ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルで、米ドルの買われ過ぎになっていて、米ドル高の調整局面となった
この1週間は、一時欧州通貨などに対して、米ドル高の調整局面となる展開がありました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
直接的な原因は、米国の長期金利(10年債利回り)の伸び悩みです。
ただ、その背景には米ドルのオーバーボウト、つまり、買われ過ぎという状況があったと思います。MACD、RSI、ストキャスティクスなどのオシレーター系のチャートを見ると、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルなどで、かなり売られ過ぎ(米ドルの買われ過ぎ)になっていたのが分かります。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
こうした状況で何かきっかけがあると、調整の反転を起こすということです。
米ドル高トレンドに変化はないが、米ドル高のスピードが速くなりすぎていないかを、オシレーター系のチャートで確認することが重要
私自身も、米ドル高のスピードがかなり速いと思いながら、米ドル高トレンドに変化はないという認識が強すぎて、この調整に少し引っかかってしまいました。
しかし、調整が一巡すると、ここ2日間ぐらいで、また米ドル高に戻ってきています。
今回のユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルの上昇は、あくまでもポジション調整に過ぎず、米ドル高トレンドには変化はないと考えています。
今回の動きで、オシレーター系のチャートの重要性を改めて認識させられました。
トレンド系のチャートなどで大きな流れを把握しながらも、スピードが速くなり過ぎていないかをオシレーター系のチャートで確認しつつ、調整による反転リスクを回避するということを徹底するよう、今後の教訓にしたいと思います。
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米ドル/円での米ドル買いに非常に安心感。今年中に150円程度まで上昇する可能性は高い
ただ、こうしたポジション調整が起きていたにもかかわらず、米ドル/円だけはそれほど米ドル安に向かいませんでした。
(出所:TradingView)
おそらく、これは145円台での介入警戒感が強かったために、米ドル/円ではそれほど米ドルロングが積み上がっていなかったということだと思います。
そういうことから考えると、米ドル/円での米ドル買いは非常に安心感があります。
145円台では、まだ介入警戒感があると思いますので、一気に上昇することはないとは思いますが、細かい上下動を繰り返しながら、ジリジリと上がる展開を想定しています。今年(2022年)中に150円程度まで上昇する可能性は高いのではないかと依然として考えています。
(出所:TradingView)
G7が協調して米ドル高是正を目指す、いわゆる「令和のプラザ合意」議論は時期尚早
さて、最近は、米ドル全面高に対してG7(先進7カ国)各国が協調して米ドル高是正を目指す、いわゆる「令和のプラザ合意」が議論されるのではないか、という専門家が出てきました。
結論から言うと、それは時期尚早だと思います。
確かに、日本はすでに円安に対して、米ドル売り・円買い介入を実施しました。また、ECB(欧州中央銀行)の複数の関係者は、現在の対米ドルでのユーロ安に懸念の声を示しています。また、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は最近の利上げの理由として、「インフレ抑制と共に英ポンド安の是正のため」としています。
つまり、米国以外の主要各国は、最近の米ドル高に懸念を示しているのは事実です。
しかし、それに対して、各国が協力して是正していこうという流れが出来るかと言えば、それは時期尚早です。その理由は、現在米国が米ドル高で困っていることがないからです。
これまでも説明してきましたが、米国にとって、米ドル高はインフレ抑制に対してはプラス材料です。それを是正するという正当性が見つかりません。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は、147.66円の1998年8月高値がチャート上の上値目標に。資金管理に気をつけながら、さらなる円安方向で勝負したい(6月9日、今井雅人)
⇒円高方向への転換はないが、今後、円安のスピードは鈍化する。今の米国にとって、「米ドル高・円安」は歓迎すべき状況(4月14日、今井雅人)
1つの可能性としては、米国がいくら利上げを実施して、インフレを抑制しようとしても、米ドル高による自国通貨の下落で、米国以外の国のインフレが抑制できないことの影響が、米国にも波及してくるという認識が今後広がって、合意形成の下地ができてくるという時です。ただ、そこまでにはかなり時間がかかると思います。
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OPECプラスの原油減産合意で、インフレ抑制に苦しんでいる国は利上げの継続をさらに強いられることに。米ドル高はさらに加速する可能性
また、先日OPECプラス(※)が原油減産の合意をしました。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
原油価格は一時よりは下がってきましたが、WTI原油先物でも80ドル台と依然として高い水準にあります。
(出所:TradingView)
その状況の中で減産をするという行為は、インフレ抑制に四苦八苦している国にとっては大きな打撃です。利上げの継続をさらに強いられることになります。
これにより、米ドル高はさらに加速する可能性があるので注目しておきたいと思います。
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