ザイFX!で連載しているコラム「マーケットの常識を疑え!」では、コラムの内容と連動した動画「週刊!志摩力男」を掲載していますが、毎月最終週(もしくは月初)のコラムでは「月刊!志摩力男」をお届けします。こちらは、志摩さんが、直近1カ月の為替相場やトレードを振り返りながら、中期的な見通しやポイントについて独自視点で解説します。ぜひ、ご視聴ください。
パウエル議長の講演を一言で言うと「私はポール・ボルカーになる」だった
ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長講演は、ほぼ予想通り極めてタカ派的なものでした。「短く、内容を絞って、直接的に訴えた」スピーチは、意図が明確ではっきりしており、これまでパウエル議長を批判してきたラリー・サマーズ氏やビル・ダドリー氏らも議長を称賛しました。
内容を一言で言えば「私はポール・ボルカーになる」。
講演内容については、多くの人が解説していると思うので、ここでは割愛します。私が印象に残ったのは、バーナンキ、グリーンスパン、そしてボルカーという過去のFRB議長の名前、発言を引用することで、パウエル議長自身も彼らの伝統を受け継ぐものとして、彼らの名前を汚さぬように、毅然とインフレに立ち向かうと誓った、そういうスピーチだったと思います。
【参考記事】
●ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演は、十中八九「タカ派」な内容になる! ただし、市場が「タカ派パウエル」をすでに織り込みすぎている可能性にも警戒(志摩力男)

ジャクソンホールで会議でのパウエル議長の講演は、毅然とインフレに立ち向かうと誓った、そういうスピーチだった (C)Bloomberg/Getty Images News
これまで2023年のどこかでは金融緩和に向かう(マーケットでは「パウエル・ピボット」と勝手に呼んでいました)と考えられていたのですが、インフレが完全に消え去るまで金融緩和にシフトしない、つまり2023年中の金融緩和転換はないことを明確にしました。
つまり、2022年度中は、3.50%なのか、3.75%なのか4.00%なのかわかりませんが、しかるべきレートにまで金利を上昇させ、その後1年ぐらい、その金利が固定されることになります。利下げがないということは、その間のスワップポイントが固定されることになるので、キャリートレードがしやすくなります。
現在の日米金利差で、米ドル/円の先渡取引(※)においてどの程度のスワップポイント(スワップ金利)が得られるのか調べてみたところ、3カ月で1.17円、6カ月2.7円、1年では5.8円もあり、なかなか魅力的です。ちなみに2年では11円ほど、5年で24円、10年で40円ほど入る計算になります。
(※編集部注:「先渡取引」とは、一定期間における通貨交換のこと。フォワード取引とも呼ばれ、一定期間後に反対売買を約束して行う取引となる)
これだけ金利差があるならば、下がったところでは、こうしたスワップポイントも考慮に入れて、トレードするのも良いかと思います。
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FRBも大幅利上げに動き、今度はECB理事会も大幅利上げに動く。黒田総裁はどこまで円安を許容するのか?
ジャクソンホール会議のハイライトはパウエル議長の講演でしたが、ラガルドECB総裁の欠席を埋めたシュナーベルECB専務理事の講演も、なかなかの内容でした。
“Monetary policy and the Great Volatility”(金融政策と大きな変動率)と題したスピーチでしたが、「金融政策はたとえ成長率の低下や失業率の上昇のリスクを伴っていても、現下のインフレに対しては金融政策はよりForcefully(力強く)に対応する。それは将来のより悪いリスクを最小化するためだ」と、パウエル議長が講演で使ったForcefullyという言葉を、意図的に使って決意を示しました。
このところ、ECB関係者から出てくる発言は、レーン専務理事を除けば、誰もがタカ派的であり、来週(9月5日~)、8日(木)に開催されるECB理事会では、おそらく0.75%という大幅な利上げが決定されるのではないかとされています。
FRBも大幅利上げに動き、今度はECB理事会も大幅利上げに動きます。日本だけ、いつまでも現行の金融緩和政策を維持すると黒田総裁はインタビューに答えています。
どこまで円安を許容するのか。黒田総裁は、前回の日銀金融政策決定会合で、少々金利を上げても円安を止めることはできないと語っていましたが、本音でしょう。しかし、金利をまったく上げない体制でいることは、円安に拍車をかけます。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
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米ドル/円は140円に迫っているが、売る理由は思いつかない。150円、160円といった数字を頭に入れてトレードする必要もあるか
金融緩和を支持する人は、金利を少しでも上げると日本経済は耐えられないと言います。私自身は、そこまで脆弱とは思いませんが、低金利を前提にしたビジネスはたくさんあるでしょう。
そうしたビジネスは少しでも金利が上昇すると立ち行かなくなります。しかし、世界中が金利引き上げ競争を演じる中、絶対に金利を上げない国がひとつあれば、その通貨は徹底的に売られるのみです。
米ドル/円は140円に迫っていますが、米ドル/円を売る理由がほとんど思いつかない。
このままだと140円も通過点で、そのまま上昇しそうです。150円、160円といった数字を頭に入れてトレードしなければならなくなってきました。

(出所:TradingView)
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