パウエルFRB議長の「あざとさ」が炸裂
今月(8月)最大のイベントだったジャクソンホール会合が終わりました。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演、西原さんはどう聞きましたか?
インフレ退治への強い決意を示しましたね。
事前のコンセンサスでは、タカ派的な講演になるだろうと言われていましたが、一部では「パウエルは日和る(ひよる)」との懸念もありました。「よくやった」という評価になるのでしょう。
特に話題となったのは、「インフレファイター」として知られるボルカー元FRB議長を引き合いに出したことです。
ボルカーさんは政策金利を20%にまで引き上げてインフレを封じ込めました。
そんなボルカーさんの名前を出したのは強い印象を与えましたよね。
10分ほどの短い講演でしたが、大きなインパクトの講演でした。
パウエルさんのコミュニケーションが上手でしたし、あざとかったとも言えますね。
ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演で、特に話題となったのは「インフレファイター」として知られるボルカー元FRB議長を引き合いに出したこと。パウエルFRB議長のコミュニケーションが上手で、あざとかったとも言える (C)Bloomberg/Getty Images News
パウエル発言、株には「超Bad」
S&P500は今年(2022年)の下落幅の50%戻しを超えていましたし、ボルカーさんを引き合いに出さないと、株式市場の楽観が収まらなかった、ということもしれませんね。
米政策金利は、年末か来年(2023年)早々の4%がメインシナリオとなりつつあります。
ただ、来年後半の利下げ開始観測もまだ払拭されていませんよね?
来年の見通しは経済指標などで簡単に変わりますし、むしろ米金利は高止まりする可能性が高まっています。
気をつけたいのが株式市場です。
パウエルさんの発言は株式市場には「超Bad」で、アノマリー的にも、9月は株式市場が崩れやすい時期。クラッシュする可能性さえあります。
○○ショックのような暴落は、大手金融機関の破たんなど、何らかのトリガーが必要ですが、今はそうした相場とは違うようにも感じます。
ただ、ショックは起きなくてもジリジリと下げていく冴えない相場が続くのかもしれませんね。
クラッシュはともかく、株式市場は今年の安値を更新していくと見ています。
前回のコラムでも話したように米金利が4%になってくると、リスクをとって株で運用するよりキャッシュでいい、という発想が増えます。
キャッシュ=米ドルですから、米ドル高は続くし株式市場は弱い。さらに言えば、金利のつかない仮想通貨(暗号資産)も下がるでしょう。
【参考記事】
●ユーロの売り方針継続に加え、米ドル/円の押し目買いを検討! 今週の注目は、ジャクソンホールのFRB議長講演。米2年債利回りが4%超えなら、米ドル/円は140円超え!(8月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
豪州はLNG輸出規制へ。日欧、悪影響の違いは
本日前場の日経平均は789円安と大きく下げました。
一方で、NISA(少額投資非課税制度)の恒久化と拡充や、原発の再稼働・新増設など岸田政権も動き出しています。
安定した電力は工場誘致などで有利に働きますし、日経平均はまだ200日移動平均線よりも上にあります。
リスクオフが落ち着いたとき、意外と日本株の上値は軽いかもしれませんね。
(出所:TradingView)
それに対して、相変わらず悪材料が目立つのは欧州。
今週(8月29日~)の焦点は、8月31日(水)から9月2日(金)までメンテナンスに入るノルドストリームからの天然ガス供給がちゃんと再開されるのか、です。
リスクを織り込む形で、欧州向けの天然ガス価格は高騰しています。
予定通りに供給が再開されれば、天然ガス価格も落ち着くかもしれません。
イタリアでは9月25日(日)に総選挙がおこなわれます。
世論調査で首位に立っているのは、ファシスト(※)の流れをくむ右派政党。懸念する声も出ています。
(※編集部注:ファシストとは、かつてイタリアに存在した国家ファシスト党のこと。政治家ベニート・ムッソリーニがファシズム(結束主義)を掲げて率いた国家ファシスト党は、1920年代から1940年代にかけて一党独裁体制を確立した)
政局の混乱に乗じてイタリア国債が売り込まれる、なんてことも想像できますね。
豪州はLNG(液化天然ガス)の輸出規制を検討しています。国内需要を優先するためです。
最大の相手国である日本への影響はあるでしょうが、原発を再稼働する分、欧州よりはマシとも言えます。
ドイツは稼働中の原発を年末に停止する予定ですが、この期に及んでもその決定を覆せないままです。
9月8日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会では、0.75%利上げの可能性も高まっていますが、そこは売り場になりそう。
「1%利上げでも売りだ」とする声も出ています。
ターゲットは1米ドル=140円、1ユーロ=0.97ドル。ユーロ/米ドルの戻り売りが安心できそう
今週は8月31日(水)に中国PMI、9月2日(金)に米雇用統計が発表されます。
中国人民元は、2020年8月以来の元安水準まで下がっていて、中国から資金が逃げ出しているようにも見えますし、そのときに逃避先となるのは米ドル。これも米ドル高要因です。
(出所:TradingView)
今週も米ドル買いの継続ですね。
米ドル/円の買いでもいいのですが、140円をターゲットとすると、あと1円50銭しかない。
このところボラティリティが高まっており、初心者にはリスク管理も難しくなっています。
0.97ドルがターゲットのユーロ/米ドルで、戻りを売っていくほうが安心できそうです。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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