7月のトルコ鉱工業生産指数はネガティブサプライズに。EU諸国の景気悪化が製造業に急減速をもたらすリスクも
TUIK(トルコ統計局)は今週(9月12日~)、7月の鉱工業生産のデータを発表しました。7月の鉱工業生産指数は前年同月比で2.4%の上昇となりましたが、前月比では6.2%の下落となり、月次ベースで2020年3月のコロナショック以来のマイナスを記録しました。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
データの中身を見ると前月比で下げがもっとも大きかったのが、8%の下落となった耐久消費財でした。
トルコの鉱工業生産指数の悪化はドイツの鉱工業生産指数の悪化と深いつながりがあります。
トルコはドイツを中心とするEU(欧州連合)諸国の生産拠点のひとつであり、輸出の大部分をEU向けに行っています。そのため、EU諸国の景気悪化はトルコの製造業に急激な減速をもたらすリスクがあります。新型コロナウイルスのパンデミック以降、製造業は観光業と違って好調だっただけに、7月のデータはネガティブサプライズとなりました。
トルコの売上高指数は前月比で下落。建設業救済でエルドアン大統領が新プロジェクトを発表
今週(9月12日~)TUIKが発表したもうひとつの重要なマクロ指標は、トルコ企業の売上高のデータでした。
7月の売上高指数は前年同月比で122.4%の上昇となりましたが、こちらも月次が悪く、前月比で1.5%の下落となっています。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
特に建設業の売上高は前年同月比で5.7%の減少となり目立っています。エルドアン大統領は今週(9月12日~)行った演説で、低所得者向けの公営住宅建設プロジェクトを発表しました。この住宅建設プロジェクトは選挙キャンペーンの一環であるとともに業績が悪化している建設業を救済するためのプロジェクトであると考えます。
エルドアン大統領は低所得住宅建設プロジェクトを発表した。これは業績が悪化している建設業を救済するためのプロジェクトだという (C)Anadolu Agency/Getty Images
原油と天然ガス価格の下落により経常赤字拡大が止まれば、トルコリラに追い風になると予想
今週(9月12日~)のトルコリラは対米ドルでは下げに転じたものの、対円では円安の進行を受けて上昇を続けています。米ドル/トルコリラは18.25リラまで上昇し、トルコリラ/円は7.90円を超えました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
以前から指摘しているように、トルコリラの動きとトルコの経常収支の間には深い相関関係があります。トルコ中銀が発表した7月の経常赤字は40.1億ドルでした。昨年(2021年)7月の経常赤字が3.1億ドルだったことを考えるとトルコの経常収支の悪化度合いがわかります。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコの消費者信頼感指数は歴史的低水準。政権交代がない限り、負のスパイラルから抜け出すことは難しい(7月13日、エミン・ユルマズ)
直近12カ月の経常赤字は366億ドルで、経常赤字がGDPに占める割合は4%を超えています。
一方で経常赤字の最大要因はエネルギーです。原油価格と天然ガス価格が足元で下げに転じているので、今後、経常赤字の拡大が止まり、これがトルコリラに追い風になると予想しています。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
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