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ジャクソンホール会議開催。マーケットが注目するパウエルFRB議長講演は、8月26日日本時間23時
8月25日(木)~27日(土)の期間、米ワイオミング州ジャクソンホールにおいて米カンザスシティ連銀主催の国際経済シンポジウムが開かれます。通称、ジャクソンホール会議。
今年の表題は“Reassessing Constraints on the Economy and Policy”「経済と政策への制約を再評価する」です。
8月25日(木)~27日(土)の期間、米ワイオミング州ジャクソンホールにおいて米カンザスシティ連銀主催の国際経済シンポジウムが開催される (C)ullstein bild/Getty Images
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、26日(金)米東部時間午前10時(日本時間26日23時)に、経済見通しに関してウェブキャスト(動画配信)の講演を行います。
ジャクソンホールはFOMC(米連邦公開市場委員会)のような政策決定の場ではありません。それでもなぜ注目されるかというと、過去に何度か、重要な政策転換を示唆する発言が各国中央銀行総裁の口から発せられたからです。
2010年には、バーナンキFRB議長がQE2(量的緩和策第2弾)の実施を示唆したために市場は大混乱し、日銀の白川総裁は急遽帰国し臨時の金融政策決定会合を開きました。
2014年には、就任したばかりのECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が、それまで欧州では不可能と思われたQEを実施することを示唆し、その後、ユーロ/米ドルは大きく下落しました。
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パウエル議長の講演は「タカ派」的になると予想。2回連続で超「ハト派」的な内容にして批判を浴びるわけにはいかない
今年(2022年)はどのような発言が飛び出すのか。
昨年(2021年)のパウエルFRB議長の講演は散々な内容でした。講演の3分の2近くの時間を使って、どうしてインフレがこれまで起こらなかったのか、どうして一時的なインフレ率上昇に中央銀行は過敏に反応してはいけないのかを延々と説明しました。そしてその時、すでに上昇し始めていたインフレ率に関しては「一過性なものにとどまる可能性が高い」と断じました。
そのこだわりが、金融引き締め政策への転換を遅らせたといえます。パウエルFRB議長がインフレは「一時的」でないかもしれないと発言したのは、その3カ月後でした。
【参考記事】
●ジャクソンホールでの、パウエルFRB議長の講演テーマは「ハト派」な匂いがプンプン。米国株が月半ばに下落するワケとは…!?(2021年8月25日、志摩力男)
よってパウエルFRB議長は、今回は名誉回復の場にしたいはず。そうであるならば、「なぜインフレは起こってしまったのか」、「どうすればインフレを抑えることができるのか」といった点を細かく分析し、対策を披露するべきでしょう。
少なくとも、2回連続で超「ハト派」的な内容にし、批判を浴びるわけにはいきません。十中八九、タカ派的な内容になるはずです。
パウエル議長は2回連続で超「ハト派」的な内容にして批判を浴びるわけにはいかない。講演は十中八九、タカ派的な内容になるはずだ (C)Bloomberg/Getty Images News
元ニューヨーク連銀総裁であり、イエレン米財務長官がFRB議長の時代にはナンバー3として君臨したウィリアム・ダドリー氏は、現在、ブルームバーグにコラムを書いていますが、このところFRBに対しては批判的です。
ダドリーさんは、比較的穏やかな人物なのですが、コラムは時に激烈です。彼も、今回のジャクソンホール会議はタカ派的な内容になると言っています。
コラムの最後のところが示唆的です。
パウエル氏待ち受けるジャクソン・ホールの試練-ダドリー
パウエル氏は1970年代のFRB議長、アーサー・バーンズのようにはならない決意でいることをなんとかして分からせなくてはならない。そうでなければ、ポール・ボルカー氏のように行動せざるを得なくなると強調する必要がある。インフレに甘かったバーンズの尻拭いをさせられた後任のボルカー氏は、強力な金融引き締めで米経済を2度のリセッション(景気後退)に導かざるを得なかった。
出所:Bloomberg
よって、パウエルFRB議長は強く出る必要があると結論付けています。
このところのマーケットは、「タカ派」パウエルを織り込む格好で米ドルは上昇、そして株価は調整しています。
しかし、もしかすると市場はあまりにも「タカ派」パウエルを織り込みすぎているかもしれません。ダドリー氏のように考えるのは、自然なことです。ですが、先日発表された7月FOMC議事要旨は、比較的バランスが取れた内容でした。
インフレ抑制に向けた強い意向が書いてありますが、その一方、多くのFOMC参加者が過剰に引き締めしすぎるリスクを警戒しているとも書いてありました。意図せずリセッション(景気後退)に陥るリスクを考え始めているということでしょう。今後の会合で引き締めペースを落とすという内容もしっかり含まれていました。
この7月FOMC議事要旨を読むと、市場が前のめりになっているとも感じます。
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基本は「タカ派」パウエルだが、市場の期待に届かなければ米ドルは調整へ。両方の可能性に配慮すべき
パウエルFRB議長は、FRBに入る前はカーライル・グループの共同経営者でした。いわゆるプライベートエクイティファンドです。
上場前のスタートアップ企業に投資し、上場益を得るというのが基本的なビジネスモデルですが、こうしたビジネスは金利への感応度が極めて高い。金融引き締めをしすぎると、上場前の企業は立ち行き難くなり、ファンドも大きな損失を被る恐れがありますが、パウエル議長はそうした事情がよくわかっているはずです。必要以上に株価を押し下げてはだめなのです。
ジャクソンホール会議のパウエルFRB議長の講演がタカ派的な内容であれば、米ドルはさらに上昇し、株価は軟調となるでしょう。しかし、バランスの取れた内容だった場合、「タカ派」パウエルを織り込みすぎているため、米ドルは調整することになるでしょう。株価は、高いはずです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
大きなイベントなので、ポジション無しで迎えるべきかなと思います。基本は「タカ派」パウエルですが、その期待に届かなかった場合、市場は調整を迎えます。両方の可能性に配慮すべきでしょう。
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