty Images
エルドアン大統領は今週(7月18日~)イランの首都テヘランでロシア、イラン首脳と会談を行う予定です。
3カ国の首脳がシリア情勢について協議する予定となっていますが、シリアよりもウクライナ情勢が焦点になるのではないかと思います。ロシア、イランとエルドアン政権下のトルコの共通点は、国際舞台で孤立していることだと思います。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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