西原宏一さんのメルマガ「トレード戦略指令!」の有料会員向けに配信している動画コンテンツ「今月のFX・投資作戦会議」の中で、西原さんが為替相場で特に注目しているテーマを解説する「にっしートピック!」を無料公開しています。当コラム「FX&コモディティ今週の作戦会議」の内容とも連動しているので、ぜひ、ご視聴ください。
「クレスイショック」はテールリスク
週末のSNSを騒がせたのはクレディ・スイス(クレスイ)でしたね。
年初に10ドル前後だった株価は4ドル割れまで下落し、破たんリスクを示す指標のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、リーマンショック時の水準まで急騰しています。
(出所:TradingView)
僕もクレスイに在籍していましたが、デリバティブなどハイリスクな商品を好む体質があったのはたしか。
SNSでは「クレスイショック」なんて言葉も飛び交っていますが、結論からいえば大丈夫だろうと思っています。
テールリスク(※)のひとつ、ですね。
(※編集部注:テールリスクとは、まれにしか起こらないはずの想定外のリスクによって、暴落や暴騰が実際に発生すること)
“Too Big To Fail”、大きすぎて潰せないということですか?
それもありますし、何かあっても最終的には、スイスのトップ銀行であるUBSとの合併などで救済されるだろう、と。
とはいえ、今日(10月3日)の東京市場では問題なさそうですが、どこまで影響があるのか、マザーマーケットである欧州市場の動きを確認したいですね。
間一髪で回避された「リーマン級」の危機
先週(9月26日~)は英ポンド騒動もありました。
月曜日(9月26日)に1.0350ドルまで急落した英ポンド/米ドルですが、現在は1.11ドル台。戻りも早いですね。
【※関連記事はこちら!】
⇒英ポンド/米ドルは、減税を引っ込めないかぎり、パリティ(1.00ドル)がターゲットにされ続ける! 「トラスショック」で暴落した英ポンドを、対米ドルか対円で戻り売り(9月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
英30年債利回りが5%を超えた、つまり債券価格が暴落したことで、英国の年金運用機関が破たん寸前まで追い込まれたようです。
フィナンシャル・タイムズはリーマショック級の衝撃が起きる寸前だった、とも書いています。
それを救ったのは、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])による国債の無制限購入でしたが、10月14日(金)までの時限措置とされています。
いったんは回復していますが、根本にあるのはトラス政権の大減税。これが修正・撤回されないかぎり、いくらBOEが国債を買おうが時間稼ぎにしかなりません。
英ポンド/米ドルはパリティ(1英ポンド=1.00ドル)へ向かうのでしょう。
【※関連記事はこちら!】
⇒英ポンドの下落は続く! イングランド銀行が英国債の無制限購入で市場に介入しても、トラスショックによる英ポンド安や株安、不安定な債券市場の流れは変わらず!(9月29日、西原宏一)
英財政政策をメルクマール(※)にして英ポンドを売っていく、ということですね。
(※編集部注:メルクマールとは、「目印」「指標」「中間目標」「ゴール」などを意味するドイツ語のこと)
銀行予想の「当たり年」。英ポンド/米ドルのパリティ到達も可能性が高そう
今年(2022年)は銀行予想の当たり年となっていて、銀行が予想していた米ドル/円の145円、ユーロ/米ドルの0.95ドル、ユーロ/スイスの0.95スイスはすべて到達しています。
英ポンド/米ドルのパリティもコンセンサスとなりつつあり、到達する可能性は高いのでは。
英ポンドは週末に向けて大きく上がりましたが、月末、四半期末でしたから、特殊なフローも出ていたのかもしれませんね。
同感です。
BOEの臨時措置でいったんは株価も戻りましたが、底打ちしたとは思えませんし、日本株にしろ米国株にしろ、戻りではまた売りたいですね。
米ドル/円はいかがですか。介入後は動かなくなり、英ポンドに主役の座を奪われました。
みんなが「介入で落ちたら買おう」と思っているので動かないのでしょう。
今回の介入は、急騰を抑えるスムージング・オペレーションですから、実需へ買い場を提供する意味あいが強いのでしょうし、いずれ高値を更新していくのでは。
英ポンド危機で、一番売られたのはニュージーランドドル
今週(10月3日~)は10月4日(火)に豪州、10月5日(水)にニュージーランドドルの政策金利が発表されます。いずれも0.5%利上げがコンセンサスです。
ほぼ完全に織り込まれていますね。
気になるのはオセアニアの弱さ。先週の英ポンド騒動で、一番値下がりしたのはニュージーランドドルとなっています。
株価が下がっているためですが、ニュージーランドドル/米ドルに至ってはコロナショック安値にほぼ到達。
株価がまだ下がるならオセアニア通貨、特にニュージーランドドルの売りを検討したいと思います。
(出所:TradingView)
10月5日(水)にはOPECプラス(※)の会合も開催され、日量100万バレルの減産がコンセンサスとなりつつあります。
その割に原油価格は上がっておらず、減産規模が100万バレル未満になると下がる可能性もありそうです。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
繰り返しになりますが、今日は新しい四半期の始まり。
特に今は英ポンドが焦点となっているため、大きな決断は今日、明日(10月4日)の欧州市場の動向を見てからでいいでしょう。
アイデアとしてあるのは、英ポンド/米ドルの戻り売りがひとつ。それに加えて、ニュージーランドドルを対円か、対米ドルで売っていきたいですね。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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