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米ドル/円は150円が見えてきた。日本政府の通貨安に対する警戒が低すぎる。国民の金融リテラシーが高まれば高まるほど、円安になりそう
米ドル/円がついに144.99円まで上昇しました。
(出所:TradingView)
かねてより、将来的には150円の方向に行くのではないかと考えていた(妄想していた)身からすると、150円が見えてきたことに感慨深いものがあります。経済の先を見通す考え方に間違いはなかったと確信できたからです。ちなみに、下記のようなコラムも書いています。
【参考記事】
●円の上昇力に陰り! アベノミクス開始時の予想どおりなら、将来米ドル/円は150円か(2021年2月4日、志摩力男)
金融緩和は、所詮は対症療法。日本経済がダメになったのは、金融緩和が足りなかったせいでも、円高のせいでもありません。そうであるなら、超円安の今、超好景気になっているはずです。問題点を直視できなければ、円は無限に弱くなり、キャピタルフライト(※)を生じさせるでしょう(と、言いますか、すでにそうなっているかもしれません)。
(※編集部注:「キャピタルフライト」とは、資本がある国から別の国に逃避すること)
国民の金融リテラシーを高めようと、金融庁がいろいろ動き、NISA(少額投資非課税制度)も拡大されましたが、日本株ではなく、海外株式を選択する人の方が多いようです。
国民の金融リテラシーが高まれば高まるほど、円安になりそうです。日本政府の、通貨安に対する警戒が低すぎると思うのは私だけでしょうか。
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“Don’t Believe the FED” (FRBを信じるな)。米株式市場参加者は、タカ派になったパウエル議長を信じていない
しかし、最近の円安ペースはちょっと速い。今週(9月5日~)は2日で5円近く円安が進みました。円安トレンドは続くでしょうが、短期的にはちょっと行き過ぎにも見えます(また、これが行き過ぎでなかったら、ちょっと恐ろしい)。
(出所:TradingView)
日銀の政策が変わることはないので、円安が止まるとすれば、米国及び海外側の理由が出てきた時になります。しかし、パウエルFRB議長は先日のジャクソンホール会議で、ポール・ボルカー氏のように徹底的に引き締めて、インフレを根絶すると誓ったばかりです。今年(2022年)は利上げが続き、来年(2023年)利下げすることはないと言い切っています。
【参考記事】
●米ドル/円の140円は通過点で、150円や160円を意識したトレードが必要! 日本以外の主要国が金利の引き上げ競争を演じる中では、円は徹底的に売られるのみ!(9月1日、志摩力男)
●パウエルFRB議長の講演はインフレへの宣戦布告! 米ドル円の動きをどう見るか?(8月30日、志摩力男)
ところが、米株式市場参加者は、タカ派になったパウエル議長を信じてはいないようです。
“Don’t Believe the FED” (FRBを信じるな)という言葉を海外メディアでよく聞くようになりました。これは “Don’t fight the FED”(FRBと闘うな)という有名な警句をもじった言葉です。
“Don’t Believe the FED” (FRBを信じるな)。米株式市場参加者は、タカ派になったパウエル議長を信じていないという (C)Bloomberg/Getty Images News
FRBは金融引き締めを続けていきます。そういう状況であれば、株を買っている場合ではないはずです。さまざまな意見がありますが、今年(2022年)の米国株はもっと下落する局面があるはずと予想しているストラテジストはたくさんいます。
ところが、ここが米国金融市場の奥深いところなのですが、米金利が上がり続けることはないと信じている、超ハト派の投資家もたくさんいます。彼らはFRBの経済への見方に疑問を持っています。
今は、ボルカーFRB議長の時代とは状況が違う…。パウエルFRB議長が口で言うほど金融引き締めは続かないとの見方も
パウエル議長は金融引き締めを続けると言っていますが、彼らの考えでは、インフレはすぐに収まるので、パウエル議長が口で言うほど金融引き締めは続かないと考えています。
そもそも、ボルカー氏がFRB議長だった時代と今では状況がまったく違います。1970年代は、嵐の時代でした。米国はベトナム戦争の泥沼に陥り、そうした中、米ドルは金との兌換性を1971年8月15日に失いました。それだけでも、とてつもないインフレ要因です。
そこにオイルショックが起こります。第4次中東戦争が勃発し、1973年10月17日にアラブの産油国は原油価格を1バレル=3.01ドルから5.12ドルへと70%も引き上げました。しかも同年12月23日にはさらに11.65ドルへと引き上げました。
わずか2カ月ほどで、原油価格は約4倍となったのです。今の時代で考えれば、1バレル=50ドルだった原油が200ドルになったような感じでしょうか。
1979年にはイラン革命が起こり、第2次オイルショックが起こり、原油価格は1バレル40ドル近くまで上昇しました。つまり、1970年代に原油価格は13倍ほどになりました。上記の比喩で言えば、原油価格は1バレル=700ドル前後まで上昇したということになります。
金(ゴールド)の価格も、米ドルが兌換性を持っていたときは、1オンス=35ドルでしたが、兌換性を失って以降、1980年台初頭には、金価格は800ドル前後まで上昇したのでした。
(出所:TradingView)
これだけ原油価格、金価格が急騰すれば、インフレ率も上昇します。当時FRB議長だったアーサー・バーンズ氏もそれなりに対応したのですが、ここまで価格上昇があると、厳しかったと思います。
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物価の抑制が想定以上なら、FRBの金融引き締め路線もきついものにはならなそう。米ドル/円は米CPIの結果次第ではスピード調整が入りそう
今は、当時と違い、インターネットで即座に在庫水準がわかり、需給調整が容易だと思います。サプライチェーンの問題も解決しつつあり、コンテナ船不足も解消しました。労働参加率も上昇、つまり労働者が戻ってきました。賃金はそのうち落ち着いてくるでしょう。
そうなるとパウエルFRB議長は、状況を甘く見るわけにもいかないですが、自然に物価は落ち着いてくるはずです。
FRBを信じないグループの人たちは、株式市場が下落する中、株を買っています。また、そういうアニマルスピリットにあふれる人達がたくさんいることが、米経済の強みだともいえます。
物価の抑制が想像以上に速ければ、FRBの金融引き締め路線もきついものにはならないでしょう。そういう観測が強まれば、米ドル売り材料になり得ます。
米ドル/円の上昇相場は続くでしょうが、目先のスピードはさすがに速い。来週(9月12日~)発表される米国のCPI(消費者物価指数)が弱い数字となれば、スピード調整が入るのではないかと思います。
(出所:TradingView)
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