トルコの経常赤字拡大。原油と天然ガスの高騰がトルコの財政を圧迫し続けている
トルコ中銀が発表した5月の経常収支は64.7億ドルの赤字となりました。
これを受けて、直近12カ月の経常収支は294億ドルに赤字が増えました。5月の経常赤字は前年同月比で31.5億ドル増えましたが、その背景にあるのはエネルギー価格の高騰です。
原油価格と天然ガス価格の高騰はトルコの財政を圧迫し続けています。直近でコモディティ(商品)価格が下落に転じていますが、経常収支が改善するまでタイムラグがあります。
(出所:TradingView)
6月製造業PMIは48.1に低下。トルコ製造業は活気を失ってきている…
昨年(2021年)からトルコリラ安と欧州諸国の中国離れの恩恵を受け、トルコの製造業に活気が戻っていることをこのコラムで何度も指摘してきました。しかし、直近で製造業も活気を失ってきています。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】エルドアン大統領は「利下げを続ける」と発言。10月に解散総選挙に踏み切るシナリオが濃厚!?(7月6日、エミン・ユルマズ)
イスタンブール商工会議所が発表した6月の製造業PMIは5月の49.2から48.1に後退しました。
コロナショックが起きた2020年4月以降の最低水準ですが、原材料高による最終商品の値上げが製造業への受注減につながっています。一方で中国のロックダウン(都市封鎖)がまだ終わっていないものの、パンデミックによるサプライチェーンの乱れが回復しつつあります。
今週(7月11日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で大きく動かず、米ドル/トルコリラは17.30リラ、トルコリラ/円は7.90円付近で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
消費者ローンの伸び率は2020年9月以来の高水準。ローンの伸びがインフレをさらに加速させる負のスパイラルに
BDDK(トルコ銀行管理監視局)のデータによると、消費者ローンの伸び率は2020年9月以来の高水準に達しています。消費者ローンの伸びは消費に追い風で通常であればポジティブなニュースですが、年間インフレ率が80%近くまで上昇したトルコにとって、これはインフレ圧力の高まりを意味します。
トルコの場合、ローンの伸びが強いのは景気が良くなっていることではなく、消費者に現金の余力がなくなったことを意味します。その証拠は、TUIK(トルコ統計局)が発表した6月の消費者信頼感指数で示されています。6月の消費者信頼感指数は63.4で、歴史的な低水準でした。
(出所:TUIK)
トルコ政府は国内銀行に対して、国民が消費者ローンや住宅ローンを借りやすくするように以前から圧力をかけています。国民にとって実質マイナス金利での借り入れはありがたいことですが、ローンの伸びがインフレをさらに加速させています。負のスパイラルですが、政権交代がない限りスパイラルから抜け出すことは難しいでしょう。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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